ロシアW杯、ポーランド戦での西野監督の判断は支持している方が多いようだが、ここではそのことには触れず、ルールそのものについて少し考えてみたい。
今回の件は様々な条件が並んだ場合、警告数が少ないほうが勝ち上がるというルールがあるから起きたことである。
もちろん日本はそのルールの範囲内で決勝トーナメントに駒を進めた。
ではそのルールがなかったらどうなっていたのか?
単純にその項目だけが削除されれば、勝ち上がりは抽選で決まることになる。
その場合、今回の例に当てはめれば、得点を奪う、勝ち点を奪う、あるいは他会場の結果に期待するという選択肢しかない。
つまり通常のサッカーをやるしかなかった。
極端に言うと、抽選で突破する確率は50%、自チームが得点する確率はそれより低く、失点する確率は高いと考えると、抽選を選ぶチームも理論上はあり得るかもしれないが、実際はプレーしないことで抽選を選ぶチームはないだろう。
もともとはそのルールを制定したのは、3試合を終えて抽選で雌雄を決するよりは、警告数を考慮した決め方のほうが試合内容も多少は反映するし、全体として警告につながるようなプレーの軽減につながるという意図があったのだろう。
駆け引きに用いられるとは想定されていなかったのかもしれない。
だがこのルールがある限りは、露骨か巧妙かはともかく、今後も決勝トーナメント進出の駆け引きに用いられるだろう。
日本が選択した是非は別として、今回のような試合がW杯の試合として無い方が良いのであれば、警告数の項目は削除したほうがよい。
もちろん単純な削除ではなくて改良されるのであれば、それも良いのだろうが、なかなか名案はないかもしれない。
柔道のように教育的指導をするわけにいかないだろうし。
項目を削除したうえで、翌日にPK戦でもやるか? 会場は決勝がおこなわれるメイン会場?
滅多にないことだろうし盛り上がるかもしれないが、GKやキッカーにかかる重圧はとてつもない。
決勝トーナメント進出を決めた2チームのある種の談合試合、得失点差で安全圏にいるチームがゲームを壊してしまう試合は無くしようがないだろう。
それもサッカー。
ともかく有識者の方々、より良いルール改正に向けて知恵をしぼってください。
ロシアワールドカップグループリーグ最終戦、西野監督はポーランド戦の試合終盤、0-1の「負け」を選択し戦いを放棄、結果として決勝トーナメント進出を決めた。日本はグループリーグ3試合を終えてセネガルと勝ち点、得失点差、総得点、当該チームの成績まですべて並んだものの、警告の数の違いによりセネガルを上回り、コロンビアとともにグループリーグ突破を果たした。
日本代表の終盤の戦い方は様々な議論を呼ぶだろうが、思うところを書いておきたい。
「負けてセネガルを上回る」という監督の選択が、長谷部選手の投入によりピッチ上の選手たちへ意思統一がなされた。結果としてうまくいく形となったが、もしセネガルがコロンビアからゴールを奪い1-1の同点に追いついてしまったら日本代表はその瞬間から予定調和のボール回しをやめ得点を奪いにいかなくてはならなかった。セネガルのゴールが遅い時間であればあるほど、日本の攻撃時間は少なくなる。仮に韓国がドイツ相手に奪ったゴールのようにアディショナルタイムに入っての得点であったならば、日本の攻撃のために残された時間はほとんどない。最悪の場合、10分以上も「負け」を求めてボール回しをした後に、1点を取りにいく時間の圧倒的な少なさという絶望のなかでワールドカップの戦いを終えてしまう可能性もあった。自分たちの力不足で負けるのではなく、力を出す時間もないままに終わってしまう可能性もあった。
そんな悲劇のなかでワールドカップを終えてしまったら、選手たちの心はどうなってしまうのだろうか?
少なくない選手にとっては最後のワールドカップだ。最後の最後がそんな形の終わりだとしたら…。
そんな悲劇の運命を、監督の他力本願で強いてしまってよいものなのか?
そんな悲劇を選手たちに背負わせる権利が監督にあるのか?
そう思いながら試合を見つめた。いや「何をやってんだ」と叫びながらテレビを観ていた。
結果が出たから博打に勝ったからといって、許されるものなのだろうか?
勝負師として確率論の中で選択した論理は理解出来ないわけではない。もちろん試合終盤で敢えて「負け」を選択し、後方でボール回す選択を否定するものでは全くない。仮にセネガル0-2コロンビアというスコアなら完全肯定だ。それはサッカーだ。
選手たちはつらい選択に「見事な」意思統一で応えた。そういった形でもぎ取ったグループリーグ突破、是非次戦につなげてほしいという思いは強いものの、この試合で起きたことはあまりにも釈然としない。
2か月半程、ブログの更新が滞っていました。
この間、電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画編集が大詰めで、その他のことは何もできない時期が続いていました。日本代表ハリルホジッチ監督電撃解任の引き金となった3月末のヨーロッパでの2連戦も、目を開けて見ているのが精いっぱいという体たらく。内容がどうのこうのではなく、こちらの忙しさや余裕の問題です。
そんなこんなで6年半撮影していた電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画はやっと完成しました。撮影でお世話になった方々、本当にありがとうございました。タイトルはいろいろ迷って、最後は究極のシンプルなタイトルで「蹴る」に決めました。
上映に関しては、まだまだこれからということになります。映画「蹴る」に関しては順次、更新していきます。
ということでハリルホジッチ監督解任です。
ハリルホジッチ監督の存在を知ったのはブラジルワールドカップの時でした。4年前のブラジルW杯で最も印象に残った試合、胸が熱くなった試合は、間違いなくアルジェリアvsドイツの試合でした。そう、ハリルホジッチ監督がアルジェリアを指揮しドイツを追い詰めた試合。
グループリーグ惨敗に終わった日本代表と比べて、とてもとても羨ましく思ったことを、鮮烈に覚えています。そのハリルホジッチ監督が日本代表に就任した時は、期待感に充ち溢れました。
ザッケローニ監督率いる日本代表にも相当な期待感を抱いていましたが、結果としては惨敗。コンディショニングに失敗したとしか思えなかったことと意思統一が出来ているようには見えなかったことは、ショックでした。
その後思ったのは、いくらアジア予選やテストマッチで良い試合をしても、W杯本番で結果が出なかったら、あるいは内容がともなわなかったら、水泡に帰してしまうこと。とにかくW杯本大会で納得のいくサッカーを見せてさえくれれば、W杯にいたるまでは面白いサッカーを見せてくれる必要はない。アジア予選は結果とW杯につながるものが見えさえすれば良い。テストマッチは勝とうが負けようがどうでも良い、思いっきりテストしてW杯につながっていけば良いと思っていました。少なくともロシアワールドカップまでは。
ザックジャパンの時はアジア相手に大量得点差勝利をあげたり、ヨーロッパの強豪相手に良い試合したりという流れでしたがW杯で惨敗。逆のほうがいいや、ということです。
で実際ハリルジャパンは、そんな感じて進んできていました。アジア予選では、Away&Homeのオーストラリア戦、 AwayのUAE戦など、監督の戦術がはまった試合もありました。テストマッチは痛快なまでのテストの連続。韓国戦はテスト以外のことをやって勝とうという気が感じられませんでした。私は別にいいやと思いましたが、許せなかった人たちも多かったでしょう。
もちろんテストがうまくいってないという側面もあったでしょうが、とにもかくにもテストを繰り返し、やっと本番が見られると思ったところでの解任劇、ショックでした。
W杯では各試合ごとに戦術を綿密にたて、ターンオーバー制も駆使した戦いを観たかった。いわば選手をコマのように当てはめるやり方でしょうから、面白くないと思う人にとっては面白くないでしょうが、日本サッカーの将来を考えるうえで重要な戦いになるのではないかと思っていました。針を振り切った方が次の段階に行けるのではないかということです。その前にチームが〝壊れる〟と判断されたのでしょうか。
ブラジルワールドカップが終わった後、一つのやり方に固執する「サムライブルー」より、かろやかに姿を変える「商人(あきんど)ブルー」や「町人ブルー」を観たいというようなことをブログに書き込みました。そういった意味でカメレオンのような戦いが観られるのではないかと期待していました。走り負けしないカメレオンです。
もちろん戦術が全くはまらず、試合中の修正も効かず敗れてしまうこともあったかもしれませんが、何をしようとしてダメだったのかは可視化されたかと思います。
そういった意味でとても残念でした。
解任の理由は正直よくわかりません。もちろん監督が代わっても応援しますが、今は気持ちの切り替えがなかなかうまくいきません。
「日本サッカー」という言葉が飛び交っていますが、「そのサッカー」をやりきってくれれば負けても納得がいく「サッカー」。そういったサッカーが「日本のサッカー」になっていくのかと思いますが、まだワールドカップで観たことはありません。
歴史の積み重ねだけが「日本のサッカー」を形作っていくことだけは、間違いないですね。
DVD『日本代表激闘録 アジア最終予選 ―ROAD TO RUSSIA―』(構成・ディレクター中村和彦)が12月20日発売。
日本代表激闘録 アジア最終予選 ―ROAD TO RUSSIA― [DVD]
サムライブルーの試合は3月末までありませんので、この機会にワールドカップ予選を振り返ってみるのも良いのでは。
本大会の戦いのベースが見て取れますし、これほど多くの選手が出場した予選は初めてです。
浦和レッズ ACL10年ぶりの優勝!
昨夜(11月25日)は、ACL決勝第2戦浦和レッズvsアル・ヒラル戦を生観戦した。
浦和レッズのサポーターというわけではないのだが、10年前のACL優勝の際にはDVDを制作、編集ではレッズのチャントに“洗脳”され続けてた。実際、完成後も脳内にチャントが住みついていて何気ない時に頭をよぎったりということが多々あった。
それはともかく、以下のようなことをFacebook用に書き込みながら埼玉スタジアムに向かった。
代表戦やACLなど撮影のためピッチレベル(つまり選手に近い位置)にいたことがそれなりにあるが、観客サポーターのエネルギーや迫力を一番感じたのはテヘランで開催されたドイツW杯予選のイランvs日本。日本にとっての超アウェイ、イラン人のパワーってどうなってんだ!という強烈な思い出がある。通路にもぎっしりと人が座っていたりと人数の多さも一因としてあった。
2番目が10年前の埼玉スタジアムACL準決勝、浦和レッズvs城南一和戦。延長PKにもつれ込んだ試合だったが、レッズサポーターの後押しする迫力が凄かった。
そして今夜はACL決勝、スタンドからの生観戦。
浦和レッズ、10年ぶりの優勝なるか!
いやあサポーターの後押しが凄かった。
コレオグラフィによるビジュアルサポート、ホームゴール裏は2007年優勝を表す星、逆側には2017年優勝の星が描かれ、バックスタンドにはACLの優勝トロフィー。もちろん優勝を後押しするビジュアルだ。
ハーフタイム明けには肩を組み飛び跳ねつつの「歌え浦和を愛するなら」。スタンドが揺れていた。
0-0でも優勝のレッズのフォーメーションは4・3・3・というより、柏木と青木のダブルボランチの4・2・3・1だっただろうか。第1戦とは異なりラインも高めに設定され、トップ下に入った長澤の前線からの守備がとても効いていた。長澤と柏木の距離感も良く、柏木も守備面でもとても効いている印象だった。
しかし後半10分過ぎから長澤に疲れが見えてくる。運動量も多く、球際でも激しく闘った影響だろうか。長澤は相手を追うのだが、後追い的な走りで効果的なプレスにならない。全体も若干間延びし中盤でアル・ヒラルの選手たちがフリーでボールを持てるようになり、そこを起点にチャンスを作り出す。レッズからみるとピンチの連続。レッズの耐えどころであった。
「疲れの見える長澤を代えたほうがいいんじゃないのか?」などと個人的には思ったが、堀監督の打った手は、長澤のポジションを下げ柏木を上げるというもの。
中盤の底に入りそれほど走る必要のなくなった長澤は息を吹き返し青木とともにスペースを埋め、アル・ヒラル選手相手に球際で体を張った力強い守備を見せる。
レッズの劣勢の時間帯、そして的確なポジションチェンジは、この試合の肝だったのではないだろうか。
その後、興梠が下がり、柏木とラファエルシルバの2トップのようになる時間帯もあった。
レッズゴールに迫れなくなったアル・ヒラルはいら立ちを募らせ退場者を出す。その後、ラファエルシルバの歓喜のゴール!
そして優勝!
と、ここまで書いてきてふと思い出したのだが、7~8年前、手話で「好きな選手は誰?」と聞かれたことがある。「ストイコビッチ」としどろもどろの指文字で答えたが「現役選手で誰が好きなんだ?」と再質問された。音声日本語で聞かれていたら「あの選手も好きだけど、この選手のこんなプレーも好き」というように能書きをたれていたかもしれないが、そんなことを語る手話力は当時の私にはない。シンプルに答える必要があり、思い浮かんだのが「あべ」。「俺って阿部選手が好きだったんだ」と思ったその阿部選手は、2007年と今回の優勝でピッチに立っていた唯一の選手。
浦和レッズ、優勝おめでとうございます。
海外遠征の際、食事面でサポートした西シェフもお疲れ様でした!