釣船 開進丸(鯛ラバ、ジギング、一つテンヤ)

釣れる日もあれば、釣れない日もある。楽しかったり、悔しかったり「船釣り」の一時を過ごしてみませんか。

8月24日25日 船を守れ2日間

2015年08月25日 | 日記
24日の夕方、船のロープを確認していると朝日新聞の記者が来た。

「台風対策は、皆さんどうされてますか?」

「対岸からロープを取ったり、お互いの船を繋ぎ合わせて固定したりされてます」

と言った話をした。

この頃から、風が少しずつ東から南に、変わりつつある様に感じていた。

夜になり、8時頃から事務所にしている実家に、泊まり込む。

テレビでは、世界陸上を放送しているので、それを見ていると10時頃から少しずつ風が強くなり始め、雨戸を叩く音がある種の緊張感をもたらしてくる。

再度、船のロープを確認する。

仲間の船のロープも確認し、この時点での安全を確認する。

11時、12時と1時間置きに船の様子を見に行くが、雨も段々と激しくなり、着ている服もびしょぬれになる。

合羽を着ていても、風に押された雨が隙間から入ってくる。

「今夜は、徹夜だな」

対岸の西町でも、船に明かりがついて何か作業している様子が見える。

午前1時に船を見回りに行くと、南風が木の枝を大きく揺さぶり「ヒューヒュー」と、怖い様な音を立てている。

壊れた倉庫の、錆びたトタン板が千切れて飛んでくる。

「あぶねぇーな、気をつけよう」

本当の危険はこの後、午前4時頃にやってくる。

午前2時、サイレンを鳴らし、赤色灯を回転させた消防車が、私の居る事務所前で止まった。

「今晩は、あっ細田さん今晩は、消防署に電話されました?」

「いや、何もしてないよ」

署員が確認すると、前の今は使われていない筈の、水産会社の事務所からだった。

その事務所前に移動した消防車の赤色灯が、嫌な色に見える。

私は、その事務所には用はないので、2階の窓から船の様子を見る。

この時点で、風は暴風になっており、なかなか船のそばに行けない。

思いきって行ってみると、風で川に落ちそうになる。

船は、結構上下に揺れており、放置されている漁船の舳先が、護岸に叩き付けられている。

この時は、一旦事務所に帰りテレビの台風情報を見て、台風の今の位置を再確認する。

「もう少しで、暴風域から抜けられるかな」

私の淡い期待は、完全に裏切られた。

台風が、熊本に上陸した。

この時も、台風の目がハッキリとしており、勢力の強さを維持している。

午前4時、船の様子を確認する。

南風が、暴風になり強烈に吹き付ける中、船の様子を見に行ってビックリした。

私の隣に泊まっているプレジャーボートの、船尾から取っていたロープが切れている。

そのボートの船尾が、私の船に当たっている。

何とか、わたしの船のペンダルが間に入って、直接の接触は防げている。

その次の瞬間、私は全力で事務所に走って戻り14ミリのロープを担ぎ、又走った。

この時は「船を守らなきゃ!」の一心。

時間を考えず、O先輩に電話して助力をお願いする。

「直ぐ行く」

嬉しい返事を頂いた。

その一方で、南風の暴風も、横殴りの雨も、波立っている川面も、揺れている船も、纏めて闘わなくちゃと思っていた。

何も考えず、大きく揺れるその大型ボートに飛び乗った。

船尾に走り、クリートにロープを縛り付けた。

今度は、残りのロープを纏めて肩に担ぎ、揺れのタイミングを見て護岸にジャンプする。

川に落ちない様に気をつけなくちゃ。

「いけー!」と自分に声を掛ける。

何とか、飛び降りられた。

履いていたスリッパの花尾が切れた。

そんな事は、どうでも良い。

ロープを全力で引っ張り、ボートを私の船から引き離す。

風に体ごと吹き飛ばされそうだ。

火事場の馬鹿力、とはこの時のことを言うのだろう。

ボートが徐々に離れてきた。

直ぐに、ロープを船止めに縛り付ける。

O先輩が到着。漸く安堵する気持ちになった。

今度は、二人で仲間の船を見て回ると、船同士を繋いでいたロープが一本切れている。

私がロープを引っ張り、O先輩が船に乗り込む。

ロープを探して、改めて繋ぎ直す。

この時に、周りが明るくなり始めていることに気が付いた。

O先輩が「台風は、どう変わるかわからん」と言われた。

本当に、その通りだと思った。

気圧の配置で方向が変わり、海水温が高い現状は、台風が最発達しやすい状況にある。

対岸でも、ロープが切れている船が見える。

午前6時になり、知り合いの漁師さんが1人、2人と様子見に集まってきた。

「風が強いかったね。」

と、笑いながら話せる状況になった。