◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

9月11日~20日

2021-09-11 12:21:31 | Weblog
9月20日(4名)

小口泰與
小雨降る木にも鳥おり温め酒★★★
萩焼の花瓶の罅や花芒★★★
畦道へ増ゆる蜻蛉や山の風★★★★

廣田洋一
敬老の日ジムに集へる老人たち★★★
敬老日背筋伸ばして歩きけり★★★
柿の実の色付き初めし朝かな★★★

多田有花
彼岸花へ朝日斜めに差しにけり★★★★
ポストまで桜落葉を踏んでゆく★★★
虫の音の中へ起きだす午前五時★★★

桑本栄太郎
うす闇の街を田道へつづれさせ★★★
草刈られ畦を彩る彼岸花★★★★
草は彼岸花を残して刈られたのか、刈った後に彼岸花が茎を伸ばしたのか。すっきりと草が刈られ、畦に彼岸花が咲く景色は日本の秋のすがすがしさ。(髙橋正子)
路線バスの辿る田道や彼岸花★★★

9月19日(4名)

廣田洋一
土手の上金網沿ひに曼殊沙華★★★
赤絨毯広げし如く曼殊沙華★★★
畝高く盛り上げたるや大根蒔く(原句)
盛り上げて高き畝なり大根蒔く★★★★(正子添削)

小口泰與
躊躇わず茸を食ぶ里の子ら★★★

抜きん出づ尾花を竹の花瓶へと(原句)
句をもう少し整理した方がよいと思います。
抜きん出づ尾花は竹の花筒を★★★★(正子添削①)
竹筒に挿せし尾花の抜きん出づ(正子添削②)
野趣ある竹の花筒に尾花を挿すと、やはりすらりと丈高い尾花は、抜きんでて野の風を呼んでいるよう。(髙橋正子)

目の前の黄金の光り濁り酒★★★

多田有花
仰ぎけり台風一過の空の青★★★★
群れ咲けどカンナそれぞれ孤高なり★★★
変わることは美しきこと酔芙蓉★★★

桑本栄太郎
夕日背に色無き風の野辺を行く★★★
小流れの畦を占めたり曼珠紗華★★★
細々と鳴きて仕舞いや秋の蝉★★★

9月18日(4名)

多田有花
台風や迷走の後上陸へ★★★
台風の近づく音の中眠る★★★
台風はいずこ静かな夜明けなり★★★

廣田洋一
台風の近づき来たる雨の音★★★
構えゐし台風の眼の消えにけり★★★

秋鯖をこんがり焼きて青き皿(原句)
秋鯖をこんがり焼きて青き皿に★★★★(正子添削)
秋鯖は脂がのっておいしい。こんがりと焼いて青い皿に載せた。青い皿は海の色にも思え、こんがり焼けた秋鯖が食欲を誘う。(髙橋正子)


小口泰與
秋晴や湖畔を馳しる馬車二台★★★★
走り根に躓く我や秋の蝉★★★
大利根の流れのよろし下り鮎★★★

桑本栄太郎
真青なる雲の切れ間や野分凪ぐ★★★
つぎつぎに風に呼応やこぼれ萩★★★★
夕日背に色なき風の野辺を行く★★★

9月17日(3名)

小口泰與
啄木鳥や忘れられたる開拓地★★★
秋めくや貨物列車の長き列★★★
秋晴や大きく開く漕艇庫★★★★
秋晴にボートをしまっている倉庫が大きく開かれ、さわやかな空気を取り込んでいる。早速にでもボートを海や湖に漕ぎ出す人たちがいるのだろう。秋晴の下の開放的な景色が快い。(髙橋正子)

廣田洋一
鮭上る河口見ながらバスの旅★★★
男なら味噌煮の由や秋の鯖★★★★
秋鯖の腹光らせて売られけり★★★

桑本栄太郎
出掛けゆく朝の静寂やちちろ鳴く★★★
来てみればすでに刈田の田面かな★★★
鬼城忌の夕日に綺羅と赤とんぼ★★★★

9月16日(4名)

廣田洋一
秋鯖の幟はためく弁当屋★★★
鮭切り身塩振りかけて買ひにけり★★★

北斎も描きし鮭や切り身にす★★★★
北斎の「椿と鮭の切り身」画は北斎が81歳のときに画かれた肉筆画とのこと。椿との取り合わせも珍しいが、鮭の切り身の画も美味そうで洒脱。その画を思いながら、手元に現実の鮭の切り身。これも美味そう。(髙橋正子)

多田有花
風呂あがり弓張月を眺めおり★★★
芙蓉咲くコンクリートに囲まれて★★★
水滴ひとつカンナの口より零れ落ち★★★

小口泰與
次つぎに虫の飛来や田村草★★★
河岸と畦に忽然曼珠沙華★★★
秋燕や幾年古りし定期券★★★

桑本栄太郎
健診の帰りは徒歩や爽やかに★★★★
自分の体がすこやかであるのは、嬉しい。健診で問題がなかったのであろう。帰りの徒歩の道は爽やかに。句柄も爽やか。(髙橋正子)

街路樹の色づき来たる昼の虫★★★
椎の実の笑みて落果の兆しかな★★★

9月15日(4名)

小口泰與
願わくばこの世の秋の宝珠かな★★★
信仰の奇岩の巌や熊の棚★★★
友来たる柱を背なに温め酒★★★

廣田洋一
川風の吹き渡りたる大花野★★★
色とりどりに咲き乱れたる大花野★★★★
爽やかに風を浴びたる河川敷★★★

桑本栄太郎
秋朝の雨雲途切れ青き空★★★
葉の上の花托傾げり蓮は実に★★★★
合歓の実の垂るる朝や青き天★★★

多田有花
露草や細き流れに沿いて咲く★★★★

猪罠のひとつがでんと叢に★★★★
猪が里山やはては里に下りて来て畑を荒らす害が出ている。罠をかけて捕獲したり、銃で撃ったりと、堂々と駆除が行われている。叢に「でんと」罠が仕掛けられ、あまりに明らかで、あっけらかんとした捕獲の罠(髙橋正子)

鬼子母神待てよ石榴の割れる日を★★★

9月14日(4名)

小口泰與
きりぎりす急ぐ由なき出社かな★★★
朝日受く畦一列の曼珠沙華★★★★
「朝日受く」ものは、なんでもきらめいているが、畦の曼珠沙華はことにきらめいている。露を帯びて畦に立つあでやかな花は、秋のひとときを強く印象づけてくれる。(髙橋正子)

山峡の綾なす流れ蔦紅葉★★★

廣田洋一
一区切りつきたる夜業や茶を酌みぬ★★★
葡萄食ぶ地元の味をかみしめて★★★
きらめける緑の玉や葡萄食ぶ★★★

多田有花
嵐来る前に稲刈りを済ます★★★
サイフォンを流れゆきしか秋の水★★★
秋果ゆっくり味わうときは目を閉じて★★★

桑本栄太郎
秋雨や下校の子らのひとしきり★★★
中庭の子等遊び声秋の暮れ★★★
小雨降るひと日暮れ行くうすら寒★★★

9月13日(4名)

小口泰與
コスモスの風の鉄路へなだれ咲く★★★
渓流をよくよく見れば鰍かな★★★
中腹に雲横たわり初紅葉★★★

多田有花
秋茄子のぶらりとひとつ細長き★★★
風吹けば鳶か鴉か鳥威し★★★
ああこんなところにも咲き彼岸花★★★

廣田洋一
とりどりの秋果並べてスーパーマーケット★★★
花野道ハモニカの音ゆるやかに★★★★
花野の道をハーモニカを吹きながら歩く人がいる。ゆるやかなメロディーに
ハーモニカを吹く人も、聞く人も共に懐かしい思いに癒される。(髙橋正子)

幼子の花野に遊ぶ声高し★★★

桑本栄太郎
奉納ののぼり旗めく秋まつり★★★★
梢より黄葉初めたる銀杏かな★★★
稲すずめ田面に群れてとどまらず★★★

9月12日(4名)

廣田洋一
秋鯖に赤葡萄酒の良く合へり★★★

湘南でとれし秋鯖酢〆にす(原句)
湘南の海の秋鯖酢〆にす★★★★(正子添削)

葡萄盛り思ふほどには食べられず★★★

小口泰與
真直ぐな道や湖へと女郎花★★★★
健啖の八十路の吾や秋高し★★★
爽やかや仏師義山の鑿の音★★★

多田有花
咲き初めて畔に三本曼珠沙華★★★
二階より糸瓜いくつも実らせて★★★★
二階の窓辺で糸瓜を育てる生活。日除けのために育てたのか、それが今はいくつも実を付けてぶら下がっている。夏から秋へ。いくつもの糸瓜が面白い。(髙橋正子)

露草の青さ灯して群れ咲きぬ★★★★

桑本栄太郎
小流れの音心地よく落し水★★★★
田道ゆく朝の静寂や鵙の声★★★★
コロナ禍の憤怒の色か彼岸花★★★

9月11日(5名)

廣田洋一
秋鯖の焦げ目程よく焼きにけり★★★
図らずも一折り買ひし秋鯖寿司★★★
三日月と競ふが如き宵の明星★★★

小口泰與
隠り沼へ夕映えうつし法師蝉(原句)
隠り沼へ夕映えうつり法師蝉★★★(正子添削)
贈り來し金平糖や秋うらら★★★
朝顔の蔓のよぎりし朝ぼらけ★★★

吉田晃
新涼の野に雨音の広がる静かさ★★★
秋の夜の心地よい風の庭にいる★★★
鳴き果てて蝉は初秋の草の上★★★

多田有花
朝の雨あがりて後は秋晴れに★★★
秋の朝花壇の手入れする人よ★★★
秋の陽が白金葦を輝かす★★★

桑本栄太郎
うそ寒やかいなを抱き朝の夢★★★
三階の眼下に望むうす紅葉★★★
一木を被いてありぬ葛の花★★★

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■自由な投句箱/9月1日~10日■

2021-09-02 11:28:23 | Weblog
※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之
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今日の秀句/9月1日~10日

2021-09-02 11:26:41 | Weblog
9月10日(1句)

★くつきりと稜線定む秋の嶺/桑本栄太郎
秋の嶺が自らの存在を示すように、くっきりとした稜線を見せている。その澄み切った存在感の確かさがいい。(髙橋正子)

9月9日(1句)

★鶏頭の赤と黄色の並び咲く/多田有花
鶏頭の赤と黄色が鮮明で、秋の澄んだ空気感がよく出ている。(髙橋正子)

9月8日(2句)

★ラジオの声聞くともなしに夜業かな/廣田洋一
静まった夜のラジオは人懐かしい。夜業をしながら聞くラジオは「聞くともなし」だが、時にはよく耳を傾けたりもする。ラジオと夜業のつかず離れずの関係が秋の夜らしい。(髙橋正子)

★棗の実修道院の外庭に/多田有花
棗はヨーロッパ南部やアジア東部南部の原産の落葉灌木。「修道院」と「棗の実」があれば、南仏やイタリアなどの修道院がある景色が思い浮かぶ。南仏の旅にいるような気分。(髙橋正子)

9月7日(1句)

★風吹けば風に色づく猫じやらし/桑本栄太郎
猫じゃらしはイネ科。稲が色づくように、色づき始めた。風が吹いたからなのだ。この把握は面白い。稲が熟れるころ吹く風にはるか彼方への思いを人に呼び起こす。(髙橋正子)

9月6日(1句)

★朝顔の一輪咲いて空の色/多田有花
朝顔の色もさまざま。紺色の朝顔が俳句によく詠まれるが、空の色の朝顔は、新涼の、さわやかな季節をあらわして瑞々しい。(髙橋正子)

9月5日(1句)

★赤とんぼ田川の底のきらきらと/小口泰與
赤とんぼが飛ぶ田川。清らかな流れに秋の日が差し込んで浅い川の底がきらきらとしている。静かで明るい田川の景色がいい。(髙橋正子)

9月4日(1句)

★見はるかす稜線伸びる秋の空/廣田洋一
秋の空の爽やかさが何よりも快い。「見はるかす」「伸びる」に作者の伸びやかな気持ちがよく出ている。(髙橋正子)

9月3日(1句)

★青空にコスモス揺れる谷戸の道/廣田洋一
「谷戸」は神奈川などで見られる丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形。鎌倉に入れは成り立ちも違って「谷(やつ)とよばれる。その谷間の道を歩くと、青空とコスモスの美しい景色に出会った。それを素直に詠んでいてさわやか。(髙橋正子)

9月2日(1句)

★秋海棠コーラの瓶へ挿しにけり/小口泰與
朝がひんやりとしてくると、庭の秋海棠が咲き始める。秋海棠の可憐な花をコーラの瓶に挿した。そんな花を身近に置きたくなる心持ちが爽やか。(髙橋正子

9月1日(1句)

★青空へけさ鷺草の二羽となり/川名ますみ
鷺草の真白と青空の青の対比、それに「けさ」が加わって、すがすがしい。鷺草の花を一羽二羽と数えて生き生きとさせたのも若々しい。(髙橋正子)
コメント (11)
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9月1日~10日

2021-09-02 11:16:22 | Weblog
9月10日(4名)

廣田洋一
揃ひたる粒ぎっしりと黒葡萄★★★
夜の卓にぶどう一房置かれをり★★★
富士仰ぐ畑に垂れる青葡萄★★★★

小口泰與
蜩や忽と馬の背森を分け★★★
川風を譲らる里やきりぎりす★★★
夕影となりし川面やむら薄★★★

多田有花
夜更かしはせずに夜長を過ごしけり★★★
ひいやりとせし早朝の空気かな★★★
よく晴れて天の高さを仰ぎけり★★★★

桑本栄太郎
くつきりと稜線定む秋の嶺★★★★
秋の嶺が自らの存在を示すように、くっきりとした稜線を見せている。その澄み切った存在感の確かさがいい。(髙橋正子)

淀川のはるか下流や秋霞★★★
仕立てられ棚に垂るるや蔓南瓜★★★

9月9日(5名)

廣田洋一
爽やかや川沿ひの道散歩せり★★★
エプロンの婦人爽やか宅配弁当★★★
衣擦れの音爽やかに巫女の舞ひ★★★★

小口泰與
卓袱台を囲み秋刀魚や昭和の夜★★★
雲速き丘に立ちけり弁慶草★★★★
行きゆきて尾瀬の木道秋の暮★★★

多田有花
長雨のあけし夜明けや燕去る★★★
鶏頭の赤と黄色の並び咲く★★★★
鶏頭の赤と黄色が鮮明で、秋の澄んだ空気感がよく出ている。(髙橋正子)
窓に入る秋の日差しや豆を煮る★★★

桑本栄太郎
高層の眼下に見ゆるうす紅葉★★★★
身に入むや風の音さえ荒びをり★★★
冷ややかな風の窓辺や夕日落つ★★★

吉田 晃
新涼の空を清しき色の風★★★
燕いなくなってしまい唯の秋の道★★★
秋簾古びて静か夕暮れに★★★

9月8日(5名)

小口泰與
榛名湖へ道真直ぐや松虫草★★★★
秋宵や渓のゆかしき魚の数★★★
秋の夜の書肆の如きの堆書かな★★★

廣田洋一
贈られし葡萄一箱藤沢産★★★
ぱっと食べニコッと笑ふマスカット★★★
ラジオの声聞くともなしに夜業かな★★★★
静まった夜のラジオは人懐かしい。夜業をしながら聞くラジオは「聞くともなし」だが、時にはよく耳を傾けたりもする。ラジオと夜業のつかず離れずの関係が秋の夜らしい。(髙橋正子)

桑本栄太郎
うそ寒や千の風吹く我が胸に★★★
稲の香やふるさと遠く想い居り★★★
身に入むや窓を開ければ雨の声★★★★

多田有花
棗の実修道院の外庭に★★★★
棗はヨーロッパ南部やアジア東部南部の原産の落葉灌木。「修道院」と「棗の実」があれば、南仏やイタリアなどの修道院がある景色が思い浮かぶ。南仏の旅にいるような気分。(髙橋正子)

軽やかに蜻蛉車列の上をゆく★★★★
秋の昼バロック音楽をかける★★★

吉田晃
庭陰に露草一つが開きけり★★★
花の絵の団扇静かや風は秋★★★★
木漏れ日の杉の湿地に茗荷咲く★★★

9月7日(4名)

小口泰與
明け六つの厨の灯りちちろ鳴く★★★
みせばやや和紙に包まる金平糖★★★★
のど飴を欲しがる時期やきりぎりす★★★

廣田洋一
月やいずこ雲の端端光りをり★★★★
朝の月今日も良き日となりさうな★★★
主なき庭に華やぐ溝萩かな★★★

多田有花
赤まんま飢えは知らずに半世紀★★★
しみじみと白露の空気肌に触れ★★★★
拳ほどありてたわわに栗の毬★★★

桑本栄太郎
白々と朝の明けゆく白露の日★★★
リーダーの誰とも知れず稲すずめ★★★
風吹けば風に色づく猫じやらし★★★★
猫じゃらしはイネ科。稲が色づくように、色づき始めた。風が吹いたからなのだ。この把握は面白い。稲が熟れるころ吹く風にはるか彼方への思いを人に呼び起こす。(髙橋正子)

9月6日(4名)

小口泰與
鰯雲山家の土間に鍬と籠★★★
山峡の水の迅しや下り鮎★★★★
雲一朶月の歪みて出しかな★★★

多田有花
朝顔の一輪咲いて空の色★★★★
朝顔の色もさまざま。紺色の朝顔が俳句によく詠まれるが、空の色の朝顔は、新涼の、さわやかな季節をあらわして瑞々しい。(髙橋正子)

朝ごとに露新しき稲穂かな★★★
法師蝉鳴く午後静かなピアノ曲★★★

廣田洋一
川底の白石光る秋の水★★★
秋水にのびのびと浮く花藻かな★★★★
「花藻」(藻の花)は、夏の季語だけれども、秋水となって、のびのびとした感じが受け取れるということで、季重なりとしない。(髙橋正子)

海外部夜業の灯り消えやらず★★★

桑本栄太郎
干上がれば足跡ありぬ稲田かな★★★
ふるさとの遠くに想う稲の秋★★★★
煮干入れ獅子唐炊くや綾子の忌★★★

9月5日(4名)

小口泰與
赤とんぼ田川の底のきらきらと★★★★
赤とんぼが飛ぶ田川。清らかな流れに秋の日が差し込んで浅い川の底がきらきらとしている。静かで明るい田川の景色がいい。(髙橋正子)

妻の炊く新米の香や川場米★★★
虫の闇外つ国にからのメールかな★★★

廣田洋一
柄杓汲む産土神の秋の水(原句)
柄杓に汲む産土神の秋の水★★★★(正子添削)
「柄杓汲む」は字余りになっても「柄杓に汲む」としていただきたいです。(髙橋正子)

秋冷の道に点々潦★★★
月を愛でるならいとなりし八十路かな★★★★

多田有花
夜明け前町を照らせる稲光★★★
アベリアに初秋の朝日昇り来る★★★
弾き終えて虫すだく夜となりにけり★★★★

桑本栄太郎
木槿咲く蘂の芯まで白きかな★★★★
溝川の瀬音うるはし落し水★★★
八千草の咲き乱るるや大原野★★★

9月4日(4名)

多田有花
花大きく咲いて南瓜を実らせる★★★★
鉄塔の彼方に残り朝の月★★★
眠りからまだ覚めやらぬ蜻蛉かな★★★

小口泰與
秋ばらや洋館に灯の灯りける★★★★
五六回叩きて黙や鉦叩★★★
産土の老のいしずえ蝗かな★★★

廣田洋一
見はるかす稜線伸びる秋の空★★★★
秋の空の爽やかさが何よりも快い。「見はるかす」「伸びる」に作者の伸びやかな気持ちがよく出ている。(髙橋正子)

木の枝を橋に引っ掛け秋の水★★★
道端にあふれ出でたり秋の水★★★

桑本栄太郎
大根蒔く鉢の芽の出る朝かな
大根はすでに蒔いてしまっているのでしょうか。そうなら、「大根蒔く」という表現を変えなければ意味が通じなくなります。(髙橋正子)

夕暮れの村の辻なり赤とんぼ★★★
早風呂を終えて夕餉や涼新た★★★

9月3日(3名)

小口泰與
きめ荒き里の豆腐や星月夜★★★★
絶壁と奇岩の山や鵯の秋★★★
めはじきや婆の煎ずる土鍋にて★★★

廣田洋一
色付きし葉秋の水へと散りにけり★★★
青空にコスモス揺れる谷戸の道★★★★
「谷戸」は神奈川などで見られる丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形。鎌倉に入れは成り立ちも違って「谷(やつ)とよばれる。その谷間の道をあるくと、青空とコスモスの美しい景色に出会った。それを素直に詠んでいてさわやか。(髙橋正子)

秋天によろめき舞ひぬ蝶二頭★★★

桑本栄太郎
ふるさとの海を想いぬ秋あはれ★★★
さめざめと雨の一日や折口忌★★★
早風呂の妻の濡れ髪秋涼し★★★

9月2日(3名)

廣田洋一
冷やかや布団一枚かけ直す★★★
秋冷や大気澄む野を散歩せり★★★
「秋澄む」と言う季語がありますが、これは「秋の大気が澄む」意味で使われます。「秋冷」と「大気澄む」の重なりが惜しいです。(髙橋正子)

鯉の群縦に広がる秋の水★★★

小口泰與
秋海棠コーラの瓶へ挿しにけり★★★★
朝がひんやりとしてくると、庭の秋海棠が咲き始める。秋海棠の可憐な花をコーラの瓶に挿した。そんな花を身近に置きたくなる心持ちが爽やか。(髙橋正子)

眼間を駆けぬくリスや新松子★★★
鬼やんま赤城の放つ雲迅し★★★

桑本栄太郎
うそ寒や目覚めの夢に父が居り★★★
高らかにうす紅寄り添う辛夷の実★★★
椎の実の房の爆ぜをり丘の上★★★★

9月1日(4名)

小口泰與
露草や浅間は夕日呼び込みし★★★
大利根へ没日映せし花カンナ★★★
葛咲くや四方八方風の道★★★★

廣田洋一
秋めくや車窓流れる茜雲★★★★
踊りの輪さらに盛り上げ地元歌手★★★
庭の草冷やかに見え窓辺かな★★★

桑本栄太郎
秋蝉の落つや翅透くうすみどり★★★★
寄り添いて黒く笑み居り椎の秋★★★
葛の葉の一木被い花は見ず★★★

川名ますみ
青空へけさ鷺草の二羽となり★★★★
鷺草の真白と青空の青の対比、それに「けさ」が加わって、すがすがしい。鷺草の花を一羽二羽と数えて生き生きとさせたのも若々しい。(髙橋正子)

鷺草の二羽になりし日遠き空★★★
鷺草の音を立てずに羽ばたけり★★★
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