5月20日(3名)
小口泰與
親指の指紋かすかに水羊羹★★★
葉柳や川辺の書肆の薄明り★★★★
竹落葉波にひろごる鯉の口★★★
廣田洋一
紫陽花の薄く色付く湯の煙★★★★
紫陽花の淡い色湯の煙に溶けたような印象がいい。(高橋正子)
紫陽花の色付き初めし今日の雨★★★
紫陽花の小毬一つ色付きぬ★★★
桑本栄太郎
雨ながら白き頭巾や山法師★★★
乙訓の雨の大枝(おおえ)や柿若葉★★★★
コロナ禍の雨のひと日や梅雨ごもり★★★
5月19日(4名)
小口泰與
夕映えの積乱雲や利根上流★★★★
八丈の粋な着こなし若楓★★★
麦秋や背後を走る足尾線★★★
廣田洋一
一人ずつ藁火にかざす初鰹★★★
初鰹土佐の生姜を利かせけり(原句)
生姜を利かせてあるという事実を述べるだけになっていますので、ご自分の感じたことを少し述べると、句が生き生きしてきます。(高橋正子)
初鰹土佐の生姜のぴりと利き★★★★(正子添削例)
初鰹土佐の清酒を友として★★★
桑本栄太郎
ふるさとの友と電話や梅雨長し★★★
ケリケリと団地の庭に鳧鳴けり(原句)
鳧の名前はその鳴き声からつけられたともいわれています。庭のどこでないているのか、庭の様子とか、時間とかがあれば、句に広がりがでて面白くなると思います。(高橋正子)
鳧鳴けり団地の庭の濡れていて★★★★(正子添削例①)
鳧は「ケリケリ」という高い声でなくところから、鳧とよばれるらしい。ふだんなら田んぼあたりで鳴く鳧が梅雨でぬれている団地の庭で鳴いていた。思わぬところで鳴く鳧に親しみを覚える。(高橋正子)
鳧鳴けり団地の庭の葉隠れに(添削例②)
雨雲の途切れ峰間や虹の橋(原句)
雨雲の途切れ/峯間や/虹の橋 のように切れていて、つながりが悪いです。
雨雲の途切れし峯間虹の橋★★★(正子添削)
多田有花
驚きぬ史上最速梅雨入りに★★★
どっさりのスナップエンドウ冷凍に★★★
絹さやを入れ味噌汁を作りけり(原句)
記録として残すのには、差し支えないですが、事実を述べて終わっているので、ご自分の五感に感じ取られたことを述べるとよいと思います。
絹さやの緑あざやか味噌汁に★★★★(正子添削)
5月18日(4名)
小口泰與
白日の水田賑わう水馬(原句)
白日の水田賑わす水馬★★★★(正子添削)
曙の群飛ぶ目白木から木へ★★★
夕日差す泉へ硬貨落にけり★★★★
廣田洋一
黄金の穂空になびかせ麦の秋★★★
一声褒めて刈入れたるや麦の秋★★★
バゲットの長きを買ひぬ麦の秋★★★★
バゲットの焦げた小麦色と麦の秋のさわやかさ。バゲットはまた、小麦の恵みでもあって、通い合うものがあって楽しい。「長き」がバゲットを印象付けている。(高橋正子)
多田有花
ぴかぴかの鯉のぼりいま泳ぎ初め★★★
小雨なれどスナップエンドウ収穫す★★★
畑よりキャベツざっくり切り離す★★★★
桑本栄太郎
まだ青き雑草なりぬ小判草★★★
雑草に使い方が気になります。
午後よりの雨の予報や葵咲く★★★
あぢさいの雨を待ちたる蕾かな★★★
5月17日(3名)
小口泰與
一羽立ち全て飛びける目白かな★★★
翠巒や頂上目指す径数多★★★★
翠巒は青々とつらなる緑の山々。その頂上を目指す道はいくつもあり、山登りの楽しみでもある。漢語調の調べから、旧制高校生たちの山登りを彷彿させられる。(高橋正子)
夏川の緑走るや空は蒼★★★
廣田洋一
道端を黒く染めたり桜の実★★★
土手に跳ね川に落ちたり桜の実★★★
街の川常と変わらず桜の実(原句)
「常と変わらず」の部分を、もう少し具体的になさるといいと思います。目の付け所はとてもいいです。
街川のそうそう(淙々)として桜の実★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
坂道を下り卯の花腐しかな★★★★
坂道を下りるとそこはまた別の世界。卯の花腐しの雨が降る所。陰鬱な霖雨に、濡れるともなく濡れて帰るのも、一つの情緒。(高橋正子)
路線バス植田代田を辿り行く★★★
雨脚の時折つよく梅雨入りかな★★★
5月16日(4名)
小口泰與
銀輪の子らや川原の若葉風★★★★
木道の果てたる先や聖五月★★★
奥利根の棚田の畦や草刈機(原句)
「や」で切ってしまっているので、草刈機がどうしたのか、どうなのかがわかりません。添削句は、「奥利根の棚田の畦を草刈機(が刈り進む)」の省略と考えてください。
奥利根の棚田の畦を草刈機★★★★(正子添削)
奥利根の棚田の畦にも草刈機が活躍する。一枚一枚の棚田の畦の雑草をきれいに刈り取ると、稲に当たる風も快く、美しい棚田の光景となる。(高橋正子)
廣田洋一
白鱚のぴんと張りたる背を開く★★★★
高知にて生姜きかして初鰹★★★
土佐沖の一本釣りや初鰹★★★
多田有花
天清和本殿海に向かいおり★★★
夏の朝沖の小島を見て立ちぬ★★★
釣り糸を垂れて卯波に身をまかせ★★★★
桑本栄太郎
髪長きあの娘気になり草矢射る★★★
雨雲の峰駆け抜ける走り梅雨★★★★
雨あがり風吹く茅花流しかな★★★
5月15日(4名)
小口泰與
麦嵐山下り來るひげ漢★★★
白樺の幹の明るき夏の雨★★★★
白樺の幹は、白っぽくだんだらな縞模様。葉もいいが、夏の雨が降りつけても幹は明るく立っている。白樺の林の明るさはいつもロマンチック。(高橋正子)
上州の荒き言の葉はたた神★★★
廣田洋一
両手に飲み物下げて薄暑かな★★★
壁白き熊本城の若葉かな★★★★
今日もまた犬の散歩や若葉道★★★
多田有花
耳澄ます蚊取線香呼ぶ羽音(原句)
耳澄ます蚊取線香の呼ぶ羽音(正子添削)
海原をヨット静かに滑りゆく★★★
夏めきて海の青さの深くなる★★★★
桑本栄太郎
喩ふれば聖者のやうに朴の花★★★
紫陽花の早もつぼみを備えけり★★★
京なれや今日の気温の真夏日に★★★
5月14日(4名)
小口泰與
そよ風に葡萄の花や朝ぼらけ★★★
麦秋や刈込鋏油差す(原句)
麦秋や刈込鋏に油差す★★★★(正子添削)
麦秋は麦が熟れることも指すが、またそのころの季節も指す。梅雨入りをひかえ、農家の人は忙しい。刈込鋏に油を差して、使いやすくして作業の効率を測る。油の匂いも麦秋にぴったり。句材の扱いがいい。(高橋正子)
雲の峰樋を伝いし雀たち★★★
多田有花
薫風を入れて南へ走りけり★★★
開け放つ窓入る風の夏めく日★★★
ミキサー車薄暑の街を右折する★★★
桑本栄太郎
緑陰や肩を大きく深呼吸★★★
プロペラの紅の映え居り若楓★★★
橡の葉の葉脈透きし夏日かな★★★★
廣田洋一
青き葉の夫々そよぐ新樹かな★★★★
公園にママさんデビュー新樹光★★★
次の間に待ちたる客や風炉点前★★★
5月13日(4名)
小口泰與
桷咲くや白樺林借景に★★★
重弁を地につけ雨の牡丹かな★★★
夕映えの一朶の雲や美人草★★★
廣田洋一
閉ざされし植物園や薄暑光★★★
白シャツのカフスを返す薄暑かな★★★
擦れ違ふ学生の群街薄暑★★★★
薄暑、学生服を脱いで白シャツになっているもいる学生の群れ。そんな群れに青春の汗っぽさを感じることもある。うっすら汗ばむ季節こそ若さの象徴でもあるのだろう。(高橋正子)
多田有花
車椅子おろし五月の定期バス★★★
この通り咲くはいずれも赤き薔薇★★★
芍薬を畑いっぱい咲かせ売る★★★
桑本栄太郎
甘き香や雨の予報の忍冬花★★★★
との曇る天の梢や桐の花★★★
暮れなずむお使い帰り山法師★★★
5月12日(4名)
廣田洋一
黄菖蒲や光振りまく庭の隅★★★★
黄菖蒲や歩行注意と町の角★★★
鱚釣りに脚立が良しと父の言★★★
小口泰與
頂上や却下の沼の夏霞★★★
鉄線やそよ風に舞い上がりける★★★
石楠花や堰を越ゆるる水の嵩(原句)
石楠花や堰を越えゆく水の嵩★★★★(正子添削)
ちなみに「越ゆ(文語)」の活用は次のようになります。
語幹:越(こ) 活用:ヤ行下二段活用
未然形:越・え(ず) 連用形:越・え(たり) 終止形:越・ゆ 連体形:越・ゆる(時) 已然形:越・ゆれ(ば) 命令形:越・えよ
多田有花
紅白の灯台並ぶ海五月★★★
葉桜を大きく揺らす午後の風★★★
青嵐夕べようやく静まりぬ★★★
桑本栄太郎
午後よりの雨の予報や紫蘭濃く★★★
薔薇の香や苑に満ち居り樹木葬(原句)
切れが2か所になっているので、避けたいです。
薔薇の香の苑に満ち居り樹木葬★★★★(正子添削)
さざ波の山影映す植田かな(原句)
さざ波に山影映す植田かな★★★★(正子添削)
5月11日(4名)
小口泰與
花ぎぼしはやもひと日の終わりける★★★
花桐や一朶の雲は山離れ★★★★
九輪草小川の流れさらさらと★★★
廣田洋一
黒揚羽見る間に高く飛び去りぬ★★★★
指丸めヨガのポーズや夏の朝★★★
テラスにてコーヒー啜る初夏の朝★★★
多田有花
船ゆけば白き航跡初夏の海★★★★
航跡の白さは季節によって感じが変わってくる。初夏の海では、さっぱりとしとしている。(高橋正子)
野茨や企業所有地守るごと★★★
釣り人のモーターボートは沖目指す★★★
桑本栄太郎
朝なればうす紅差しぬ月見草★★★★
乙訓郡大枝の里に柿若葉★★★
川風の土手の茂みや千日紅★★★