
朝日が雲間から、顔を出してきた。
「今日も、宜しくお願いいたします」
今日の釣果を願って、手を合わせる。
潮は上り潮が、緩く沖に払い出している。
潮の色も青味があって、今にも大物が釣れそうな色をしている。
すると、塩田さんの本日1投目に、アタリが来た。
「来た!いきなり来た!」
塩田さんの歓喜の声が、船上に響き渡る。


上がってきたのはオオモンハタ。
その後に続く様に、チダイも来た。


「今日は、良い出足だ」
連続する釣果を喜んでいたら、今度は矢越さんにアタリが来た。

上がってきたのは、サゴシ。
「この時期になっても、まだサゴシが釣れるの」
やはり最近の天候は、おかしいのかな。
この後塩田さんに、体ごと引きずられる様な、アタリが来る。

船の後方で、竿を出していた塩田さんに、強烈なアタリ。
「うわっ、これは何、止まらん」
針掛かりした獲物が、船の前方に走っている。
「塩田さん、前に行ってください」
「矢越さん、船で追い掛けるから、指示してください」


矢越さんも心配する中、塩田さんが船の前に立ち、必死に頑張っている。
ドラッグ音が鳴り響き、ラインがどんどん出ていく。
暫くすると、獲物の走りが止まった。
すると、ラインが巻き取れる様になった。
どんどん巻き取っていくと、オオモンハタが上がってきた。

「えっ…何…」
一瞬、何が釣れたのか?の状態になった。
あの強烈な走りは何?体ごと引きづられた強烈な引きは何?
上がってきたオオモンハタをよく見てみると、体の色んな処に傷が付いている。
鱗も剥げているところがあり、背鰭は骨が出ていて、尾鰭も裂けている。
「これは、何かに食いつかれた痕じゃないかな」
鮫ではない様だ。
こんな大きなオオモンハタを、くわえ込む事のできる魚になる。
となると考えられるのは、巨大なアラくらいかな…。
3人で色々なことを考えたが、結論は出ない。
その後、北西の風が強くなってきたので、ポイント移動。
「今日は、どうしても鯛が欲しい」
塩田さんの、お嬢さんの成人祝いの鯛を釣りたい、と強い希望。
大島東側に移動して、何カ所かのポイントを攻めてみるがアタリが来ない。
「ちょっと沖合のポイントに、行ってみましょう」
すると、移動しての1投目にアタリが来た。
それを見ていた矢越さんが「そのアタリは鯛ですよ」と、声援を送られる。


矢越さんの言葉通り、上がってきたのは3キロ弱の立派な真鯛。
「良かった。これで成人祝いの鯛が釣れた」
塩田さんの嬉しそうな笑顔が、船内を楽しくする。
矢越さんも負けるものかと頑張っているが、今日は塩田さんに海の女神が微笑んだ様だ。
船を、鯛が釣れたポイントに戻す。
すると、又しても塩田さんにアタリが来た。
「おっ、又来た!」
小気味良く竿が曲がって、鯛独特の竿を叩くアタリが来ている。


上がってきたのは2キロオーバーの立派な鯛。
成人祝いの鯛が、2匹釣れた。
「今日は、嬉しいです。娘のお祝いが出来る」
塩田さんの、笑顔が良い。
お嬢さん思いの、優しいお父さんだ。
帰りの船中は、2匹の鯛と正体が分からなかった“大物”の話で盛り上がった。