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パラレルワールド 夢 未定稿

2021-04-29 07:00:49 | 爺の部屋
SF小説で良く取り上げられるテーマに、「タイムトラベル」があります。

そこには不文律があります。
①同時代・同じ空間に、同一人物は存在出来ない。
②過去に遡って、現在・未来に影響を及ぼすような行為はしてはならない。

違反した場合、タイムパトロールに逮捕され、時間の概念のない異空間に幽閉されます。(かどうかは知りません。)

ある老人がタイムトラベラーに依頼をした。

若い頃、大切なものをなくした。
当時は「それ」がどんなに大切なものか分からなかった。
なんでなくしたのか、何処でなくしたのかも覚えていない。
なくす前の時代に遡って、その時代にいる自分から譲って貰ってきて欲しい。

老人の話から、当時の大体の様子は分かっている。
タイムトラベラーは簡単に若い時代の依頼人を探すことが出来た。

若い男は裕福ではないらしい。でも、それなりに幸せのように見えた。

若い男に説明した。

「それ」を譲ってくれれば、将来、自然な形で、大金が手に入るように手配する。
自分(タイムトラベラー)がいなくなった時点で、
「それ」を渡した(紛失した)ことも、いずれ大金が入る予定であることも、記憶から失われる。
「どうか」

若い男は少し考えた後、断ることにした。

自分は「それ」の大切さを自覚していない。
でも、そう思う時が来ることが分かった。
いずれ、なくなるものであったとしても、
今、それを手放すつもりはない。

「今のこの気持ち」の記憶もなくなるだろう。
「それ」が大切であると言う自覚も失うだろう。
今、この瞬間だけでも、その大切さを知っただけでも良い。

「それ」はお金には代えられない。

タイムトラベラーは若い男の記憶を消して、元の時代に戻り、老人に報告した。

老人はタイムトラベーに感謝した。

お終い。


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