12月31日(4名)
小口泰與
大年の二年詣りや山の道★★★★
「二年詣り」は、大晦日の零時から新年を跨いで初詣をすること。産土神へのお詣りか「山の道」が効いている。(髙橋正子)
木の股に鳥の餌を置く大晦日★★★
年の夜や池にきらりと星ひかり★★★
桑本栄太郎
大歳の老いの二人や朝歩き★★★
貌ぬらし辺り見回し鳰浮ぶ★★★
年用意終えて安堵の理髪かな★★★
廣田洋一
枯菊の香り惜しみつ捨てにけり★★★★
菊は枯菊となっても清らかな香りがある。捨てるには惜しいような香りであるが、枯れたので捨てたのだ。(髙橋正子)
折鶴を番で飾る年の暮★★★
子と二人静かにすする晦日蕎麦★★★
多田有花
風少しありて晴れたり小晦日★★★
深大寺蕎麦をいただく小晦日★★★
柴又で天丼を食ぶ大晦日★★★
12月30日(4名)
廣田洋一
注連飾り終へて茶を汲む夕間暮れ★★★
鷹の子を見に行く子供母の背に★★★★
背負われた子は男児だろう。背負われて見にゆく男児の好奇心が面白く、ストーリー性のある句になっている。(髙橋正子)
半月に明星光りて年送る★★★
小口泰與
住み慣れた大庇より寒雀★★★
小晦日野鳥見たさに沼におり★★★
浅間はや雀色時小晦日★★★
桑本栄太郎
年用意終へて水遣る室の鉢★★★★
忙しく年用意を終えて一段落。忙しさに気が行き届かなかった室の鉢へ、今たっぷりと水を遣る。水も室の鉢物も喜んでいる感じがする。(髙橋正子)
一句得る為に眺むる浮寝鳥★★★
水脈を曳く水面きらめく番鴛★★★
多田有花
年の瀬や塵も積もれば山となる★★★
年の湊越えれば新たなる船出★★★
年の暮お江戸に向かう用意する★★★
12月29日(4名)
小口泰與
風が風押して赤城や年歩む★★★★
赤城颪が吹くのか。風が風を押すような強い空っ風が吹く上州はまさに風の町。「風が風押し」と「年歩む」が呼応したような動きがあるのが、句として妙味。(髙橋正子)
数え日や沼の巌の鳥の数★★★
鷹翔つや奇岩の妙義峙てり★★★
多田有花
早起きや耳まで覆う防寒帽★★★
手袋をつけてキーボードを叩く★★★
数え日の朝の銀行にひとり★★★
廣田洋一
年毎に手抜きの進歩年用意★★★
子の好きなちょろぎを買ひて年用意★★★
浮寝鳥戦終えたる源平池★★★
桑本栄太郎
ぎりぎりの焦りながらも賀状書く★★★
名簿見る時に顔見ゆ賀状書く★★★
人は皆想い出に生き賀状書く★★★
12月28日(4名)
小口泰與
角打ちやサイレン響く年の暮★★★
寒晴やカメラを肩に談笑す★★★
人の世を彷徨いさ迷い年の暮★★★
廣田洋一
読み終えし本を売りけり年の暮★★★
年の瀬や運試しにと宝くじ★★★
大根焚一つ加えし夕餉かな★★★
多田有花
新札に両替をして年用意★★★
寒波緩む身の緊張も同様に★★★
節約は副業なりき年の暮★★★
桑本栄太郎
数え日のスケジュール見るボードかな★★★
外出の妻の留守とや煤払う★★★
数え日やタイムオーバーなる見込み★★★
12月27日(5名)
小口泰與
噴煙の流れ早きや年惜しむ★★★
庭の鳥はや舞い立つや暮早し★★★
底冷えの足の先より痛みけり★★★
廣田洋一
燗酒や注いで注がれて夜の更ける★★★
要らぬもの捨てることより年用意★★★
冷凍の食品届く年用意★★★
多田有花
年の瀬の宵ひとときの通り雨★★★★
年の瀬のあわただしさの中、ひとときの通り雨にしっとりと世の中が落ち着いたように思える。(髙橋正子)
肉野菜茸に卵年用意★★★
数え日やひと日の重みいや増せり★★★
桑本栄太郎
病院をめぐる妻とや年用意★★★
買物の留守を預かり煤払ふ★★★
あおぞらに木々の枝絡み年詰まる★★★
弓削和人
みちのくや明日の雪まで降りしかも★★★★
みちのくに越して雪の多さへの驚き。「明日の分の雪まで降ったのか」と思うほどの雪。(髙橋正子)
ぬかるみの雪路はるか朝日和★★★
引っ越しを終えるや風邪の薬かな★★★
12月26日(4名)
小口泰與
歳晩や顔見に来たと酒提げて★★★
山里の三和土の竈火吹竹★★★
大年や防犯灯の薄明り★★★
多田有花
北の山白く輝きクリスマス★★★★
北の山が白く雪を冠っている。その景色でクリスマスは十分だ。余分なものがなく、すっきりとしたクリスマスの句。(髙橋正子)
深煎りの熱きコーヒー聖誕祭★★★
冷蔵庫を空っぽにして年の暮★★★
廣田洋一
年毎に減りゆく数の賀状書く★★★
賀状書く旅の思ひで次々と★★★★
賀状を書くうちに一年のあれこれが思い出される。旅の思い出も次つぎ浮かんでくる。(髙橋正子)
数へ日や予約入れたる理髪店★★★
桑本栄太郎
齟齬ありて夫婦喧嘩や年の暮れ★★★
すす払う吾が身のすすの数多かな★★★
曇天のままに暮れ行く雪催い★★★
12月25日(5名)
小口泰與
手のひらの千両に来る野鳥かな★★★★
野鳥がてのひらに来ることは、めったにないが、里山あたりでは、警戒しないで来るのかもしれない。千両の赤い実も、寄ってくる小鳥も生き生きしている。誰にもわかりやすい句。(髙橋正子)
麗なる火鉢の熾火星の夜★★★★
猟犬のさても賢し沼の岸★★★
廣田洋一
予定蘭空白となり暦果つ★★★
六曜を小文字にしたる暦売★★★
海外の規制確かめ暦配り★★★
多田有花
クリスマスイブ快晴の空仰ぐ★★★
ぬくぬくと布団に寒波の音を聞く★★★
スロージャズ流して静か降誕祭★★★
桑本栄太郎
大橋を渡り南座ゆりかもめ★★★★
せせらぎの高瀬川なり冬の鷺★★★
北しぐれ遥か遠くに比叡山★★★
弓削和人
しばれるや骨まで滲みる夜の雪★★★
吹雪く風奥にひかえる北の風★★★
欲を言えば、「ひかえる」が気になります。(髙橋正子)
雪晴れの落ちる雪片空を舞う(原句)
「落ちる雪片」は、どこから落ちる雪片かわかるといいです。
枝落つる雪片晴れし空を舞う★★★★(正子添削)
12月24日(5名)
小口泰與
雨脚の枯木さいなむ朝かな★★★
水鳥や猫の鳴き声太きなる★★★
冬の夜や風言の葉を蔵したる★★★★
廣田洋一
頂きし柚子を浮かべて朝湯かな★★★★
逝きし妻星となりしか聖夜かな★★★
靴下に子らの願ひや聖樹の灯★★★
多田有花
空っ風干しものはみな室内に★★★
寒波急窓打つ風に陽の明るし★★★★
寒波来るしっかりアイソメトリックス★★★
桑本栄太郎
あおぞらの欠片と想う風花す★★★★
わらわらとさざ波走る冬の池★★★
なかなかにその気になれず数え日に★★★
弓削和人
冬晴れのいまの湖水は澄み切りて(原句)
冬晴れの湖水のいまぞ澄み切りて★★★★(正子添削)
俳句ができたときは、声に出して読んでみること(朗誦)することが大事です。「湖水は」の「は」は限定の「は」なので、少し気になり、添削しました。(髙橋正子)
冬晴れの湖水はいろんな表情をみせるが、今、湖水は澄み切っている。厳寒の地に立てばこそ見える澄み切った瑠璃色を見た感動なのであろう。(髙橋正子)
バス停の吹雪に耐えるダイアかな★★★
見上ぐれば雪に染まるる枝葉張り★★★
欲を言えば、雪に「染まる」の表現が気になります。(髙橋正子)
12月23日(4名)
小口泰與
寒暁や庭木に集う鳥の数★★★
青空や一気に天(そら)へスキーヤー★★★
冬の朝手のひらに来る野鳥かな★★★
廣田洋一
句座終えて茶話会開く冬至かな★★★
数へ日や帰りくる子の予定聞く★★★
飛行機雲冬天に伸び明日は雨★★★
多田有花
ちらちらと雪舞うなかに受診待つ★★★
冬至の陽明るし午後の風強し★★★
一陽来復入日再び北目指す★★★
桑本栄太郎
冬至湯の親子写真のライン来る★★★
木枯しやさざ波青きにわたずみ★★★★
雨が上がり、青空となった日。木枯が吹いて青空の映るにわたずみにさざ波と立てている。きれいな、塵のない冬の小景。(髙橋正子)
満天星の冬の紅葉や日に映ゆる★★★
12月22日(4名)
小口泰與
短日や風に向かいて畦を行く★★★
早朝の畦彷徨える冬の蝶★★★
沛然と山より雨や寒雀★★★
多田有花
<たつの市・ヤッホの森三句>
幸せの鐘響かせる十二月★★★★
ヤッホの森には「幸せの鐘」がある。十二月の空にだれかが鐘を響かせている。だれもが幸せでありますように。(髙橋正子)
トンネルへ貨物列車の消え師走★★★
校庭から仰げば丸き冬の山★★★
桑本栄太郎
雨脚の峰に二本のしぐれかな★★★
満天星の冬の紅葉や照り映ゆる★★★
鬼柚子の二つ貰いぬ冬至の湯★★★
弓削和人
白い息はずませながら空澄みて
「ながら」の使い方が問題です。「白い息をはずませながら空が澄んで(いる)」の意味になっています。主語が途中で変わるのはいけません。(髙橋正子)
きらきらとはく息白く空へとけ★★★★
きびしい寒気にはく息がきらきらと輝く。すぐさま空へ「とける」。はく息のはかない美しさ。(髙橋正子)
冬風の切れ目のいまを失えり(原句)
「切れ」を入れるとよいです。(髙橋正子)
冬の風切れ目のいまを失えり★★★(正子添削)
12月21日(5名)
小口泰與
給食の肉は鯨やその昔★★★
雪纏う浅間へ朝日差しにけり★★★★
水槽の蓋の雫や冬の魚★★★
多田有花
<たつの市・ヤッホの森三句>
極月の明石海峡大橋見ゆ★★★
冬晴の市街一望展望台★★★
新幹線一直線に冬をゆく★★★★
廣田洋一
橋脚の白く乾きて冬の川★★★★
橋脚という即物的な物を詠んで、水の少なくなった冬の川の様子が率直に伝わってくる。そんな様子にも人の心は動く。(髙橋正子)
新聞を取り出す息の白かりき★★★
空にまだ星の瞬く冬の朝★★★
桑本栄太郎
曇天にうす日差したり寒波急★★★
淋しさに浮寝の鳥を見に来たる★★★
くいくいと日差しに向かう冬芽かな★★★
弓削和人
除雪車に雪また雪や吹雪たり★★★★
除雪車が雪を除雪している最中も吹雪いてくる。「除雪車」「雪また雪」「吹雪」と重なる言葉に雪国の厳しさが知れる。(髙橋正子)
秋田行きコマチに乗らむ窓の雪★★★
軒に垂る氷柱や朝の陽が映る★★★★