[4月19日]
★懐かしやなずな花咲く峠道/迫田和代
なずなの花には、親しさとなつかしさを感じさせる風情がある。峠道では、すくすくとよく伸びて白い花もきれいなまま。思わず、「懐かしや」という声がこぼれる。(高橋正子)
[4月18日]
★花筏散らし別けゆく濠の舟/祝恵子
濠をゆく花見舟。水面に散り敷く花びら散らし、花びらを別けて、頭上に垂れる満開の花に歓声をあげたりしながら、舟で楽しむ趣向もいいものだ。(高橋正子)
★雨上る森の全てが若葉光/古田敬二
雨があがった森の中。若葉の光があふれて、眩しいくらいだ。森の外よりも明るい若葉の季節が快い。(高橋正子)
[4月17日]
★森深き車窓もありぬつつじ燃ゆ/桑本栄太郎
車窓に移り変わる景色は楽しいものだ。深い森の色から、目の覚めるようなつつじに変わると、快活な気持ちになる。深い緑も、明るいつつじも、いいものだ。(高橋正子)
[4月14日]
★仰ぎ見てさみどり眩し銀杏の芽/佃 康水
銀杏の芽を高く仰ぐとさみどりの芽が太陽に透けて眩しい。それが銀杏の木の高さや晴れた日の空をよく表して、人の気持ちを明るくしてくれる。(高橋正子)
[4月13日]
★旅人に花散る哲学の道/多田有花
哲学の道は疎水に沿って、銀閣寺の麓あたりから南禅寺まで歩ける。京都を訪れる旅人たちも、哲学者たちが散策したこの道を楽しむことができる。桜が散るころには桜の散る気分を思索させてくれる。(高橋正子)
[4月12日]
★スキップし先頭ゆく子花万朶/内山富佐子
満開のさくらの中のいい風景だ。「スキップ」、「先頭」、「花万朶」と続く言葉の並びがいい。(高橋信之)
★桜餅配る十指に香の残り/佃 康水
子供たちに、であろうか。大人たちに、であろうか。桜餅を配ったのである。指に残る「香の残り」は、塩漬けで香る「桜の葉」の香であり、「十指」がいい。作者の行為、そして作者の思いがありありと読者に伝わってくる。平易であって佳句。(高橋信之)
[4月11日]
★土手一面菜の花だけが残る夕/上島祥子
夕べの土手、菜の花の鮮やかな黄色が浮かぶように暮れ残っている情景。春の夕べの暖かさも加わり、柔らかな春たけなわの景色に和む。(高橋正子)