2月10日(4名)
小口泰與
まんさくや赤城すっぽり靄の中★★★
蕗味噌や魚の腹へたっぷりと★★★★
たっぷりの蕗味噌と食べる魚の美味。故郷の味がぎっしりと詰まって、心底故郷の良さを味わう。(高橋正子)
ふわふわの沼の夕日や花みもざ★★★
廣田洋一
三日月の高く昇りて凍返る★★★★
雲流れ雪山浮かび凍返る★★★
帰り道瞬く星や冴返る★★★
桑本栄太郎
あおぞらの売家の庭にうす紅梅★★★
丘上の天を占め居りいかのぼり★★★★
いたずらと思えどにくし春の風★★★
古田敬二
楢の木の幹吸い上げる春の水(原句)
楢の木の幹が吸い上ぐ春の水★★★★
春になると、実際、大きな木の幹に耳を当てると、木が水を吸い上げる音が聞こえる。楢の木の芽吹きの美しさがはやも想像できる。(高橋正子)
春の空オリオン星座見つけたり★★★
雪柳五弁の白き花咲かせ★★★
2月9日(5名)
小口泰與
新しき牧舎の牛や木の芽時★★★★
春の雨雀の糞を洗いそめ★★★
梅が香や帰宅の庭の薄明り★★★
廣田洋一
薄氷岸を離れて光りけり★★★★
薄氷を透かして見ゆる鯉の口★★★
火の用心バケツ覆ひし薄氷★★★
多田有花
余寒なお今宵は豆乳鍋とする★★★
名のみの春光の春にて御座候★★★
奥山に化粧をさせて春の雪★★★★
桑本栄太郎
ハングルの文字の瓶見え磯菜摘む★★★
春潮の円く広がる水平線★★★★
海苔掻の潮のたゆとう岩間かな★★★
古田敬二
雪柳互生のつぼみを正確に★★★★
御嶽の見える高みへ青き踏む★★★
伊吹颪煙は横になびきおり★★★
2月8日(4名)
小口泰與
うららなる浅間や佐久の鯉料理★★★
永き日や耳標新たな子牛達★★★★
遅き日や浅間は没日近づけず★★★
廣田洋一
春風やスクランブルの交差点★★★★
スクランブル交差点。ここには人が入り乱れているが、春風も自由に吹いている。スクランブル交差点の賑わいが春の明るさに満ちている。(高橋正子)
神木の赤き実揺らし風光る★★★
宅配の台車は緑風光る★★★
桑本栄太郎
登り来て遥か淀川よなぐもり★★★★
金縷梅の花や枯葉を付けしまま★★★
さざ波のわらわら走り春浅し★★★
古田敬二
舗装路の割れ目に伸びる青き踏む★★★
春立てば樹影は高し青空へ★★★★
春の声を聞くと、人の心もおのずと明るくなる。木木も黒々と樹影を空へ伸ばしている。伸びあがる樹影がたのもしく思える。(高橋正子)
樹影高しメジロどち群れて飛ぶ★★★
2月7日(5名)
廣田洋一
黄水仙丈を競ひて咲きにけり★★★
遊具より飛び下りる子よ黄水仙★★★★
一つだけそつぽを向きし黄水仙★★★
小口泰與
春の夜やポートレートを撰定す★★★★
寒さも少し和らいだ春の夜。春の灯の下に写したポートレートの数々。その中のどれにするかの撰定作業は、厳しいといえば厳しいが楽しい時でもある。納得の作品が選ばれたことだろう。(高橋正子)
あたたかや餡いっぱいのおやき食む★★★
のどけしや五色団子を妻と食ぶ★★★
桑本栄太郎
犬ふぐり昨日の夜の星ならむ★★★
森閑と里の庭なり梅ひらく★★★
ものの芽やときには句帳開きつつ★★★★
芽吹きのとき、散歩しつつも、心を打つものがあり、時に句帳を開く。「ときに」が余裕。がむしゃらでも、必死でもない。余裕から見えてくるものがある。(高橋正子)
多田有花
梅が香や挨拶交わし行き過ぎる★★★★
稜線の二月の木々に朝日差す★★★
春眠やふとんの引力に負ける★★★
古田敬二
約束の木陰に万作まず咲けり★★★
いかのぼり町一番の高台に★★★★
つくしんぼ一つ除草の鍬先に★★★
2月6日(4名)
小口泰與
飛び石のそぼ濡る庭や白椿★★★
川岸を駆けるD51春の朝★★★★
川岸の草が萌え、川の水が雪解けに急ぐ春の朝、D51が力強く駆ける。見ていて元気が湧く一句。(高橋正子)
消防車駆け春昼の寺の街★★★
廣田洋一
青空へ枝を突き立て梅の花★★★★
小公園一人見上げる梅の花★★★
鶯や枝移りつつ飛び去りぬ★★★
桑本栄太郎
下萌や地道を歩む川のへり★★★
まんさくの早も咲き初め居たりけり★★★
堰水の飛沫きらめく猫やなぎ★★★★
堰の水が落ちるところの猫やなぎ。堰の水の飛沫がかかり、赤い芽も、義い色の花もきらめいている。早春のまぶしい景色がいい。(高橋正子)
古田敬二
ケットル鳴るコーヒー淹れむ春立つ日★★★★
校舎から子らの歓声春立つ日★★★
柊指す古びし雨戸の穴探す★★★
2月5日(3名)
小口泰與
蒼空へ一ノ倉沢冴返る★★★
病院の長き廊下の余寒かな★★★
縄文の土偶の乳房春兆す★★★★
縄文時代の土偶。ふっくりと丸い乳房の素朴さに、春の兆し、生まれ出るものの命の素朴さを思う。(高橋正子)
廣田洋一
雲雀来る虫も捕らずに飛び去りぬ★★★
窓を打つ木の葉の音や春一番★★★
外出を抑へる如く春一番★★★
桑本栄太郎
畝ごとのマルチ煌めく春日さす★★★
からす飛ぶ嶺の茜や春入日★★★
自粛とう値打ち無き日や春暮るる★★★
2月4日(5名)
小口泰與
春立や榛名九嶺紫紺なり★★★
早春や棚田の空へ鳶の笛★★★
春浅し榛名は雲を育て初め★★★★
廣田洋一
春寒やビルの谷間に寄せ来たり★★★
右左杖をつく人春寒し★★★
鶯の声晴れやかに朝かな★★★★
多田有花
春始まるおかしな電話より★★★
寒明けや小枝集めに野にいずる★★★★
余寒あり空き缶空き瓶出しにゆく★★★
桑本栄太郎
料峭の戸締りかたき売家かな★★★
犬ふぐり早も咲きたる土手の道★★★
春疾風吾の帽子を攫いけり★★★
古田敬二
三和土土間薪ストーブの終夜燃ゆ★★★★
三和土に、古い民家の土間を想像する。薪ストーブを終夜焚いて暖をとる寒いところの、新しい暮らしがあたたかく伝わる。(高橋正子)
寒鯉のじっと池底動かざる★★★
寺の坂音立て下る落葉踏み★★★
2月3日(5名)
小口泰與
春立つや朝の利根川波の音★★★
追炊きのスイッチ押すや寒の明★★★
大利根の波が波追う二月かな★★★★
廣田洋一
立春の空青々と澄み渡り★★★
立春の自粛会ひたき友多し★★★
春寒をほぐす青空明かるけり★★★★
春の寒さは疑いないけれど、青空の明るさを見れば、寒さがほぐれる気がする。光はまぎれもなく春の光となっている。(高橋正子)
桑本栄太郎
リセットの大き日過ぎぬ春来たる★★★
巣ごもりの今朝の目覚めや春迎ふ★★★
料峭や会いたき人の夢に見ず★★★
古田敬二
雪しまく少年の日を思い出す★★★
冬の鵙昔の上司の訃報来る★★★
寒鮒釣り動かぬ浮子と竿先と★★★
多田有花
立春の空の雲なく晴れ渡り★★★
窓鳴らす風今日からは春の風★★★
春立つ日小さき焚火でコーヒーを★★★★
寒が明け今日から春だと思うと、気持ちがうきうきして来る。焚火の小枝を集め、焚火でお湯を沸かし、焚火の炎をたのしみ、コーヒーの香りを楽しむこと、外の空気を吸うこと。コーヒー一杯に至福の時間が生まれている。(高橋正子)
2月2日(5名)
小口泰與
新築の木槌の音や春隣★★★★
柊を挿すや赤城の風しまく★★★
部屋ごとに犬を従え鬼は外★★★
廣田洋一
恵方巻どんと積み上げ節分かな★★★
護摩焚きて豆は撒かざる節分会(原句)
「焚きて・・撒かざる」が説明的なので、場面のイメージが湧き、詩情が出るように添削しました。
護摩の炎や豆を撒かざる節分会★★★★(正子添削)
新型コロナウィルスの感染が収まらなく、節分も、11都道府県に非常事態宣言が出された。人の混雑を避けて豆撒くをやめた寺などがあった。その事態下の句。護摩の炎に、厄病退散を願う。(高橋正子)
【追記】
この句の「護摩の炎」は、「ごまのほ」と読ませています。
俳句では、慣例的に炎(ほのお)を「ほ」と読ませることが多くあります。
理由は炎の説明として「炎(ほのお)は、火の中でも、気体が燃焼するときに見られる穂のような、光と熱を発している部分を指す。語源は火の穂(ほのほ)から由来していると言われている。」に元があるようです。炎を「ほ」と読ませるかどうかは、問題もあると思われますが、今回の添削は慣例の多くに従いました。(高橋正子)
頭出し赤蕪の玉ふくらみぬ★★★
桑本栄太郎
陽光の止め処無きなり今日節分★★★
豆撒きや歳の数などもう喰えぬ★★★
枝のみな日差しに向きぬ桜芽木★★★★
古田敬二
いのこずち久女の句碑から付いてくる★★★★
中学生山茶花散り敷く道を行く★★★
麦踏みし母と傾斜の山畑に★★★★
多田有花
節分や南に向かい気功する★★★
二月二日百二十四年ぶりの節分★★★
節分や八幡さまにお参りす★★★
2月1日(5名)
小口泰與
白鳥の暮れ果つ声や塒へと★★★
寄合は恐怖の的や虎落笛★★★
日脚伸ぶ松の葉末の青あおと★★★★
日脚に明るさを感じ、辺りを見れば、ものみな生き生きとして見える。常緑の松も緑が青あおと、真冬とは違っている。春に向かっているのは、確か。その嬉しさ。(高橋正子)
廣田洋一
空覆ふ雲の流れて二月来る★★★
畑の土黒々光り春近し★★★★
受験子に道案内や大学生★★★
桑本栄太郎
楽譜為す銀杏並木の冬芽かな★★★★
剪定のクレーン高く日差しけり★★★
二ン月のあおぞら続く今朝の晴れ★★★
多田有花
紅白が咲きそろいたり寒の梅★★★
寒の陽を受ける平野を見下ろせり★★★★
寒の梅ちょんちょん飛びてじょうびたき★★★
古田敬二
向山に広く日当たり春近し★★★
御嶽見ゆ冷えている三角点★★★
鈴鹿から伊勢湾越えて風花来★★★★