マメゾウムシのメス(右)が、交尾を迫るオス(左)から逃れようと後ろ足でオスをけり飛ばそうとしている。だがオスの生殖器は、いかりのような役割を持つ長いとげ状の突起物で覆われているため、メスが逃れるのは容易ではない。
2009年3月に発表が予定されている最新の研究によると、生殖器を覆う突起物が長いオスほど、より多くの卵子を受精させることができるのだという。
以下、その研究内容の概要とコメント。
今回の研究に参加したスウェーデンのウプサラ大学進化生物学者ヨーラン・アルンクビスト氏によると、マメゾウムシのオスの生殖器は鋭く尖った無数の突起物で覆われていて、まるで中世ヨーロッパの拷問器具のようだという。「実際にオスは交尾のとき、この生殖器でメスの体内を傷付けている」と同氏は話す。
交尾の際に相手の体を傷付けるという習性を持った動物種は、昆虫を中心にいくつか知られているが、このような習性が発達した理由については研究者の間でもよく分かっていない。
今回発表された研究結果は、このような凶器めいたオスの生殖器が、繁殖行動においてなんらかの利点を持つことを初めて立証したものである。「ただメスが受けた傷はおそらく、そうした利点の単なる代償にすぎず、生殖上の意味はない」とアルンクビスト氏は説明する。
アルンクビスト氏は、同じウプサラ大学のコジマ・ホッツィー氏と共に、アメリカのカリフォルニア州や中東イエメンなど、さまざまな地域に生息する13の個体群からマメゾウムシを収集し、そのうちナイジェリアで採取したオスのグループには生殖能力を失わせ、対照群として実験を行った。
その結果、生殖能力のあるオスも生殖能力のないオスも同じように生殖能力のあるメスと交尾したが、オスの生殖器を顕微鏡で調べてみると、それを覆う突起物が大きく鋭いオスほど、受精させることができた卵子の数は多かった。今回の研究成果は3月10日発行の「Current Biology」誌で詳しく発表される。
アルンクビスト氏は、その理由については分からないとしながらも、トゲ状の長い突起物は、いかりのような役割を果たしているのではないかと考えている。「オスは、トゲ状の長い突起物のおかげで、射精する際にメスの体内で最適な位置に生殖器を固定することができるのではないか」。
個々のメスは通常、さまざまなパターンの精子の中からより優れたものを選べるように、一生の間に何匹ものオスと交尾する。
アメリカのシラキュース大学で生殖戦略の進化について研究しているスコット・ピトニック氏は、今回の研究成果について「仰天の事実だ」と語る。ピトニック氏はその理由の1つとして、受精の成否を左右する要因が、メスの受けた傷ではなく、オスの生殖器を覆う突起物の鋭さにあることが証明された点を挙げる。「この成果によってわれわれは、オスがメスを傷付けるという習性の進化論的な研究に向けて大きな一歩を踏み出した」と同氏は評価する。「オスはトゲ状の突起物に覆われた生殖器を発達させたが、それに対抗するようにメスも生殖器を進化させた」とアルンクビスト氏は話す。
メスの生殖管は、壁面が分厚く、強力で弾力性に富む結合組織で補強されている。マメゾウムシのメスが交尾するのは、25~30日という短い一生のうち5~10日ほどだが、その間、交尾が終わるたびに、メスが受けた傷は瘡蓋(かさぶた)のような硬い組織に変化する。「またメスは、交尾を迫るオスを撃退する巧みな術も持ち合わせている」とアルンクビスト氏は話す。
ただ、こういったメスの行動が、マメゾウムシの種としての長期的な生存能力を阻害する可能性もある。というのも、防御能力を新たに身に付けた分、それ以外の能力を獲得するためのエネルギーが削がれてしまうからだ。だが、このようにメスとオスが進化の競い合いを繰り広げることによって、こと生殖器に関しては、数多くの個体が新たな能力を獲得できるのである。こうした中で、全く新種のマメゾウムシが生まれることもある。実際、マメゾウムシの種類は20~30ほどある。各種類のオスを比較してみると、見た目にはほとんど違いはないが、生殖器は種類ごとに全く異なる。
「マメゾウムシのオスの生殖器に見られる特徴は、動物全体で見ても特に短期間のうちに進化を遂げたものだ」とアルンクビスト氏は話している。
もうね、マニアック過ぎる。
しかし、こういった一般人には無用とも思える研究。
それをこっそり楽しむのも良いです。
2009年3月に発表が予定されている最新の研究によると、生殖器を覆う突起物が長いオスほど、より多くの卵子を受精させることができるのだという。
以下、その研究内容の概要とコメント。
今回の研究に参加したスウェーデンのウプサラ大学進化生物学者ヨーラン・アルンクビスト氏によると、マメゾウムシのオスの生殖器は鋭く尖った無数の突起物で覆われていて、まるで中世ヨーロッパの拷問器具のようだという。「実際にオスは交尾のとき、この生殖器でメスの体内を傷付けている」と同氏は話す。
交尾の際に相手の体を傷付けるという習性を持った動物種は、昆虫を中心にいくつか知られているが、このような習性が発達した理由については研究者の間でもよく分かっていない。
今回発表された研究結果は、このような凶器めいたオスの生殖器が、繁殖行動においてなんらかの利点を持つことを初めて立証したものである。「ただメスが受けた傷はおそらく、そうした利点の単なる代償にすぎず、生殖上の意味はない」とアルンクビスト氏は説明する。
アルンクビスト氏は、同じウプサラ大学のコジマ・ホッツィー氏と共に、アメリカのカリフォルニア州や中東イエメンなど、さまざまな地域に生息する13の個体群からマメゾウムシを収集し、そのうちナイジェリアで採取したオスのグループには生殖能力を失わせ、対照群として実験を行った。
その結果、生殖能力のあるオスも生殖能力のないオスも同じように生殖能力のあるメスと交尾したが、オスの生殖器を顕微鏡で調べてみると、それを覆う突起物が大きく鋭いオスほど、受精させることができた卵子の数は多かった。今回の研究成果は3月10日発行の「Current Biology」誌で詳しく発表される。
アルンクビスト氏は、その理由については分からないとしながらも、トゲ状の長い突起物は、いかりのような役割を果たしているのではないかと考えている。「オスは、トゲ状の長い突起物のおかげで、射精する際にメスの体内で最適な位置に生殖器を固定することができるのではないか」。
個々のメスは通常、さまざまなパターンの精子の中からより優れたものを選べるように、一生の間に何匹ものオスと交尾する。
アメリカのシラキュース大学で生殖戦略の進化について研究しているスコット・ピトニック氏は、今回の研究成果について「仰天の事実だ」と語る。ピトニック氏はその理由の1つとして、受精の成否を左右する要因が、メスの受けた傷ではなく、オスの生殖器を覆う突起物の鋭さにあることが証明された点を挙げる。「この成果によってわれわれは、オスがメスを傷付けるという習性の進化論的な研究に向けて大きな一歩を踏み出した」と同氏は評価する。「オスはトゲ状の突起物に覆われた生殖器を発達させたが、それに対抗するようにメスも生殖器を進化させた」とアルンクビスト氏は話す。
メスの生殖管は、壁面が分厚く、強力で弾力性に富む結合組織で補強されている。マメゾウムシのメスが交尾するのは、25~30日という短い一生のうち5~10日ほどだが、その間、交尾が終わるたびに、メスが受けた傷は瘡蓋(かさぶた)のような硬い組織に変化する。「またメスは、交尾を迫るオスを撃退する巧みな術も持ち合わせている」とアルンクビスト氏は話す。
ただ、こういったメスの行動が、マメゾウムシの種としての長期的な生存能力を阻害する可能性もある。というのも、防御能力を新たに身に付けた分、それ以外の能力を獲得するためのエネルギーが削がれてしまうからだ。だが、このようにメスとオスが進化の競い合いを繰り広げることによって、こと生殖器に関しては、数多くの個体が新たな能力を獲得できるのである。こうした中で、全く新種のマメゾウムシが生まれることもある。実際、マメゾウムシの種類は20~30ほどある。各種類のオスを比較してみると、見た目にはほとんど違いはないが、生殖器は種類ごとに全く異なる。
「マメゾウムシのオスの生殖器に見られる特徴は、動物全体で見ても特に短期間のうちに進化を遂げたものだ」とアルンクビスト氏は話している。
もうね、マニアック過ぎる。
しかし、こういった一般人には無用とも思える研究。
それをこっそり楽しむのも良いです。