◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

●添削12月③●

2012-12-16 20:00:13 | Weblog
[12月16日~22日]

▼12/22

●佃 康水
強霜や畝に菜の葉を張り付かせ★★★
川満ちて白際やかや花八つ手★★
枯木道広島城の見え隠れ★★★

●下地 鉄
風にゆれ夕日に淋し枯れすすき★★  
君が代に微笑む真央の師走かな★★  
湯煙の流れる其処に石蕗の花★★★★

●桑本 栄太郎
朝空の淡き稜線山眠る★★★
青空をビルの切り取る十二月★★★
雲を刷きスカイブルーや冬の嶺★★★

●多田 有花
ノンアルコールビールで乾杯年忘れ★★
忘年会果て夜の雨の中へ★★★
実南天に雫残して雨あがる★★★

●小西 宏
枯枝の触れ交う空に青深し★★★★
青空に枯枝が交差している景色はきれいだが、この句は、さらに空をよく観察して「青深し」とした。そこに作者の「見よう」とする意思が働いて句に深みがでた。(高橋正子)

南面の辛夷冬芽の陽の温み★★★
過ぎしこと孫らのことよ冬至の夜★★★★

●迫田 和代
隔たった刈田の道のまっすぐさ★★★
冬の島何処まで空だか海かしら★★
一本の鉄路の通る枯野かな★★★★

●小口 泰與
三つ島の影も長きや冬落暉★★★
森深し水面にぎわふ冬桜★★★
寒暁や湖を割り行く鳥の列★★★

●川名ますみ
柚子風呂に葉を嗅いでみてほの甘き★★★
柚子の葉の甘さも冬至風呂の香に★★★
挿し木より白き根光る冬の土★★★

▼12/21

●藤田裕子
車窓にはつぎつぎ冬木武骨なる★★★
朝震わせ霰地面を跳ね返す★★★
雨上がり桜冬芽の赤微か★★★

●桑本 栄太郎
<神戸六甲アイランドへ>
冬潮へ乗り出し空へモノレール★★★
冬潮のゆらぎ眩しき朝日かな★★★
曳航の波の軌跡や冬の潮★★★

●小西 宏
山茶花の華やぎ広し山の陰★★★
水楢の落ち葉敷き積む社宅跡★★★
母を見舞う
リハビリの冬至の窓に歩を数う★★★

●多田 有花
頂に立ちて冬至の町を見る★★★★
「頂に立ちて」が効いた。「冬至」という日の作者の感慨が伝わってくる。一年で最も短い一日だ。(高橋信之)

跪き室咲きの花に近く寄る★★★
シクラメン並び冬至の生花店★★★

●河野 啓一
冬至湯のまるき柚の香に身を沈め★★★
冬至る森の樹冠の耀いて★★★
浮き寝鳥冬至の水に遊びおり★★

●小口 泰與
釣り筏冬満月を賜わりぬ★★★
見下ろすや伊勢湾光り小六月★★★
昇り来る朝日ひと筋牡蠣筏★★★

▼12/20

●桑本 栄太郎
嶺の端をほのと染め居り霜の朝★★★
極月の朝日眩しく日差しけり★★★
嶺と峰連ねる鉄塔山眠る★★★★

●小西 宏
白い雲ゆるりと浮かべ葱畑★★★★
師走の田園風景がいい。「ゆるりと」がいいのだ。「葱畑」に「白い雲」を見て、師走の心がゆたかだ。(高橋信之)

大根の葉のこんもりと根を隠す★★★
冬の陽に赤き葉残す花水木★★★

●河野 啓一
枯れ切って銀杏並木のさばさばと★★★
枯木立透かし見たれば鴨の池★★★
久しぶり子から便りの都鳥★★★

●多田 有花
枯枝の上に出ており昼の月★★★
池の水少なきに鴨散りばめて★★★
ぽつぽつと人来て冬の植物園★★★

●小口 泰與
茶の花や長き裾野の芙蓉峰★★★
伊勢湾の忽と艶めく冬の虹★★★
三つ島を浮かす光りや冬の月★★★

▼12/19

●小西 宏
やわらかな雲より広ぎ枯葉ふる★★★★
枯山に明かり残して暮れ行ける★★★
ビル遠く紅々と照り冬暮れる★★★

●桑本 栄太郎
書き込みめくりめくりて暦果つ★★
おにぎりとカラオケ妻の忘年会★★★
風呂タイル磨く戸外は虎落笛★★★

●小川 和子
治水橋
何処までも青空冴ゆる橋向こう★★★★
人は「橋」に特別な思いを寄せることが多い。橋の向こうは、知らない町へと続く。橋向こうの冴えた青空にその続きを思うこともある。(高橋正子)

選ることも楽し聖夜の贈物★★★
冬茜秩父の山脈際立たす★★★

●河野 啓一
冬耕の畦や水菜のみずみずし★★★
冬紅葉散りきって赤い輪に囲まれる★★★
芝青し枯れ葉を上に散り敷いて★★★

●多田 有花
稜線の空透けて来し冬半ば★★★★
稜線のちょうどその所の空は山際という。そう言わないで、稜線の空と言ったところに新しみがある。寒気が強まる冬半ばには、空が透けてくる。「透けて来し」に観察の深さが見える。(高橋正子)

石灯籠包むいっぱいの落葉★★★
時雨雲淡路四国を包みおり★★★

●佃 康水
 市内愛友市場2句
生簀より掴みし河豚の眼澄み★★★ 
四斗樽の重石かたむく冬菜漬け★★★★
冬枯れや川に沿いたる薬草園★★

●迫田 和代
冬の空切るよう伸びる飛行雲(原句)
冬空を切るように飛行雲伸びる★★★★(信之添削)

南天の赤き実を付けすくと立つ★★★
冬薔薇の海風弾く強さ見る★★★

●小口 泰與
湖の波尖りて鴨の羽ばたきぬ★★★★
湖の波が尖るほど寒々として風がある。鴨が時折羽ばたいて羽音をさせる。広げた羽の色も、羽音も命の温みを感じさせながらも寒々としている。(高橋正子)

伸びやかな富士の裾野の枯野かな★★★
浜名湖も豪雨に打たれ枯葉かな★★★

▼12/18

●河野 啓一
冬空に伸びゆくバラ芽の茜色★★★★
「茜色」の色彩感がいい。明日への嬉しい「芽」の「茜色」だ。(高橋信之)

烏鷺囲む小春の窓辺鳥の声★★★
実南天剪りて花瓶の彩りに★★★

●川名ますみ
冬の日の強き斜めが窓に入る★★★★
冬の日が低くから斜めに窓に入ってくる。意外にも冬の日差しは強い。その実感をすっきりとよくまとめている。(高橋正子)

追われずに落葉へ潜る十円玉★★★
稜線の南北へのび冬夕焼★★★

●小西 宏
枯芝に土黒光りノックの音★★★★
枯芝のよく踏まれるところの芝か、傷んで土が見えている。枯芝と土の黒さが対比され底にノックの音が響くのがよい。(高橋正子)

雪積むかと思えば窓に霧の街★★★
色濡らす落葉の霧の石畳★★★

●桑本 栄太郎
子に分けて選ぶクリスマス抽選会★★★
捨てるもの先ずは決め居り年用意★★★
数へ日や役目の多き吾が休暇★★★

●多田 有花
葉牡丹を積みし車の後をゆく★★★★
いい句だ。その説明はいらないであろう。(高橋信之)

ベゴニアの温室出れば冬の雨★★★
北東の山越え時雨里へ来る★★★

●黒谷 光子
寄りし娘に持たす海老豆かぶら漬け★★★
忍び泣く俊寛冬の能舞台★★★
本復の知らせ嬉しき冬日和★★★

●佃 康水
 歳末の広島・愛友市場(信之追加)
ふんだんに井戸水流し河豚捌く★★★★
「河豚捌く」の句は、珍しく、したがって、難しい句なので、読者にもっと親切であって欲しい。。「河豚捌く」ことの丁寧な前書が欲しいのである(高橋信之)

女子校の白山茶花や咲きこぼれ★★★ 
瑞枝さす梅の冬芽や未だ固し★★★ 

●小口 泰與
群馬・上毛三山(信之追加)
朝霜や三山の襞くっきりと★★★★
web<全国三山巡り>によると、全国の三山は、現在97例あるという。作者の在住地が解らなければ、この句の<三山>は、97例のどれだか解らない。作者が前橋在住であれば、この句の<三山>は、おそらく上毛三山であろうと思う。赤城山、榛名山、妙義山である。句の添削は困難。(高橋信之)

冬ばらの開くこと無き風の中★★★
明らかに映すや雪の逆さ富士★★★

▼12/17

●黒谷 光子
寄りし娘に持たす海老豆かぶら漬け★★★
忍び泣く俊寛冬の能舞台★★★
本復の知らせ嬉しき冬日和★★★

●桑本 栄太郎
やわらかに今朝の雨降る冬木かな★★★
残る葉の色極めけり朝しぐれ★★★
梢散り下枝の極む冬もみじ★★★

●多田 有花
冬三日月すでに隠れし帰り道(原句)
冬三日月すでに落ちいし帰りの刻★★★★(正子添削)
キャンドルに灯り点して待降節★★
「よいお年を」言いつつ別れ日短か★★★

●小口 泰與
冬薔薇の咲くほかはなし風の中★★★
くっきりと赤城の襞や空っ風★★★
寒菊や日差す縁側ゆったりと★★★

▼12/16

●小西 宏
枯芝に影踏み走る日曜日★★★★
枯芝に映った自分の影を踏んで走る日曜日。体を動かし走る快い小春日和の日曜日への賛歌。(高橋正子)

枯葦の狭間に光る鴨の波★★★
木枯らしに鴉の飛翔緩急す★★★

●川名ますみ
紅葉散る空に一片雲来たる★★★★
紅葉と青空の一片の雲の取り合わせがすっきりとして快い。「雲来る」がこの句を生かしている。(高橋正子)

裸木ののびやかに指す空青き★★★
動物園の柵に一枚冬紅葉★★★

●桑本 栄太郎
静寂と云えど冴え居る朝かな★★★
足もとを翔びて冬木へ群すずめ★★★
葉を落とし早も冬芽や青空に★★★

●多田 有花
雲晴れて明石海峡年の暮★★★
年の瀬や海の最も輝きぬ★★
冬空へ大きくクレーンの動きけり★★★★

●黒谷 光子
暮れ早し明るきうちに京を発ち★★
街の灯を映す車窓や日短し★★★
帰り来て仰げば細き冬の月★★★

●河野啓一
★冬野広し杖を頼りに地平見る(原句)
★冬野広し杖が頼りに地平見る★★★★(信之添削)
★枯れ葎八十路の旅はまだ一歩★★★
★電飾の点滅青き生誕祭★★

●小口泰與
★小春日の羽根いっぱいの孔雀かな(原句)
★小春日の日を羽根いっぱいに孔雀立つ★★★★(正子添削)

★寒薄夕映え集め光りけり★★★
★年古りて無益(むやく)となりし枯忍★★★

●藤田洋子
★極月の手帳に余白まだありぬ★★★★
極月も今日は半ば。手帳はまだ書き込む余白を残している。手帳の余白は大晦日までの残る日数。それを余白という白で表わした清潔感が好ましい。(高橋正子)

★柚子浮かせ湯船に満ちてくる香り★★★
★店々のポインセチアに街暮るる★★★

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●添削12月②●

2012-12-16 18:43:04 | Weblog

[12月9日~15日]

▼12/15

●小西 宏
老いじみて厚き布団に明けを待つ★★
落ち葉積む里山深き小鳥影★★★
年忘れの友と別れて車の灯★★

●小川 和子
蓮掘られ肌色ひかる荷の届く★★★
掘りたての蓮根は、泥を水で流せば、蓮根の肌色が光る。いかにも新鮮な荷だ。(高橋正子)

鳴門手掘りという蓮根を天ぷらに★★★(信之添削)
蓮根掘る農園の写真添えられて★★★

●川名 麻澄
裸木と檻の向こうに雲なき空★★★★
檻も裸木も言ってみれば黒い線。無機的ながらもニュアンスの違う黒い線の間の青空が面白く、裸木も一種檻柵のように思える。(高橋正子)

青空に銀杏黄葉とフラミンゴ★★★
動物園の檻に絡まる落葉あり★★★

●多田 有花
木版画の淡き色合い冬の暮★★★★
もの暗い冬の暮に、木版画の淡い色彩が浮きたって、押し詰まった暗さに温かみと明るさを与えて和むものがある。(高橋正子)

冬の雨降る音を聞く夜明け前★★★
まだ少し新車に慣れず日短か★★★

●佃 康水
伐採の竹林冬の日矢とどく★★★
落葉掻く庭へ零るる群れ雀★★★
万両や奥まる庭へ真っ赤かな★★★

●迫田和代
楽しみね何時もの道に冬日射し★★★
来春の艶を残して桜散る★★
杵突きの音も懐かし年の暮れ★★★

●小口泰與
夕映えをたまわる雪の浅間かな★★★
大根引く赤城の裾野吹きさらし★★★
背を押され枯葉と駆けし風下へ★★★

▼12/14

●藤田裕子
湯気立てて私の時間愉しめり★★★★
「愉しめり」がいい。「私の時間」がいい。主婦の日常を詠んだ、作者のささやかだが、充実した生活が伝わってくる。この句を読めば、読者も「愉しめり」の境地になる。(高橋信之)

イルミネーション冬の夜空に夢描き★★★
冬の朝厳しさ迫る遠き山★★

●小西 宏
風寒く晴れいて空に広き道★★★★(正子添削)
下五の「広き道」の解釈が難しいが、良寛が子どもの凧に書いた「天上大風」を思い、天上の「広き道」と解した。地上の「広き道」との解釈も可能だが、凧が揚がり、飛行機が飛ぶ大空の「広き道」である。(高橋信之)

冬晴れに丹沢霞む西明かり★★★ 
冬の夜に割って歯に触るチョコレート★★

●佃 康水
焚火して段取り話す浜漁師★★★★ 
冬の漁師浜は、寒さこの上なく、流木などを集めて焚火をする。漁の段取りの話も焚火を囲めば、いろいろ出てくることだろう。(高橋正子)

陽を湛え紅さす梅の冬芽かな★★★ 
風尖る家路へマフラー深く巻く★★

●小口泰與
あけぼのの雨を弾きし青木の実★★★★
青木の実はやや楕円形で、つやつやと真っ赤に熟れる。あけぼのの冷たい雨を弾けば、艶も赤さも増して一層輝く。(高橋正子)

群雀群れて降りたる冬田かな★★★ 
寒菊の此処のみ日矢の射しにけり★★★

▼12/11

●迫田和代
初雪や原爆ドームの空に舞う★★★★
初雪はどこに降っても感動のあるものだが、とりわけ原爆ドームの空に舞うときは、さまざまなことが脳裏に浮かぶ。焼けたドームに透ける空に詩情がある。(高橋正子)

道端に咲ける野菊をただそれだけを★★★
一本の続く雪道に赤い傘★★★


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