「今日も、宜しくお願いします」
朝日に手を合わせて、今日の釣りの好釣をお願いする。
しかし、今日の海の神様は、午前中は手厳しかった。
潮は、緩い上り潮が沖に向かって払い出している。
潮の色も良い、少し透明度が良すぎるのが気になっている。
それともう一つ、昨日は昼前から急に潮が動かなくなって、アタリも出なくなってしまったことだ。
今日もそうならなければ良いと、思うのだが…。
最初のポイントでは、ベイトは沢山映し出されているがアタリが出ないまま、次のポイントへ移動する。
今日のお客様の村富さんも、横山さんも、元気が出ない状態だ。
気分転換に一旦竿を置いて、熱いお茶で体を温める。
村富さんに時折アタリが来るのだが、上手く針掛かりしないじれったい状態。
そんな中、横山さんにアタリが来た。
上がってきたのは、ガンゾウヒラメ。
「小さいね」と言いながらも、笑顔。
この後、徐々に潮の動きが悪くなってきた。
やはり、昨日と同じ「動かない潮」になりつつある。
そこで、思い切ってポイント移動。
水島の北側に、船を走らせる。
釣り初めて、暫くすると「船長、イルカの群です」と村富さんが沖を指さす。
「えーっ、又イルカが来た…」
イルカが見えなくなるのを待って、再度ポイント移動。
北西の風が段々強くなってきているので、潮が動かなければ風に船を押して貰おう。
水深80メートルのポイントの真上に停船し、釣り開始。
風に押されて、船が少しずつ沖に出ていく。
押される速さは、0.8ノットくらいだ。
村富さんにアタリが来た。
良型のイトヨリ鯛。
今度は横山さんにも、アタリが来た。
竿が大きく曲がり、「これは重い。でも、上がってくる」と言いながらラインを巻き取っていく。
上がってきたのは1.5キロの大きなウッカリカサゴ。
その大きさに、釣り上げた横山さんもビックリ。
これで、船上は一気に活気づいた。
午前中の不調を、一気に取り戻したい。
その願いが通じたように、村富山が大きく合わせを入れた。
「どんな引き具合ですか」
「さっきのイトヨリも引きが強い」
可成りの強い力で、針掛かりした獲物は、抵抗しているようだ。
その獲物が海中に見えるようになった時、横山さんが声を上げた。
「鮫だ。大きな鮫が来ている」
海中を除くと、針掛かりした獲物の下に、白く見える大きな魚体が見える。
「鮫だ。あっ、シロアマダイだ」
針掛かりしていたのは、高級魚のシロアマダイ。
それを追って、大きな鮫が見えた。
シロアマダイが海面に浮いたところを直ぐにタモに入れ、船上に上げる。
1.5キロ有る、見事なシロアマダイ。
村富さんも、嬉しそうな笑顔。
釣り人のこの笑顔が、たまらなく良い。
この頃は、北西の風で白波が立ち始めていることもあり、残念だがポイント移動。
移動した次のポイントで、横山さんが良型のガンゾウヒラメを釣り上げた。
昨日と同じで、午後から北西の強風が吹き始めた。
高級魚を釣り上げ、気持ちもホッとし、帰港した。