ガトゥ・ハロゥ

八犬伝と特撮と山田風太郎をこよなく愛する花夜のブログ。

虚実の混合世界  ~八犬傅~

2005年03月25日 02時00分10秒 | 八犬伝いろいろ


「世界伝奇小説の烽火、アレクサンドル・デュマの『三銃士』に
先立つこと三年」。28年の歳月を費やして完成された滝沢馬琴の
大作「南総里見八犬伝」。物語は、長禄2年足利八代将軍義政のころ、
安房国の城主里見義実の娘・伏姫が犬の八房の子を身籠り生んだ
八つの奇妙な珠の話で始まる。後にそれらの珠を持つ8人の犬士が出現。

(山田風太郎傑作大全20 「八犬傅(上)」)

作者は忍法帖シリーズの山田風太郎氏。
「八犬伝」を2つ書いてるワケですね。「忍法八犬伝」とコレと。
滝沢馬琴の流れの直系が山田風太郎と言われているのも少し納得。

虚実混合の物語ということで、「虚」の世界の主役は八犬士達。
「実」の世界の主役は、作者の滝沢馬琴氏。
「八犬伝」を書き続ける馬琴の現実世界での出来事を絡めながら、「虚」と「実」
の世界が交互に書かれていく物語。

八犬士の活躍のツボはキチンと抑えつつ、文章は明快にして怪傑。
本家の「里見八犬伝」の後半では独壇場となっている犬江親兵衛の活躍も
それなりに短縮されているので、本家の「里見八犬伝」に挫折した人は
この本から読むと良いかも。ただ、後半ラストの方では、それまで章ごとに
「虚」「実」が交互に書かれていたのが「虚実混合」となり、文節ごとに
話が展開していくようになるので、「八犬伝」を全く知らない人には物足りない
まま終わる完結かもしれない。

「虚」の「八犬伝」のラストは書かれずにぼかしたまま。
「実」の世界では、馬琴が失明して絶望した後、亡き息子の嫁であるお路さんが
口述筆記で書き続けることを宣言し、馬琴とお路さんが「八犬伝を完結させる」
という目的を達成させる為に強い絆を固めていくところまで。

「八犬伝」を未完で終わらせなければならないという不安にかられる馬琴に、
字を教えてもらうところから始めて、「八犬伝」を完結させようとするお路さん。
目の見えない人が、字を知らない人に字を教える。
それをやり遂げて、「八犬伝」が完結したのは奇跡に近いと思う。

ロマンスあり、転生あり、因縁の絡み合う荒唐無稽な物語。
そして、日本最古の集団ヒーロー物。

日本が「戦隊」シリーズのような集団モノを好む理由の一端かも。