鴨着く島

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「マネーゲーム」は健在なり

2021-09-08 09:00:43 | 日本の時事風景
9月3日に菅首相が突然の総裁選不出馬を表明してから、東京証券取引所の株価がどんどん値上がりし、2日前には3万円台にまで上がった。

その間の上げ幅は1400円だそうで、またぞろ売り手買い手の間でマネー交換ゲームが活発化した。

菅首相の不出馬声明は実体経済に何の影響も与えていないのに、すぐ「株価が反応した」のだが、この場合は上がっているので「株価が好感した」というのだそうだ。

しかし思えば菅さんには気の毒な反応だ。辞めると言ったらそれを「好感した」わけで、「おう、総裁選には出ないんだ。よしよし」という反応だったからである。

私からして見れば、「出る出る」と言っていた総裁選に突然「出ません」と来れば、株式市場はちょっとは混乱し、売りが進んで株価は下がると思っていたのだ。

思えばちょうど一年前の9月、安倍前首相が総理・総裁を投げ出し、総裁選によって菅さんが後を引き継いだのだが、「安倍前首相の政策を継ぐ」ことにより安倍前首相の失策であった「森友学園関連の文書改ざん問題」以下を封じ込めることに専念した(成功はしていない)。

また、事実上、二階幹事長が采配した結果起きた広島選挙区の河井衆議院議員夫妻の選挙違反騒動「1億5千万選挙資金疑惑」も説明責任を果たさないままうやむやになりかけていた。

そこを衝いて総裁選出馬を表明したのが広島選挙区出身の岸田前政調会長で、慌てた菅首相はこれまた突然に「党役員人事改正」という触れ込みで、二階幹事長を遠ざけようとしたのだが、その人事を行うはずの9月6日を待たずして、自身の不出馬を表明したのであった。

とても「総合的・俯瞰的に」(日本学術会議への6名の信認を拒否した時の菅さんの言葉)不出馬を決めたとは思えない様に見えたのは、私だけではあるまい。

こういう無様な進退表明を眼のあたりにしたら、「一体全体どうしたんだ!」と、株価は下がるのが普通ではないのか。今朝の新聞では株価が上がった理由を、「新しい総裁の下での経済政策に期待感が高まったからだ」と説明している。

こんな説明なら他に何とでも言えよう。それより、菅首相が推進して設立された「デジタル庁」は今後どうなるのか、また脱炭素社会2050年確立構想は不変なのか、という危惧が先に立ち、株式の買い控えがあってむしろ下がりそうなものだ。

それが上がったということは、株式市場はもはや政府の政策うんぬんよりも政局の動きに連動し、その動きが国民にとって是だろうが非だろうが「兎に角、とりあえず反応するマネーゲームの場」でしかないことをあからさまにしたようなものだ。

今後「よし、あの総理に○○を仕掛けてやれ。株価が上がるようにな」という株式至上主義(株式市場主義ではない)の悪徳ホールディングが現れないとも限らない。証券取引監視委員会の監視強化を切に願う。