鴨着く島

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梅雨末期の豪雨災害

2021-07-05 09:33:25 | 災害
7月3日に静岡県熱海市で土石流が発生し、多数の死傷者と行方不明者が出ている。

土石流は、熱海市北部の伊豆山地区を流れる逢初(あいぞめ)川という和歌に詠まれそうな風雅な名の長さ2キロほどの川を、源流の稜線部分から流れ出したようだ。

源流部の標高は400メートル足らずで、そこから海までが2キロというのだから、逢初川の平均傾斜は20パーセントになる。これは川というには急過ぎる。谷川というべき急流である。

地元の人も「普段はほんの小さな流れ」と言っている。そこへもってきて3日前から北上して来た梅雨前線に向かって太平洋側から湿った空気がどんどん送り込まれ、いわゆる「線状降水帯」というやつが生まれ、源流部分に宅地開発だか、道路の造成だかで積まれた盛り土が、水分過剰に耐え切れず一気に崩落したらしい。

完全に「人災」である。その証拠に土石流がすさまじい勢いで流れ下る視聴者の撮影したビデオがテレビ画面に映されたが、流れ下る泥流に家屋が破壊されてバラバラになった柱や屋根や看板などは見えるのだが、生木(たいていは植林された杉が多い)は一切流されていないのだ。

山津波とも言われる山中で発生した土石流なら、スギなどの生木が多数混じっていなければならないのに、この熱海の土石流にはそれがない。標高400メートル近い山のてっぺんまで宅地造成されたための「人災」ということになる。

約130棟が罹災しており、このうち住民票から判断して140名くらいの人たちがいただろうとされているが、見つかった3人の遺体と救助された30数名を除くと、まだ100名以上の人の安否が分からないという。

このあたりは東京や神奈川県民の別荘地帯でもあり、週末だけの住民も多いのだろう。そのことが安否確認に大きな障害となっている。

土石流の起きたのが3日の土曜日。前日の金曜日に東京などから週末を過ごそうとしてやって来た人が多かったはずだ。発生が午前10時半というから多くの週末住民はすでに起床はしていただろうが、朝食後、まだのんびりしていたに違いない。

気分良く目覚めた別荘で、大きな伸びでもしている時に、突然襲ってきた泥流はまさに悪夢だったろう。

傾斜地の田んぼは「段々田」(千枚田)で、保水が命なのでまず崩れ去るようなことはないが、今度の「段々宅地」に保水性はなく、あっという間に呑み込まれた。段々宅地なら家屋がひな壇式に建てられ、海の眺めも素晴らしいので、都会人には垂涎だったのだろうが、それが全く裏目に出てしまった。

7年前の夏(平成26年8月)に、広島市安佐南区で同じような住宅地帯を裏山からの「鉄砲水」が襲い、相当な死者を出している。広島は平地の少ない所で、そこは一般の住居用の宅地造成地だった。これも人災の部類に入るのか。

人によってはまっ平らな場所にできた分譲宅地を嫌い、わざわざ自然に近い風景があるこのような宅地を選んだりするのだが、地球温暖化による気象災害が激しさを増している昨今、新たに宅地を購入しようと考えている人は避ける方が賢明だろう。

今度の災害は「梅雨末期の豪雨」の範疇に入るのだろうか。

鹿児島では昔から「人がけ死まんと、梅雨(なげし)が上がらん」と言って、必ずやって来る梅雨末期の豪雨災害を表現しているのだが、もうここ10年くらい、鹿児島での梅雨末期の豪雨被害は数えるほどになった。むしろ梅雨末期の豪雨自体が北上して、今度の伊豆半島、九州北部、同中部などで災害に見舞われている。去年7月の熊本県人吉市の豪雨災害は記憶に新しい。

今年の梅雨明けは沖縄が7月2日、奄美が同3日と平年より遅かった。南九州もこの10日くらいは「梅雨の中休み」状態が続いている。もう間もなく明けるのではないかと思う。

明けてしまえば「梅雨末期の豪雨」からは解放されるが、その分、台風の襲来が早くなりはせぬかと気がもめる。

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