(「中上健次選集2 【異族】)
「八紘一宇その物がまやかしさ」
八紘一宇(はっこういちう)とは、「世界一家」を意味する語。
戦時中の大日本帝国では、「日本を中心(一宇)に、世界(八紘)を
統合すること」の意味に便用され、戦争遂行スローガンとなった。
(ウィキペディア参照)
この物語「異族」の本を初めて手にとったのが大学生の時。
席がガラ空きでチケットが原価割れで手に入る頃のSMAPコンサートに
行く途中、梅田駅の紀伊国屋で購入。きっかけはその少し前に週刊文春の
書評にそれらしきこと「八犬伝」をにおわす様なことが書いてあった為。
作者である中上健次急死の報と共に記載されてあったと思う。
残念ながら未読のうちに震災で行方不明になってしまい、
その後、文庫になったのを知って再購入。
最初の本は未完。この文庫にはその後のあらすじらしきものが「完結編」
の「最終回」として載っている。
「中上健次最後の超大作」というだけあって、読み終わるのに時間がかかる。
読むのは楽。楽だけど、主人公達の思念や考え方に振り回されるので
何度も読むのを中断してしまう。
沖縄の差別問題も多少入っているけど、主要人物全てがなにかしらの
差別を受けているので物語の比重のほとんどがそれに傾いている。
沖縄出身の特撮脚本家として有名な上原正三氏が「ヒーローモノ」でない
差別モノ作品を扱うのであれば、この【異族】は又とない内容ではないかと思う。