その日、9時半過ぎにブラ散歩に出かけた。いつものように平野の森の北辺の小径を通って、町内を一回りしてこようと思ったのだ。
出かけて間もなくのこと、刺すような視線を感じて左側の藪の方に目を転じた。
キジトラ(ブラウンタビー)というのだろうか、遠くでじっとうずくまりながら、寸分たりとも視線を外すことがない。うわっ、ロックオンされたのか。いや、いや、香箱座りはリラックスしている姿勢であるとも聞く。僕の旅立ち(それほど大袈裟なものではない)を寿いでくれているのか? 一枚撮っておくか。
僕のブラ散歩は、「花撮り人」と化すことである。「花を盗る」ではない。「花を撮る」なのだ。
とはいえ、この時期、街を流しても、あまり撮るモノとてない。ブラブラしながら、2015年に花を求めてブラ散歩を始めた折りに、とてもよくして頂いたKさん宅前にあるお花畑に行き着いた。まだ、いくらなんでも早かろうと思ったのだが、すっくとしてバイモ(貝母:ユリ科バイモ属の耐寒性半蔓性球根植物)が咲いていた。
おや、ちょっと傾いでいるのか? いや、これは撮り手の平衡感覚が狂っているだけか。水準器で確認して撮れよ。
撮れ高が足らん。猫の額に取って返し、嵩を稼ぐとしよう。
たった一株が生き永らえているユキワリソウだが、今年はこれでも花付きがいい方なのだよ。ほら、まだ、つぼみが上がってきている。
もうしばらくしたら、今年求めた白の三段咲きを隣りに植え込むこととしよう。もう新たな葉を展開してきている。さて、植え替えの適期はいつ頃だったかしらん。
ニリンソウに侵蝕され、狼狽気味のオキナグサ(黄花)なのである。
それでも、しっかりとつぼみを育み、負けてはならじと背伸びを繰り返している。
昨年、フジバカマを贖った折りに、併せて「今見頃の山野草 3ポット お買い得セット」を購入した。その中の一つが「桃色タニガワコンギク」であった。
「桃色」との断りがある割には桃色でもなく、コンギクというほどに紺色でもない、不思議な花色であった。
目算の狂いがもう一つ、ひょろと数本だったのが、恐ろしいほどよく増えて6号鉢いっぱいに増殖してくれた。それを、大小二鉢に、ベランダ脇の小庭、さらに坪庭の赤石の上にと、四か所に分割した。土壌さえ合えば、キク類の増殖は止まることを知らぬようだ。
キクザキイチゲである。
右側の青々とした株(①)は、今年求めたものを花後に地植えとした。
①と同様、1ポットに2根茎が植え込まれたモノを、一昨年(②)、昨年(③)と買い足してきたのだが、土が合わないのか一向に増えた気配がない。
ましてや、②、③とも花を付けた試しがない。この時期、坪庭では、ニリンソウ、ギンサカズキイチゲ、ハルオコシなど、春の妖精たちが咲き乱れるというのにである。
何がいけないのか、一向に見当がつかないのだ。今年も、この問題を先送りして時が過ぎていくのだろうか。