24日の夕方、船のロープを確認していると朝日新聞の記者が来た。
「台風対策は、皆さんどうされてますか?」
「対岸からロープを取ったり、お互いの船を繋ぎ合わせて固定したりされてます」
と言った話をした。
この頃から、風が少しずつ東から南に、変わりつつある様に感じていた。
夜になり、8時頃から事務所にしている実家に、泊まり込む。
テレビでは、世界陸上を放送しているので、それを見ていると10時頃から少しずつ風が強くなり始め、雨戸を叩く音がある種の緊張感をもたらしてくる。
再度、船のロープを確認する。
仲間の船のロープも確認し、この時点での安全を確認する。
11時、12時と1時間置きに船の様子を見に行くが、雨も段々と激しくなり、着ている服もびしょぬれになる。
合羽を着ていても、風に押された雨が隙間から入ってくる。
「今夜は、徹夜だな」
対岸の西町でも、船に明かりがついて何か作業している様子が見える。
午前1時に船を見回りに行くと、南風が木の枝を大きく揺さぶり「ヒューヒュー」と、怖い様な音を立てている。
壊れた倉庫の、錆びたトタン板が千切れて飛んでくる。
「あぶねぇーな、気をつけよう」
本当の危険はこの後、午前4時頃にやってくる。
午前2時、サイレンを鳴らし、赤色灯を回転させた消防車が、私の居る事務所前で止まった。
「今晩は、あっ細田さん今晩は、消防署に電話されました?」
「いや、何もしてないよ」
署員が確認すると、前の今は使われていない筈の、水産会社の事務所からだった。
その事務所前に移動した消防車の赤色灯が、嫌な色に見える。
私は、その事務所には用はないので、2階の窓から船の様子を見る。
この時点で、風は暴風になっており、なかなか船のそばに行けない。
思いきって行ってみると、風で川に落ちそうになる。
船は、結構上下に揺れており、放置されている漁船の舳先が、護岸に叩き付けられている。
この時は、一旦事務所に帰りテレビの台風情報を見て、台風の今の位置を再確認する。
「もう少しで、暴風域から抜けられるかな」
私の淡い期待は、完全に裏切られた。
台風が、熊本に上陸した。
この時も、台風の目がハッキリとしており、勢力の強さを維持している。
午前4時、船の様子を確認する。
南風が、暴風になり強烈に吹き付ける中、船の様子を見に行ってビックリした。
私の隣に泊まっているプレジャーボートの、船尾から取っていたロープが切れている。
そのボートの船尾が、私の船に当たっている。
何とか、わたしの船のペンダルが間に入って、直接の接触は防げている。
その次の瞬間、私は全力で事務所に走って戻り14ミリのロープを担ぎ、又走った。
この時は「船を守らなきゃ!」の一心。
時間を考えず、O先輩に電話して助力をお願いする。
「直ぐ行く」
嬉しい返事を頂いた。
その一方で、南風の暴風も、横殴りの雨も、波立っている川面も、揺れている船も、纏めて闘わなくちゃと思っていた。
何も考えず、大きく揺れるその大型ボートに飛び乗った。
船尾に走り、クリートにロープを縛り付けた。
今度は、残りのロープを纏めて肩に担ぎ、揺れのタイミングを見て護岸にジャンプする。
川に落ちない様に気をつけなくちゃ。
「いけー!」と自分に声を掛ける。
何とか、飛び降りられた。
履いていたスリッパの花尾が切れた。
そんな事は、どうでも良い。
ロープを全力で引っ張り、ボートを私の船から引き離す。
風に体ごと吹き飛ばされそうだ。
火事場の馬鹿力、とはこの時のことを言うのだろう。
ボートが徐々に離れてきた。
直ぐに、ロープを船止めに縛り付ける。
O先輩が到着。漸く安堵する気持ちになった。
今度は、二人で仲間の船を見て回ると、船同士を繋いでいたロープが一本切れている。
私がロープを引っ張り、O先輩が船に乗り込む。
ロープを探して、改めて繋ぎ直す。
この時に、周りが明るくなり始めていることに気が付いた。
O先輩が「台風は、どう変わるかわからん」と言われた。
本当に、その通りだと思った。
気圧の配置で方向が変わり、海水温が高い現状は、台風が最発達しやすい状況にある。
対岸でも、ロープが切れている船が見える。
午前6時になり、知り合いの漁師さんが1人、2人と様子見に集まってきた。
「風が強いかったね。」
と、笑いながら話せる状況になった。
「台風対策は、皆さんどうされてますか?」
「対岸からロープを取ったり、お互いの船を繋ぎ合わせて固定したりされてます」
と言った話をした。
この頃から、風が少しずつ東から南に、変わりつつある様に感じていた。
夜になり、8時頃から事務所にしている実家に、泊まり込む。
テレビでは、世界陸上を放送しているので、それを見ていると10時頃から少しずつ風が強くなり始め、雨戸を叩く音がある種の緊張感をもたらしてくる。
再度、船のロープを確認する。
仲間の船のロープも確認し、この時点での安全を確認する。
11時、12時と1時間置きに船の様子を見に行くが、雨も段々と激しくなり、着ている服もびしょぬれになる。
合羽を着ていても、風に押された雨が隙間から入ってくる。
「今夜は、徹夜だな」
対岸の西町でも、船に明かりがついて何か作業している様子が見える。
午前1時に船を見回りに行くと、南風が木の枝を大きく揺さぶり「ヒューヒュー」と、怖い様な音を立てている。
壊れた倉庫の、錆びたトタン板が千切れて飛んでくる。
「あぶねぇーな、気をつけよう」
本当の危険はこの後、午前4時頃にやってくる。
午前2時、サイレンを鳴らし、赤色灯を回転させた消防車が、私の居る事務所前で止まった。
「今晩は、あっ細田さん今晩は、消防署に電話されました?」
「いや、何もしてないよ」
署員が確認すると、前の今は使われていない筈の、水産会社の事務所からだった。
その事務所前に移動した消防車の赤色灯が、嫌な色に見える。
私は、その事務所には用はないので、2階の窓から船の様子を見る。
この時点で、風は暴風になっており、なかなか船のそばに行けない。
思いきって行ってみると、風で川に落ちそうになる。
船は、結構上下に揺れており、放置されている漁船の舳先が、護岸に叩き付けられている。
この時は、一旦事務所に帰りテレビの台風情報を見て、台風の今の位置を再確認する。
「もう少しで、暴風域から抜けられるかな」
私の淡い期待は、完全に裏切られた。
台風が、熊本に上陸した。
この時も、台風の目がハッキリとしており、勢力の強さを維持している。
午前4時、船の様子を確認する。
南風が、暴風になり強烈に吹き付ける中、船の様子を見に行ってビックリした。
私の隣に泊まっているプレジャーボートの、船尾から取っていたロープが切れている。
そのボートの船尾が、私の船に当たっている。
何とか、わたしの船のペンダルが間に入って、直接の接触は防げている。
その次の瞬間、私は全力で事務所に走って戻り14ミリのロープを担ぎ、又走った。
この時は「船を守らなきゃ!」の一心。
時間を考えず、O先輩に電話して助力をお願いする。
「直ぐ行く」
嬉しい返事を頂いた。
その一方で、南風の暴風も、横殴りの雨も、波立っている川面も、揺れている船も、纏めて闘わなくちゃと思っていた。
何も考えず、大きく揺れるその大型ボートに飛び乗った。
船尾に走り、クリートにロープを縛り付けた。
今度は、残りのロープを纏めて肩に担ぎ、揺れのタイミングを見て護岸にジャンプする。
川に落ちない様に気をつけなくちゃ。
「いけー!」と自分に声を掛ける。
何とか、飛び降りられた。
履いていたスリッパの花尾が切れた。
そんな事は、どうでも良い。
ロープを全力で引っ張り、ボートを私の船から引き離す。
風に体ごと吹き飛ばされそうだ。
火事場の馬鹿力、とはこの時のことを言うのだろう。
ボートが徐々に離れてきた。
直ぐに、ロープを船止めに縛り付ける。
O先輩が到着。漸く安堵する気持ちになった。
今度は、二人で仲間の船を見て回ると、船同士を繋いでいたロープが一本切れている。
私がロープを引っ張り、O先輩が船に乗り込む。
ロープを探して、改めて繋ぎ直す。
この時に、周りが明るくなり始めていることに気が付いた。
O先輩が「台風は、どう変わるかわからん」と言われた。
本当に、その通りだと思った。
気圧の配置で方向が変わり、海水温が高い現状は、台風が最発達しやすい状況にある。
対岸でも、ロープが切れている船が見える。
午前6時になり、知り合いの漁師さんが1人、2人と様子見に集まってきた。
「風が強いかったね。」
と、笑いながら話せる状況になった。
