◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

7月1日-10日

2014-07-10 04:40:48 | Weblog
7月10日

●小口泰與
凌霄花や朝の浅間山(あさま)の定かなる★★★
湖の上ちぢに渡りぬ時鳥★★★★
翠黛の裾野に沿うや夏の雲★★★

●古田敬二
水の輪の真ん中にいるみずすまし★★★★
みずすましが泳ぐとその周りに水の輪ができるが、瞬間を止めれば、みずすましは、水の輪の真ん中にいる。(高橋正子)

みずすましつかの間水輪重なれり★★★
みずすまし流されまいと四肢を掻く★★★

●佃 康水
長き貨車茂れる草を煽り過ぐ★★★★
線路わきには夏草が茂る。そこを延々と貨車を牽いて列車が過ぎる。その間草は緩急はあるけれども煽られ通す。昨日の投句の「延々と貨車のコンテナ梅雨の野に/桑本栄太郎」を重ねて思った。(高橋正子)

みずすましつかの間水輪重なれり★★★
みずすまし流されまいと四肢を掻く★★★

●桑本栄太郎
梅雨晴間遥か鞍馬の峰に雨★★★
特急の電車通過や葛茂る★★★★
ワイパーの激しく振りぬ白雨来る★★★

●小西 宏
七月の雨は緑に山濡らす★★★★
カンナ黄を広き緑に誇り立つ★★★
窓閉じて湿気に浸る夏嵐★★★

●佃 康水
保線区員待機をしては草を刈り★★★
長き貨車茂れる草を煽り過ぐ★★★★
夜の法座闇に鳴き立つ雨蛙★★★

7月9日

●祝恵子
夏露店牡蠣焼く匂い漂わせ★★★★
好きな路地ノウゼンカズラの枝垂れおり★★★
収穫にしぜんと笑みが夏野菜★★★

●小口泰與
雉の子の畦に跳び出づ草いきれ/小口泰與★★★★
畦に雉の子が迷い出てきて驚くが、夏草に埋没しそうな雉の子の懸命な様子かわいく愛おしい。(高橋正子)

山女釣浅間は夕日留めおり★★★
遠雷や太き雨脚忽然と★★★

●河野啓一
のうぜんの朱を敷き詰めて何語る★★★
烏賊釣りの船の支度や宵の内★★★
万緑の静けさ来る風を待つ★★★★

●桑本栄太郎
延々と貨車のコンテナ梅雨の野に★★★★
梅雨が延々と続くように、積み木のような四角なコンテナを貨車が延々と引っ張って行く。ここでは、何事もなくひたすら梅雨が続いている。(高橋正子)

初蝉の鳴き初めすぐに止みにけり★★★
雨脚の峰駆けのぼる白雨かな★★★

●多田有花
雲薄く初蝉の声ひそやかに★★★
梅雨台風近づく気配草を刈る★★★★
冷酒酌むほのかにフルーツの香り★★★

●小西 宏
息継ぎができてバタバタ水泳ぎ★★★★
鳥の声聞きに緑の森深く★★★
四十年(よそとせ)や妻の肩揉む黴の宿★★★

7月8日

●古田敬二
露草の朝の命を輝かせ★★★
半夏生薄暮の庭の白さかな★★★
半夏生薄暮の庭に浮かぶ色★★★★

●小口泰與
毛の国の山河あらぶるはたた神★★★
外に出づや月光さゆる影涼し★★★★
はたた神納戸の隅の小犬かな★★★

●桑本栄太郎
<鴨川、四条大橋界隈>
鴨川の流れ真中や鮎を釣る★★★★
京都の街を流れる鴨川に天然鮎が溯上するのも意外だが、川に魚道が作られて溯上を助けているようだ。街中の川で鮎釣りの風景が楽しむことができ、画中の出来事のようだ。(高橋正子)

鮎掛や銀鱗光り手網(たも)に入る★★★
葉柳や川端通りは風の中★★★

●小西 宏
梅雨晴に青水玉のレインブーツ★★★★
梅雨雲の切れ間に夕日手に眩し★★★
暗がりに零れるひかり岩清水★★★

●高橋秀之
初蝉の不揃いの声響く朝★★★★
おぼつかなく、遠慮がちな鳴き方に、初蝉らしさがある。真夏には、蝉も一斉に鳴きそろって声をあげが、鳴きはじめは、あちこちから、試しに鳴いているようで不揃いなのだ。(高橋正子)

梅雨晴間薄雲の間に差す日差し★★★
冷蔵庫の中に積み上げ水羊羹★★★


7月7日

●小口泰與
バンガロー魚三枚に下ろしたり★★★★
飛ぶ鮎の海無き川の苔を食む★★★
眼間の赤城山(あかぎ)まじかく真夏かな★★★

●桑本栄太郎
みどり濃き山河滴る在所かな★★★
との曇る天の灯りや黐の花★★★★
星合のせめて今夜は晴れ間欲し★★★

●小西 宏
アジサイの花の終わりも糸の雨★★★
雨止んで高き緑の洗われし★★★★
梅雨空に夕星一つ見えたかな★★★

●多田有花
梅雨雲が隠せる山を歩きおり★★★
にわか雨あがりて七夕の宵に★★★
塩糀入れて胡瓜を浅漬けに★★★★

●川名ますみ
到来の菜を香らせ夏座敷★★★★
この句の菜は、おかずや料理のことを指し、「一汁一菜」の「さい」と読みたい。到来物はそれだけでもうれしいが、それがよい香りがすれば、気持ちが清新になって、うれしさも増す。それをいただく夏座敷が涼しげだ。(高橋正子)

到来の野菜の響き夏厨★★★
玉葱のポタージュに匙ひからせて★★★

7月6日

●小口泰與
雪渓を渡るや滝のごうごうと★★★★
雪渓の壮麗な眺めは、夏山の魅力の一つ。その上、雪渓を渡るとき滝がごうごうと体を震わせるように鳴り響き、自然の雄大さを身をもって感じる。(高橋正子)

老鶯や大樹見上げる顔と顔★★★
夏の昼持薬飲むのを忘れたり★★★

●河野啓一
風鈴の響く窓辺に碁石(いし)のおと★★★★
子雀の軒端行き交い賑やかに★★★
雨空に黄色い百合がぽっかりと★★★

●多田有花
梅霖の降る音静か絵を描きぬ★★★★
にわか雨二度来る午後や梅雨曇★★★
貨物列車梅雨の鉄橋を渡る★★★

●桑本栄太郎
川風の微風に応え夏柳★★★
青柿の雨滴したたり太りけり★★★★
うす闇にかざす白さや曼陀羅華★★★

●佃 康水
草刈り機木魂し合える谷間かな★★★★
夏草が生い茂り、草刈りに忙しいときだ。谷間のあちこちで使う草刈り機の音が木魂する。谷間の村も生き生きとし、活動的な暮らしがうかがえる。(高橋正子)

水音や沢紫陽花へ絶え間なく★★★
山陰の沢あじさいや瑞々し★★★

7月5日

●小口泰與
武蔵野を蘇らせし古代蓮★★★
逆光の葉裏を透かすはちすかな★★★★
現世(うつしよ)の喧騒さだか古代蓮★★★

●迫田和代
河沿いの木立ちの陰で草笛を★★★★
どこまでも続く青田に青い風★★★
よき人の願いを結ぶ天の川★★★

●黒谷光子
塩焼きの鮎の尾ぴんと昼の膳★★★
ひろびろと山の傾斜の紫陽花苑★★★★
紫陽花苑行きつ戻りつ時惜しむ★★★

●河野啓一
蜘蛛の糸螺旋階段捲きあげて★★★
せせらぎをついとかすめて糸蜻蛉★★★★
雨もよい花を巡りて揚羽蝶★★★

●桑本栄太郎
茄子苗の花の咲きつつ売られけり★★★★
茄子の苗が売られているが、はや、紫の花がついて、みずみずしく勢いがある。植えればすぐに根付き、よく実を結ぶそうだ。(高橋正子)

小賢しき朱き実となる花柘榴★★★
咲き終えしひとつは零れダチュラ咲く★★★

●小西 宏
雨に雑草(くさ)引く老農の保育園★★★
ジョギングに足蹴る道の緑風★★★
梅雨雲の去りたる西の大き空★★★★

●古田敬二
踏まれるなと草むらに置く蝸牛★★★
夏野菜鍋にあふれてラタトゥーイユ★★★
袋下げ完熟梅の香をこぼし★★★★

●高橋秀之
舞い降りてまた大空へ揚羽蝶★★★★
揚羽蝶は、「舞う」というのにふさわしい飛び方をする。舞い降りてきて、また空へ飛び立つ。その空が「大空」なのがいい。揚羽蝶が鮮明だ。(高橋正子)

朝顔の初めの一輪花開く★★★
食卓に大輪の百合ひとつ挿す★★★

7月4日

●小口泰與
薄もやの赤城や畦の雨蛙
老鶯のこだま定かや空青し★★★
武蔵野の空の明るき古代蓮★★★★

●黒谷光子
吊り橋を渡るその先夏木立★★★★
石垣に迷うことなき蟻の列★★★
渓流の音に応えて合歓の花★★★

●桑本栄太郎
夕涼やゴーヤの棚の整いぬ★★★★
「整いぬ」で涼しさが醸し出された。日除けにもなるゴーヤの棚に葉が茂り、実も育って、真夏へ向けて申し分ない状態。そこに夕風が吹き、涼しさもいっそうだ。(高橋正子)

日の角度見つつ棚組む夏日かな★★★
ふんぷんと蔓のみどりのゴーヤ剪る★★★

●川名ますみ
赤味さす眉月七月の街に★★★★
赤味を帯びた眉月はやはり夏の月である。街の灯の上に、広い夜空にはかなく、神秘的だ。(高橋正子)のうぜんの落ちし路面に雨細く★★★
夏服の少女両手であっかんべ★★★

7月3日

●小西 宏
梅雨の朝胎児のごとく犬眠る★★★
夏燕羽打ち振って雲の間へ★★★
荒れ梅雨の雲紅色に夕迎う★★★★

●小口泰與
夏の暁畦に羽根寄すつがい禽★★★
炎帝に仕う農婦や雲一朶★★★
あじさいや変化にとみし切通し★★★★

●桑本栄太郎
青梅雨の雨雲峰を奔りけり★★★
雨雲の白く覆うや梅雨の山★★★★
雨だれのほかに音なく梅雨寒し★★★

●高橋秀之
さりげなく少しの風を白扇子★★★★
扇ぐともなく扇ぐ扇子を使うしずかな振る舞い。さっぱりとした白扇子が起こすほんの少しの風がさわやかだ。(高橋正子)

冷房の風あたる場所じっと立つ★★★
街灯の照らす白薔薇雨しずく★★★

●高橋信之
梅雨晴の森の空見ゆ遥かな青★★★★
梅雨晴の森。森の上の空は意外に高く青々と力強く広がっている。「遥かな青」をもってそれを表現した。(高橋正子)

萱草の群れ咲くに陽が昇る★★★
紫陽花の花の終わりのすざましき★★★

7月2日

●多田有花
夏朝日苔むす岩に差しにけり★★★
一段落つき七月を迎えおり★★★
短夜やパソコンで聴く深夜放送★★★★

●桑本栄太郎
推敲の窓に入り来る青葉風★★★★
推敲に専心しているとき、青葉を吹く風が窓から入り、ふっと緊張が解けて、さらによい境地に達したことであろう。(高橋正子)

茄子の花支柱あまたの河川畑★★★
夢に見し吾は少年昼寝人★★★

●小口泰與
蟻の陣沛雨に忽と崩れけり★★★★
雷の言の葉わかる小犬かな★★★
夕顔や夕日浅間をつかさどる★★★

●河野啓一
伊吹山お花畑は山頂に★★★★
青葉して六甲山上雲白し★★★
花ぎぼし揺れてゆらゆら人の世も★★★

7月1日

●高橋秀之
梅雨晴間昇る朝日はまん丸く★★★★
朝の陽に照らされ青葉がより青く★★★
始発から見る夏の日眩しくて★★★

●小口泰與
高原の静寂をやぶる青蛙★★★★
青蛙は雨蛙ともいわれ、草や木の葉の上に棲み、夕立の前などにキャクキャク鳴く。高原に夕立が来そうな気配。それを感じて青蛙が一斉に鳴きはじめた。静かな高原も突如静寂が破られ、大夕立に見舞われそうだ。(高橋正子)

夏霧やとっきょとかきょくきりもなし★★★
居間の隅あえぐ小犬のはたた神★★★

●桑本栄太郎
七月の夕風青く暮れゆけり★★★★
湧水の小滝となりぬ池公園★★★
おぼれそうな深き青さや七変化★★★

●河野啓一
夾竹桃紅白ならび仲の良き★★★
花えんじゅ垣根の中場所の良さ★★★★
鵯の仔の巣立ちの速さ人は如何★★★

●高橋正子
箱根登山電車
登山電車きしめば紫陽花さわに揺れ★★★★
涼風大きく登山電車の窓を入り★★★
スウィッチバックの登山電車に山青葉★★★
コメント
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