◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

9月11日~20日

2019-09-12 11:14:41 | Weblog

9月20日(4名)

廣田洋一
芒野の風に分け入る少女かな★★★★
秋高し孕みしお腹せりだしぬ★★★
さざ波の白く砕けて秋の声★★★

多田有花
閉め切りし窓の向こうに更待月★★★
澄む秋の空より垂れし清掃夫★★★★
南海に嵐が生まれ秋彼岸★★★

小口泰與
いわし雲朝の渓流水堅し★★★★
ぴちぴちと団栗踏むや九十九折★★★
蜻蛉のひとさし指を鷲づかみ★★★

桑本栄太郎
身に入むや梢の揺るる庭の木々★★★
昼餉摂りその後に菓子や秋渇き★★★
汀女忌の妻に代はりて南瓜切る★★★

9月19日(4名)

小口泰與
古書店に藤村詩集いわし雲★★★★
月代や利根の白波尖りける★★★
月光の篳篥に舞う能舞台★★★

廣田洋一
一人酌む酒の味はひ夜長かな★★★
日本映画選ぶ夜長の欧州便★★★★
兼題の五文字の思案夜長かな★★★

桑本栄太郎
人の世の悪を照らすやいなつるび★★★
鳩吹くや風に乗り来る香りあり★★★
夕なれば燃ゆる茜やうろこ雲★★★★

多田有花
わが町の名物ここに秋高し★★★
仲秋や城の町には城のキャラ★★★
秋の暮中庭にいるフラミンゴ★★★

9月18日(4名)

小口泰與
鈴虫のひとふり鳴きてそれっきり★★★
啄木鳥や忍び足なるカメラマン★★★
乱れ萩雀来ている雨後の庭★★★

廣田洋一
穂をはらみ見上げる程の芒かな★★★
折り取りて肩に乗せたる芒かな★★★
荒畑に風を呼び込む芒かな★★★

多田有花
診断がつき爽やかに空仰ぐ★★★
運動会練習の声日々続く★★★

鰯雲夜空いっぱい泳ぎおり★★★★
夜空にも雲の色が見えることがある。この日、鰯雲が夜空いっぱいに泳いでいた。ま昼間の続きの夜空の鰯雲。こんな光景を眺めて楽しくなる。(高橋正子)

桑本栄太郎
葛の花眼下に見たる橋の上★★★
刈り残す畦の供花とや彼岸花★★★★
畦草を刈りとるとき、彼岸花が刈り残された。畦の供花であるかのように。このように彼岸花を大切に思って詠んだ句は珍しい。(高橋正子)

底抜けの空の青さよ鳳作忌★★★

9月17日(4名)

多田有花
珈琲にひとかけのチョコ秋の朝★★★
雲いまだ生まれておらず秋高し★★★★
秋の快晴の空だけを詠んだ句。雲が生きもののように思われていて、雲への親しみがある。ひとかけらの雲があってもよさほうだが、まだ生まれていないのだ。(高橋正子)

秋晴れに芝刈る音の響きおり★★★

小口泰與
竜胆や校庭駆くる里の子等★★★
手鏡を離さぬ人や蘭の花★★★
畳替したる客間や寝待月★★★

廣田洋一
日によりて巻き上げられし秋簾★★★
簾越し友の声聞く秋の夕★★★
料亭の二階に垂れし秋簾★★★

桑本栄太郎
身に入むや哀しき夢に目覚めをり★★★
すつきりと風の抜け行く刈田かな★★★★
刈田となって、なににも邪魔されずに、田を風が抜けて行く。「すっきりと」が気持ちよい。(高橋正子)
ほんのりと嶺の茜や秋の宵★★★

9月16日(4名)

多田有花
十六夜を眺めし後にドアを閉める★★★
日は高く虫の音のみが聞こえ来る★★★
快晴に苅田増えゆく三連休★★★★

小口泰與
風に乗り田川を知らぬ飛蝗かな★★★
蟷螂の首傾げいて芝の上★★★
法師蝉碓氷峠を越え行けり★★★

廣田洋一
七十路はまだ若人や敬老の日★★★
クラス会話は尽きず月見えず★★★
逝きし人浮かび出で来る月夜かな★★★

桑本栄太郎
鳩吹くや喃語を語るバスの嬰★★★
さやけしや銀輪列の女子高生★★★★
女子高生の数人が列をなして自転車の車輪を光らせて、銀輪を光らせて、走って来る。季節も爽やかだが、青春ただなかのういういしい女子高生の姿こそが爽やかなのだ。(高橋正子)

ものの皆くつきり見ゆる秋気かな★★★

9月15日(4名)

多田有花
けんだまの玉秋光を跳ね返す★★★
丘を越え稲田の中へ下りおり★★★

十五夜の明け雲ひとつなき快晴(原句)
十五夜の明けて雲なき快晴に★★★★(正子添削)
快晴とういのは、雲が一つもない晴天の空をいうが、あえて、「雲無き」と雲を強調したところが詩の妙味。
原句は、リズムがよくないので、添削した。
きれいな十五夜が明けて、翌日は、雲のひとつもない快晴の天気に恵まれた。きのうの十五夜の続きの空が、こんなにもきれいな快晴になるとは、まだ気持ちのなかには十五夜の月が残っている。(高橋正子)

小口泰與
湖の風のあわいやちんちろりん★★★
蟋蟀の城垣のぼる声の数★★★
ひぐらしや五右衛門風呂の湯の煙★★★★

廣田洋一
熱帯夜はたと途切れし九月かな★★★★
新涼の朝日を浴びる狭庭かな★★★
新涼や堰落つる水きらきらと★★★

桑本栄太郎
阪急線の車窓に黄金や稲穂垂る★★★★
生駒嶺の低きうねりや秋日さす★★★
ゑのころや嘗て此処には知人宅★★★

9月14日(4名)

小口泰與
コスモスの露天風呂へとなだれ咲く★★★★
露天風呂の傍にコスモスが咲き、露天風呂へと雪崩れている。コスモスに囲まれた湯は柔らかい湯であろうと思う。(高橋正子)

湖へ漕ぎ出す二人荻の声★★★
秋天や像全美なる止利仏師★★★

廣田洋一
甦る学生服の九月かな★★★
花屋にも鶏頭並ぶ九月十九日★★★
九月場所一緒に落ちる行司かな★★★

多田有花
小望月雲に隠れておりにけり★★★
遠目にも鶏頭の赤際立てり★★★
まっすぐな道の両側豊の秋★★★★
稲田の中にまっすぐな道が通るのは、そこが広い田である必要がある。そのことから、広い稔り田が道の両脇に広がる風景が想像できる。豊かに稲が実り、豊の秋が肌に触れて感じられるような句だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
秋蝉や終いの朝となりぬべし★★★
小鳥来る旅の想い出歌いつつ★★★
あきつ飛ぶ陸橋渡る家路かな★★★★

9月13日(4名)

多田有花
ひとりなることが役目の案山子かな★★★
驚きぬ苅田の鳶の大きさに★★★★
高く輪を描きながら滑空する鳶はよく目にする。鎌倉あたりに行くと鳶の多さに驚き、たまに、下りてきているが、羽ばたきをしようものなら、少し怖いくらいの大きさになる。苅田に下りた鳶のまさかの大きさに驚いたことだ。(高橋正子)

昇り来る陽が照らしおり鱗雲★★★

廣田洋一
秋茄子すぐに売り切れ販売車★★★
秋茄子を焼きて加える夕餉かな★★★★
秋茄子の糠の下より光る紫紺★★★

小口泰與
秋雲や下る銀鱗限りなし★★★
丹精の葡萄の房のずっしりと★★★
城垣の崩れし址へ葛の花★★★

桑本栄太郎
錦木の早やももみづる路地を行く★★★
お互いに呼応するかに昼の虫★★★
雨雲の垂れて暮れゆく夢月かな★★★

9月12日(4名)

多田有花
秋の雷暑さを連れて去りにけり★★★
赤々と鶏頭燃えている畑★★★★
鶏頭が燃えているのが、庭や花壇ではなく、畑というのが面白い。農家では、花壇を特に作らず、畑の隅に咲かせているのをたまに見かける。鶏頭を咲かせた人の健康的な「花こころ」とでも言うものが偲ばれてゆかしい。(高橋正子)

秋耕の田に大きかりトラクター★★★

小口泰與
D51の大曲りせる秋の空★★★
紫苑咲く今朝の赤城へ雲一朶★★★
あけぼのの赤城八嶺秋の雲★★★

廣田洋一
渚にて白き石踏む秋の潮★★★★
秋はしらしらと淋しく、白がよく似合う。秋の潮が打ち返す渚を歩き、きれいに洗われた白い石を踏む。
心持も、秋潮に踏む白い石の感覚に似通う。(高橋正子)

秋潮の音を消したる洞窟かな★★★
曇り空水脈白々と秋の潮★★★

桑本栄太郎
秋冷や哀しき夢を見ていたり★★★
目覚め居て哀しき夢の厄日かな★★★
身に沁むや風の葉擦れを聞いて居り★★★★

9月11日(4名)

廣田洋一
水の秋大歩危小歩危巡る旅★★★★
大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)は、2億年の時を経て四国山地を横切る吉野川の激流によって創られた約8kmにわたる渓谷。吉野川の中流にあたるが、流れの水は、渓谷の美しさを引き立てて、「水の秋」が堪能できる。(高橋正子)

小魚の群れなし泳ぐ秋の水★★★
黄色き葉はらりと落ちる秋の水★★★

多田有花
上り月東の山の上に出て★★★
快晴にまず刈られたる田一枚★★★★
稲にいつ鎌を入れるかは、経験による判断が必要なのだろう。快晴の日、まだ葉に緑が残る田が一枚刈られた。手始めの、田が刈られ、いよいよ稲刈りの季節だ。(高橋正子)

秋耕の後をつきおる鳶の群★★★

小口泰與
青空へ水きり石や渡り鳥★★★
源流の流れも秋の色となり★★★
鉄橋を渡るD51秋の声★★★★

桑本栄太郎
四阿に座り風聴く秋の声★★★★
鴨川の風に鳶や秋すだれ★★★
秋雷の午後よりつづく夕べかな★★★
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自由な投句箱/9月1日~10日

2019-09-05 10:55:35 | Weblog

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02
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今日の秀句/9月1日~10日

2019-09-05 10:53:38 | Weblog

9月10日

該当作品無し

9月9日(1句)

★鶏頭や嵐は遠き地に上陸/多田有花
鶏頭が咲くころと言えば、台風が次々に来る季節。今日も鶏頭が咲いているが、今回の台風15号は、自分の居るところではなく、遠い地の首都圏に上陸。台風の災害がどんな様子が、ニュースで知るが、災害を知る身には心配がある。(高橋正子)

9月8日(1句)

 ★まっすぐに城の高さを見る白露/多田有花
有花さんが住むのは、姫路。眩しいばかりの白鷺城がある。城の高さを意識させる堂々とした城だ。白露の今日、秋空に立つ城の高さが印象に残った。「まっすぐに」が聳える白鷺城を印象付けている。(髙橋正子)

9月7日(1句)

★噴煙の直立なるや秋気満つ/小口泰與
噴煙がまっすぐあがるのは、強い風がないとか、山の活動が穏やかであるとかなのだろう。何事もなく噴煙があがり、澄んだ秋の空気が満ちている。(高橋正子)

9月6日(1句)

★せせらぎの音に響きて虫の声/廣田洋一
せせらぎ沿いに歩くと虫がよく鳴いている。せせらぎの音にも集く虫の声にも敏くなった耳には、ふたつが響きあって聞こえる。耳も敏くなる秋だ。(高橋正子)

9月5日(1句)

★上げ潮の河口に狙ふ今年鯊/廣田洋一
河口でよく釣れる鯊は、秋になると身がしまり、一層美味となることから、秋の季語となっている。潮がたっぷりと上げてくるタイミングに、鯊を釣ろうと目を凝らしている。鯊釣りには、一生懸命であろうと、ほのぼのとしたところがある。(高橋正子)

9月4日(1句)

★栗の実や毬青々と伸びにけり/廣田洋一
栗は今、青々とした毬をつけている。枝にもたわわに栗の実がつき、うれしいばかりだ。その気持ちが「青々と伸びにけり」となった。(高橋正子)

9月3日(2句)

★露草や天よりもらいし花の色/多田有花
女性らしい句。「らしい」というと語弊をうむが文芸上の「らしい」としたい。露草の花の青は、天の青といっていい。きよらかな真青さは、天よりもらったもの。(高橋正子)

★優勝のマジック消えて子規忌かな/廣田洋一
日本に初めて野球を紹介した子規。子規の本名は正岡常規だが、幼名の處之助を小学校にあがるとき、升と変えている。この「升(のぼる)」をもじってのぼーる、野球と名付けた。上野公園にも子規を記念した野球場があり、野球の祖といえば子規となっている。優勝のマジックが消えて、ふとしたさびしさに思う、子規のこと。俳句を作っていることで、子規につながった。(高橋正子)

9月2日(2句)

★浅間嶺の星の明るき九月かな/小口泰與
九月となった。そのことを知るのは、いつも見慣れている浅間嶺の空に輝く星が明るくなったこと。爽やかに澄んだ空気が星を明るくさせる。(高橋正子)

★心地良き風をはらみぬ猫じやらし/桑本栄太郎
新涼の季節の猫じゃらしのやわらかさ、やさしさがよく詠まれている。「風をはらみぬ」がやわらかな動きを感じさせてくれている。(高橋正子)

9月1日(3句)

★熊鈴や隠れ沼の空爽やかに/小口泰與
隠れ沼に秋がはやばやとやってきた。熊除けの鈴の音もきれいに響く。空も、心も爽やかだ。(高橋正子)

★風祭知らせる朝の町内放送/多田有花
「風祭」は、二百十日前後に風を鎮めるために祈る祭りで八尾の風の盆が有名だが、作者の町内も風祭が行われる。「朝の町内放送」が、風祭が、実際その地域に、そこの人々の心に根差したものであるのが意義がある。朝が爽やか。(高橋正子)

★芋の葉のこんもりとなる葉月かな/桑本栄太郎
葉月とはよく言ったもの。畑には大きな芋の葉が青々として重なり合う。こんもりとして緑の葉の圧巻。(高橋正子)
コメント (8)
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9月1日~10日

2019-09-05 10:50:55 | Weblog

9月10日(名)

小口泰與
秋澄むや大砲岩の妙義山★★★
秋晴や岩を削るる利根の波★★★
朝晩に赤城嶺仰ぎ稲田かな★★★

廣田洋一
七輪に秋刀魚焼きたる昭和の日★★★
小さきも焼きし秋刀魚を買ひにけり★★★
気仙沼の冷凍秋刀魚売られけり★★★

桑本栄太郎
秋蝉の鳴かぬ朝に目覚めけり★★★
秋すだれ祇園の路地の二階茶屋★★★
むらさきの色は憂いか木槿咲く★★★

多田有花
梨売りの今年は姿を見ぬままに★★★
梨下げてかの家訪ねしは昔★★★
病む人にも日ごと太りし月のあり★★★

9月9日(4名)

小口泰與
湖の波白じろ猛り渡り鳥★★★★
棚田へと水の落ち行く稲田かな★★★
泳ぎつぐ夜の水槽の秋目高★★★

廣田洋一
台風や緊急警報けたたまし★★★
台風や雨戸を叩く風の音★★★
野分過ぎ植木鉢みな倒れけり★★★

多田有花
けん玉をまた始めたる白露かな★★★
秋茄子のまだ小さきが葉裏にあり★★★★

鶏頭や嵐は遠き地に上陸★★★★
鶏頭が咲くころと言えば、台風が次々に来る季節。今日も鶏頭が咲いているが、今回の台風15号は、自分の居るところではなく、遠い地の首都圏に上陸。台風の災害がどんな様子が、ニュースで知るが、災害を知る身には心配がある。(高橋正子)

桑本栄太郎
カーテンの風に頻りや涼新た★★★
カーテンに風の頻りや涼新た★★★★(正子添削)

柿の実のぬつと顔出す日差しかな★★★
陸橋の風に集うやあきつ飛ぶ★★★

9月8日(4名)

小口泰與
秋晴れや踏切音の母の里★★★★
秋ばらや奇麗ですねと声かかる★★★
虫の音や草に沈みし猫車★★★

多田有花
まっすぐに城の高さを見る白露★★★★
有花さんが住むのは、姫路。眩しいばかりの白鷺城がある。城の高さを意識させる堂々とした城だ。白露の今日、秋空に立つ城の高さが印象に残った。「まっすぐに」が聳える白鷺城を印象付けている。(髙橋正子)

食料を買い込み九月の空仰ぐ★★★
残照に弓張月の光増す★★★

廣田洋一
書を閉じてほっと一息蚯蚓鳴く★★★
あれこれと思ひめぐらし蚯蚓鳴く★★★
武士道にかけて突き押し九月場所★★★

桑本栄太郎
くつきりと飛行機雲や天高し★★★★
舞い居ても帰る家無き秋の蝶★★★
その中に花を見せ居り葛茂る★★★

9月7日(3名)

廣田洋一
祝日も悪しき日も来る九月かな★★★
夕暮れの日毎に早し九月かな★★★
色付きし葉の流れ行く九月かな★★★

小口泰與
噴煙の直立なるや秋気満つ★★★★
噴煙がまっすぐあがるのは、強い風がないとか、山の活動が穏やかであるとかなのだろう。何事もなく噴煙があがり、澄んだ秋の空気が満ちている。(高橋正子)

秀麗や日日新しき川の水★★★
山霧にバスもろともに吸い込まれ★★★

桑本栄太郎
四阿に座り風聴く秋の声★★★
鳴き声の異国語めくや小鳥来る★★★★
あきつ飛ぶ空の青さや茜雲★★★

9月6日(4名)

廣田洋一
畦道を追ひかけ来たる昼の虫★★★
虫の声歩み緩める夜道かな★★★

せせらぎと合唱しをる虫の声(原句)
せせらぎの音に響きて虫の声★★★★(正子添削)
せせらぎ沿いに歩くと虫がよく鳴いている。せせらぎの音にも集く虫の声にも敏くなった耳には、ふたつが響きあって聞こえる。耳も敏くなる秋だ。(高橋正子)

小口泰與
藤袴千キロ翔る蝶育つ★★★
吟行の人も見かけし秋まつり★★★
朝日受け炎だちたる木槿かな★★★

桑本栄太郎
嶺の端のほのと赤きや法師蝉★★★
新涼のブラス音色や夕暮れに★★★★
邯鄲の夢とは如何に夜の闇★★★

多田有花
蝉やんで静けさ来る秋の昼★★★
紅白の鶏頭咲ける花壇かな★★★
風のあるベランダに出し夕月夜★★★

9月5日(3名)

廣田洋一
鯊釣るやぎょろりと睨む大きな目★★★
堤防に釣人並ぶ鯊日和★★★
上げ潮の河口に狙ふ今年鯊★★★★
河口でよく釣れる鯊は、秋になると身がしまり、一層美味となることから、秋の季語となっている。潮がたっぷりと上げてくるタイミングに、鯊を釣ろうと目を凝らしている。鯊釣りには、一生懸命であろうと、ほのぼのとしたところがある。(高橋正子)

小口泰與
かりがねの散らばり沼を広げたり★★★★
秋気満つ志賀高原の鳥の声★★★
高原の冷ゆや茶筅を回しける★★★

桑本栄太郎
草萩の自動ゲートを飾り居り★★★★
ミンミンと今頃鳴きて秋蝉に★★★
バス路の銀杏並木やうす黄葉★★★

9月4日(4名)

小口泰與
蟷螂や土砂災害の丘の肌★★★
輪の中に外国人も秋まつり★★★
秋澄むや谷川岳の空深し★★★★

廣田洋一
紅花の黄花と揺れるコスモスかな★★★
柿の実や一つ飛び抜け赤くなり★★★

栗の実や毬青々と伸びにけり★★★★
栗は今、青々とした毬をつけている。枝にもたわわに栗の実がつき、うれしいばかりだ。その気持ちが「青々と伸びにけり」となった。(高橋正子)

多田有花
運動会日々の練習始まりぬ★★★
秋暑しもくもく並ぶ午後の雲★★★
オートバイ秋暑の光はね返し★★★★

桑本栄太郎
礼拝の人の増え居り休暇果つ★★★★
コスモスの恋に恋せし彼の日かな★★★
閃光の同時となりぬ秋の雷★★★

9月3日(4名)

小口泰與
秋の朝赤城の襞の青緑★★★
秋の暮テレビ画面へ語り掛け★★★
大沼の水の堅きや秋茜★★★★

多田有花
防災の日なり備蓄を点検す★★★
露草や天よりもらいし花の色★★★★
女性らしい句。「らしい」というと語弊をうむが文芸上の「らしい」としたい。露草の花の青は、天の青といっていい。きよらかな真青さは、天よりもらったもの。(高橋正子)

ラジコンのヘリコプター飛ぶ稲田かな★★★

廣田洋一
優勝のマジック消えて子規忌かな★★★★
日本に初めて野球を紹介した子規。子規の本名は正岡常規だが、幼名の處之助を小学校にあがるとき、升と変えている。この「升(のぼる)」をもじってのぼーる、野球と名付けた。上野公園にも子規を記念した野球場があり、野球の祖といえば子規となっている。優勝のマジックが消えて、ふとしたさびしさに思う、子規のこと。俳句を作っていることで、子規につながった。(高橋正子)

獺祭てふ酒を供へる獺祭忌★★★
球場のライト点灯子規忌かな★★★

桑本栄太郎
千年の永く短しはちすの実★★★★
玄関に忘れしままや蝉の殻★★★
秋蝉のつくづく欲しき讃歌かな★★★

9月2日(3名)

小口泰與
秋の夜や史記全集を身のうちに★★★
仲秋や牧の傾斜を山羊の群★★★★
浅間嶺の星の明るき九月かな★★★★
九月となった。そのことを知るのは、いつも見慣れている浅間嶺の空に輝く星が明るくなったこと。爽やかに澄んだ空気が星を明るくさせる。(高橋正子)

廣田洋一
一房の葡萄分け合う父子かな★★★★
皮をむく手の白きかな黒葡萄★★★
葡萄狩人の少なき棚探し★★★

桑本栄太郎
朝なれば凛と白きや酔芙蓉★★★
うず波のにごり湧きたつ野分川★★★
心地良き風をはらみぬ猫じやらし★★★★
新涼の季節の猫じゃらしのやわらかさ、やさしさがよく詠まれている。「風をはらみぬ」がやわらかな動きを感じさせてくれている。(高橋正子)

9月1日(4名)

小口泰與
熊鈴や隠れ沼の空爽やかに★★★★
隠れ沼に秋がはやばやとやってきた。熊除けの鈴の音もきれいに響く。空も、心も爽やかだ。(高橋正子)

我ら皆昔学童秋の暮★★★
浅間嶺の星まばらなる秋の宵★★★

多田有花
九月来る途切れ途切れに蝉の声★★★
風祭知らせる朝の町内放送★★★★
「風祭」は、二百十日前後に風を鎮めるために祈る祭りで八尾の風の盆が有名だが、作者の町内も風祭が行われる。「朝の町内放送」が、風祭が、実際その地域に、そこの人々の心に根差したものであるのが意義がある。朝が爽やか。(高橋正子)

ひそやかに桜紅葉の始まりぬ★★★

廣田洋一
訓練のヘルメット白し震災忌★★★★
町内会纏まり避難震災忌★★★
晴上り訓練日和防災の日★★★

桑本栄太郎
せせらぎに彼岸花添う高瀬川★★★
芋の葉のこんもりとなる葉月かな★★★★
葉月とはよく言ったもの。畑には大きな芋の葉が青々として重なり合う。こんもりとして緑の葉の圧巻。(高橋正子)

おしろいの土手につづけり阪急線★★★
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