9月27日に自民党総裁に選出され、10月1日に国会で開かれた衆議院本会議において総理大臣に選ばれた石破茂氏は、10月9日に衆議院を解散し、15日に衆議院議員選挙を10月27日に行うと公示した。
ちょうどまさにその1か月前に政権与党自民党の総裁になったばかりで、政権を掌握するとすぐに「伝家の宝刀」と呼ばれる衆議院議員の解散に打って出たわけである。
拙速の感は国民の誰しもあったに違いない。
石破氏が総裁選の最中に言っていたのは、総裁になり総理大臣になったら少なくとも国会で予算委員会を開いて野党との十分な論議を経てから解散をしたい――というのだったが、そのことは全く反古にされた。
自民党内で支持基盤の少ない石破氏にしてみれば、
――国民世論の「石破氏への期待感」の熱いうちに総選挙を行えば自民党はそれなりの支持を得て、その結果現有の勢力を確保できる。そうすれば石破氏の党内での支持が広がるだろう。
という思惑があったのだが、選挙結果は「自公過半数割れ」の惨敗となった。
鹿児島県では4選挙区のうち安泰だったのは大隅地区を中心とする第4区で、ここは今度自民党の幹事長になった森山裕氏の絶対保守区である。
第1区は立憲民主党の川内氏に敗れ(自民候補は比例復活)、第2区は無所属の三反園氏に及ばず(自民候補は比例復活)、そして第3区は農林水産大臣に就任したばかりの小里氏が立憲民主党の野間氏に敗れた。
驚くべきは第3区の小里氏で、比例九州での復活もかなわず、議員の職を失った。10月1日の新内閣で農林水産大臣になったばかりだったのだ。
保守王国と言われれる鹿児島で自民党の議員が選挙区で半数をとれなかったのは、1955年の自民党結党(初代総裁は鳩山一郎)以来初めてのことだという。
今回の自民党及び政権与党公明党の惨敗は、昨年来の議員事務所のパーティ券等剰余金の収支報告書への不記載いわゆる「裏金問題」が大きくのしかかったのだが、これに加えて非公認議員の所属する自民党支部への「公認料」2000万円支出が明らかになって有権者の批判票が他党に回ったことにある。
「公認料」はどの支部にも配られるらしいが、非公認議員が支部長である場合、今度の選挙では差し控えるのが筋だったろう。
しかしこれがメディアで露出され、金権批判が増幅された。「火に油を注ぐ」とはこのことだ。
総選挙後の国会は与野党の勢力が逆転し、自民党は大きく躍進した国民民主党や維新の会に秋波を送っているが、どうなることか。
今朝の新聞によると石破首相への支持率は就任当初は50%を少し上回っていたのだが、32%になったという。
与党内野党という評価を得ていた石破氏が自民党改革をやってくれるのではないか――という国民の期待感は裏切られてしまった。
せめて公約の柱の一つ「防災庁」を提示し、超党派的な議論にかけて創設してくれまいか。天災大国日本に是非とも必要だ。