11月20日(5名)
多田有花
日当たればさらに鮮やか冬紅葉★★★
地蔵尊桜落葉のちらほらと★★★
南天のつやつや赤き地蔵尊(原句)
地蔵尊桜落葉のちらほらと★★★
南天のつやつや赤き地蔵尊(原句)
「赤き」(連体形)とすると、「地蔵尊」に掛かります。「赤し」(終止形)とし、切れを入れます。(髙橋正子)
南天のつやつや赤し地蔵尊★★★(正子添削)
小口泰與
小春日や我にまつわる風丸し★★★
凍蝶や今朝の浅間の裾まだら★★★
ことごとくカメラ任せや冬の波★★★
凍蝶や今朝の浅間の裾まだら★★★
ことごとくカメラ任せや冬の波★★★
廣田洋一
小屋の中目だけ動かす鷹一羽★★★
羽ばたきの練習したる鷹一羽★★★★
木の根元掻き寄せられし落葉かな★★★
羽ばたきの練習したる鷹一羽★★★★
木の根元掻き寄せられし落葉かな★★★
桑本栄太郎
歩道濡れ雨のあがりぬ冬ざるる★★★
火と燃ゆる冬の紅葉やバス通り★★★
火と燃ゆる冬の紅葉やバス通り★★★
勇忌の句碑にしぐるる祇園かな★★★★
勇は耽美派の歌人の吉井勇のこと。1886年東京高輪に生まれ、1960年11月19日、京都で亡くなっている。「かにかくに祇園はこひし寝(ぬ)ときも枕にしたに水のながるる」の歌碑があり、祇園を愛した歌人として知られる。大衆に知られたところでは、「ゴンドラの唄」(中山晋平作曲)の作詞をしている。「しぐるる祇園」は祇園の芸妓たちに「しらぎくになってしまわれた」と嘆かせた心境に通じるものがある。(髙橋正子)
弓削和人
短日や児らの遊具に日影さす★★★
帰り花閉時を告げる植物園★★★★
短日や児らの遊具に日影さす★★★
帰り花閉時を告げる植物園★★★★
葉牡丹や繕う垣にあふれ咲く★★★
11月19日(5名)
小口泰與
北風の背なを押しくる山の道★★★★
微醺にて炬燵に眠る宵の口★★★
一椀の昆布ゆらゆら息白む★★★
微醺にて炬燵に眠る宵の口★★★
一椀の昆布ゆらゆら息白む★★★
多田有花
帰路に着くライトアップの冬紅葉★★★★
冬の夜に瞬くものは街の灯り★★★
ストールを巻いて机に向かいけり★★★
冬の夜に瞬くものは街の灯り★★★
ストールを巻いて机に向かいけり★★★
廣田洋一
霜覆ふ車窓にかけるやかんの湯★★★
すぐそこと傘を持たずに初時雨★★★
スコップの残りし砂場初時雨★★★★
すぐそこと傘を持たずに初時雨★★★
スコップの残りし砂場初時雨★★★★
桑本栄太郎
火と燃ゆる冬の紅葉の眼下★★★
葉が散れば銀杏梢や冬木めく★★★
吾が影の丈の長きや落葉踏む★★★★
葉が散れば銀杏梢や冬木めく★★★
吾が影の丈の長きや落葉踏む★★★★
弓削和人
日おもてに石蕗の花咲く診療所★★★★
ともしびの泳ぐ下山や暮早し★★★
浮かび咲く八手の花や夕の空★★★★
夕べの空に八手の白い花が咲いている。夕べなので、花火のような白い花が濃い緑の葉に浮いたように見える。抒情的なやさしい句。(髙橋正子)
11月18日(5名)
小口泰與
寒鴉支離滅裂に鳴きにけり★★★
山峡の湖の毛嵐暁の星★★★
小春日や背に日を浴びる峠道★★★★
寒鴉支離滅裂に鳴きにけり★★★
山峡の湖の毛嵐暁の星★★★
小春日や背に日を浴びる峠道★★★★
多田有花
<書写山もみじまつり曼荼羅特別奉納公演三句>
声明の響く短日常行堂★★★★
冬暮色払いて太鼓の一打かな★★★★
声明の響く短日常行堂★★★★
冬暮色払いて太鼓の一打かな★★★★
曼荼羅の特別奉納には、般若心経を唱える中で和太鼓が奉納演奏されたとのこと。和太鼓がどんと一打ちされると、寺の暮色が払われるような響きが広がる。堂々とした寺は、「冬暮色」もまた堂々と深みがある。(髙橋正子)
冬の宵声明と響く大太鼓★★★
廣田洋一
小春日や順番待ちの滑り台★★★
代々の墓に返り咲きたる躑躅かな★★★
庭の隅どっと灯れる山茶花かな★★★★
代々の墓に返り咲きたる躑躅かな★★★
庭の隅どっと灯れる山茶花かな★★★★
桑本栄太郎
小春日のランナー走る半袖に★★★
見上げれば銀杏梢の裸木に★★★
午後四時の早やも暮れゆく冬日かな★★★
見上げれば銀杏梢の裸木に★★★
午後四時の早やも暮れゆく冬日かな★★★
弓削和人
柊の白き花ほら葉にかくれ★★★
〈生駒山〉
落葉敷く路を頼るや生駒山★★★
柊の白き花ほら葉にかくれ★★★
〈生駒山〉
落葉敷く路を頼るや生駒山★★★
山茶花や歩を軽くする登山道 (原句)
「何」が「歩を軽くする」のか、曖昧です。現代俳句では、特に主語が示されなければ、作者が主語となるのがほとんどです。(髙橋正子)
山茶花や歩の軽くなる登山道★★★★(正子添削)
11月17日(4名)
多田有花
<書寫山圓教寺大講堂>
幾冬を西向き座せる釈迦如来★★★
<書寫山圓教寺常行堂>
阿弥陀如来の青き螺髪や冬うらら★★★
短日の地は暮れ残照飛機に差す★★★★
幾冬を西向き座せる釈迦如来★★★
<書寫山圓教寺常行堂>
阿弥陀如来の青き螺髪や冬うらら★★★
短日の地は暮れ残照飛機に差す★★★★
小口泰與
吹き下ろす名物の風鷹一つ★★★
高嶺まで眼間に見ゆ霜柱(原句)
高嶺まで眼間に見ゆ霜柱(原句)
高嶺まで眼間に見ゆ霜の朝★★★★(正子添削)
泰與さんのお住まいからは、榛名山、浅間山、赤城山など高い山が見える。晴れた夜の冷え込みで朝には霜を見るようになった。朝の研ぎ澄まされた冷気に高嶺さえも眼間に見えるすばらしさ。それが句になった。(髙橋正子)
桑本栄太郎
大根の立ちあがりたる白さかな★★★★
みどり濃き畝の並びぬ冬菜畑★★★
綿虫に我が手を躱し逃げらるる★★★
みどり濃き畝の並びぬ冬菜畑★★★
綿虫に我が手を躱し逃げらるる★★★
弓削和人
蛇口より雫したたる冬の宵★★★
ぬくとさのかたまり過ぎぬ冬はじめ★★★★
朝明けや空までつづく道に冬★★★★
朝が明けてくると、空までつづく道が寒々としてそこに冬が来たように思えた。空までつづく道は、うねうねとした人ひとりいない、偶然にも車が一台通り過ぎる山道か、丘の道が空へつづいているのか。(髙橋正子)
11月16日(4名)
小口泰與
大沼の波の言の葉冬の月★★★
今日も事なし小春日に書肆に居り★★★
大利根の波ことさらに神無月★★★
今日も事なし小春日に書肆に居り★★★
大利根の波ことさらに神無月★★★
多田有花
<書写山もみじまつり三句>
摩尼殿より冬の紅葉を見下ろしぬ★★★
千年杉ゆるり見上げて冬晴に★★★
冬浅き青空戴く大講堂★★★
摩尼殿より冬の紅葉を見下ろしぬ★★★
千年杉ゆるり見上げて冬晴に★★★
冬浅き青空戴く大講堂★★★
桑本栄太郎
山茶花のつぼみ笑みたる歩道かな★★★
枯萩となりて明るき小径ゆく★★★
着水の白き飛沫や鴨来たる★★★
枯萩となりて明るき小径ゆく★★★
着水の白き飛沫や鴨来たる★★★
弓削和人
初時雨ほのかに淡き宿の窓★★★
七五三細める眼の神社かな★★★
寄せ合うて本を読む児ら冬車両(原句)
寄せ合うて本を読む児ら冬電車★★★★(正子添削)
電車に並んで座った幼い子が本を寄せ合うようにして読んでいる姿はほほえましい。冬の電車のほっこりとした暖かさが幼子を包んで眺めているものも幸せな気持ちになる。(髙橋正子)
11月15日(5名)
小口泰與
連峰はなべて冠雪峠道★★★
冠雪の山は深閑川答ふ★★★
縦横に庭を荒らせし冬土竜★★★
冠雪の山は深閑川答ふ★★★
縦横に庭を荒らせし冬土竜★★★
廣田洋一
八重にして薄紅混じる返り花★★★
何となく明るき空や冬の雨★★★
冬めくや旅行鞄の膨らみぬ★★★
何となく明るき空や冬の雨★★★
冬めくや旅行鞄の膨らみぬ★★★
多田有花
<書写山もみじまつり三句>
陽を受けてなお艶やかに冬紅葉★★★
鈍色に古刹の甍冬紅葉★★★
冬うららみな靴を脱ぎ摩尼殿へ★★★
陽を受けてなお艶やかに冬紅葉★★★
鈍色に古刹の甍冬紅葉★★★
冬うららみな靴を脱ぎ摩尼殿へ★★★
桑本栄太郎
インフルエンザ予防接種や朝早く★★★
冬茜残す入日や嶺の奥★★★
<故郷の風呂焚きの追憶>
外焚きの榾火ごとんと夕暮るる★★★★
冬茜残す入日や嶺の奥★★★
<故郷の風呂焚きの追憶>
外焚きの榾火ごとんと夕暮るる★★★★
「榾火」は、季語としては囲炉裏にもちいる焚きものを指すが、この句では解釈をひろげてよいと思う。榾をくべて沸かす風呂は、夕暮れも早い冬には体を温まりながら風呂を焚く。そろそろ沸くころになると急に日暮れて人恋しい気持ちにもなる。「ごとん」にその気持ちが出ている。(髙橋正子)
弓削和人
立ち止るさきもつづくや冬紅葉★★★
天守いまそそり立ちけり神の留守★★★
落ちそうや寄せ合う冬の柿の房★★★
11月14日(5名)
小口泰與
鷹舞うや凹凸激し妙義山(原句)
鷹舞うや凹凸激しき妙義山★★★(正子添削)
渓流の小石流るや神無月★★★
こだわりて寒鮒釣の浮子を変ふ★★★
渓流の小石流るや神無月★★★
こだわりて寒鮒釣の浮子を変ふ★★★
多田有花
<書写山もみじまつり三句>
ロープウェイで書写山上の冬紅葉★★★
冬紅葉の彼方に見える姫路城★★★
小春日の山路を歩き仁王門★★★
ロープウェイで書写山上の冬紅葉★★★
冬紅葉の彼方に見える姫路城★★★
小春日の山路を歩き仁王門★★★
廣田洋一
とびとびに青空見ゆる初時雨★★★★
初時雨のせいか、青空が雲間にとびとびに見えている。そんな空からの時雨に冬の初めが思い知れる。(髙橋正子)
大根干す媼の腕のまくれけり★★★
歩きつつ上着脱ぎたる小春日和★★★
弓削和人
北風(きた)に樹や割れ目を覆う枝葉なく★★★
身構える梢ばかりや北の風★★★
北風に向かうは吾子の受験かな★★★
桑本栄太郎
木々の葉の吹かれいるさへ冬きざす★★★
黄落となりぬ銀杏の梢かな★★★
時雨るるや炎のような唐かえで★★★
黄落となりぬ銀杏の梢かな★★★
時雨るるや炎のような唐かえで★★★
11月13日(3名)
多田有花
白菜を豚肉と炒め夕餉とす★★★
朝の月十一月の山の端に★★★
朝の月十一月の山の端に★★★
冬枯のえのころ光る流れのそば(原句)
冬枯のえのころ光る流れあり★★★★(添削例)
元の句はリズム的に気になります。妙案が浮かびませんが、添削例のようになおしました。(髙橋正子)
廣田洋一
鶺鴒のさっと餌を捕る冬の川★★★
絶え間なく散りたる紅葉青き空★★★
一輪の赤く丸まり冬薔薇★★★
絶え間なく散りたる紅葉青き空★★★
一輪の赤く丸まり冬薔薇★★★
桑本栄太郎
吹き溜まる落葉を選び踏みゆけり★★★
踏みゆけば匂い立ち居り落葉かな★★★★
踏みゆけば匂い立ち居り落葉かな★★★★
公園や道に積もっている落葉は、さほど匂いを感じないが、踏んでゆくと、踏まれた力のせいか、落葉の匂いがする。日々深まる季節の匂いが落葉の匂いでもあろうか。(髙橋正子)
スーパーの跡地に枯るるゑのこ草★★★
11月12日(6名)
小口泰與
北風に流され離る二羽の鳶★★★
健児等は赤城颪に鍛えられ★★★★
北風に流され離る二羽の鳶★★★
健児等は赤城颪に鍛えられ★★★★
凩や軽自動車の中華蕎麦★★★
多田有花
ぶらりゆけば切株燃やす焚火の香★★★★
ぶらりと歩いていくと庭の木をせいりたのか、切株を燃やしている。その焚火の匂いに懐かしさを覚えるのは、私だけか。(髙橋正子)
レンズ越し十一月の薔薇を見る★★★
貨物列車が頭上過ぎゆく冬の朝★★★
廣田洋一
神棚の榊取り換へ神の留守★★★
風強し木の実時雨となりにけり★★★
二人してレモン掛け合ふ生牡蠣かな★★★
風強し木の実時雨となりにけり★★★
二人してレモン掛け合ふ生牡蠣かな★★★
川名ますみ
眉墨をやや長くひく今朝の冬★★★
日向ぼこ猫がそうしていた部屋で★★★★
日向ぼこ猫がそうしていた部屋で★★★★
飼っていた猫は亡くなったのだろうが、その猫が気持ちよさそうに日向ぼこをしていた部屋に入るとぽかぽかと日が差している。猫がしていたように私もしてみた。かわいい猫がそこにいるようだ。(髙橋正子)
からからと笑うヘルパー小春風★★★
桑本栄太郎
校門の冬の紅葉の枝垂れかな★★★
穂芒の解け銀波そよぎけり★★★
また一羽飛沫立てつつ鴨来たる★★★★
穂芒の解け銀波そよぎけり★★★
また一羽飛沫立てつつ鴨来たる★★★★
弓削和人
皆枯るる蓮に一茎立ちにけり★★★★
枯蓮の池の湖面や淡き雲
「池の湖面」が気になります。「湖面」は「湖の面」です。(髙橋正子)
枯蓮の池の水面や淡き雲★★★(正子添削)
枯蓮やものみなすべて夕の中★★★
枯蓮やものみなすべて夕の中★★★
11月11日(5名)
小口泰與
空風や焼き饅頭を売る老舗★★★
初雪や索道天へ進みたる(原句)
空風や焼き饅頭を売る老舗★★★
初雪や索道天へ進みたる(原句)
初雪や索道の荷の天へ進み★★★★(正子添削)
索道に吊り下げられた荷物が、天へと進んで行くように運ばれている。おりしも初雪が降ってきて絵にしたいような場面になっている。初雪が効いている。(髙橋正子)
色褪せし紺の暖簾や焼芋屋★★★
多田有花
近づくほど白さを増せり冬の菊★★★
積まれたる薪に浅き冬の日差し★★★★
背後より冬の光が薔薇に差し★★★
積まれたる薪に浅き冬の日差し★★★★
背後より冬の光が薔薇に差し★★★
桑本栄太郎
バスを待つ人の厚着や朝の客★★★
小春日やデートのように人と逢う★★★
亜郎忌の今日も晴れたる田道かな★★★
小春日やデートのように人と逢う★★★
亜郎忌の今日も晴れたる田道かな★★★
廣田洋一
縁側に新聞広げ大根干す★★★
引き売りの行列乱れ時雨かな★★★
神の留守陸奥の地に旅をせり★★★
引き売りの行列乱れ時雨かな★★★
神の留守陸奥の地に旅をせり★★★
弓削和人
夜が更けて湯ざめばかりの良書かな(原句)
読みふけて良書に湯ざめしておりぬ★★★★(正子添削)
祖母の手の入れし湯婆や夜を待ちて★★★
言の葉のぽつりぽつりや冬来る★★★
祖母の手の入れし湯婆や夜を待ちて★★★
言の葉のぽつりぽつりや冬来る★★★