サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

『デフフットサル女子日本代表』6位で大会を終える

2015年11月27日 | ろう者サッカー

デフフットサル女子日本代表最終戦5-6位決定戦の相手は世界ランキング3位のイングランド。
もちろんイングランドの選手たちのほうが“でかい”。しかしなかには少々ぶよぶよした選手も。

序盤、イングランドは組織的な守備で日本になかなか攻撃のかたちを作らせてくれない。
前半3分、イングランドの4番が右サイドから抜け出し右足アウトサイドでニアを狙いすましてシュート、イングランドが先制する。

その後も日本は岩淵のドリブル突破などからチャンスを作り出そうとするものの、じれるような展開が続く。
阿部と大久保が左サイドからワンツーで切り崩そうとするがシュートまでいけない。
イングランドは日本にゴール前のスペースをまったく与えてくれない。

そして前半残り3分をきったところで、イングランドの4番がゴール前に入り込み縦パスをを受け反転しシュート。
日本のDF、ゴレイロも反応できず、イングランドに2点目が入る。うーん、なかなかいい選手だ。
日本の良さは消し去られ、完全にイングランドのぺースで試合は進んでいく。
そして前半終了。

後半、日本は立ちなおせるだろうか。未来につながる後半を見せてほしい。

後半、日本は、前へ、前へ、という意識を強く持って攻撃的な姿勢を見せる。
阿部、岩渕が積極的にしかけていく。

しかし、なかなかイングランドのブロックが崩せない。
そんななか最年少宮城がうまくゴール前に走り込み、パスカットした右サイドの阿部からのパスが通る。
宮城がダイレクトで流し込み日本が1点を返す。すばらしい流れのゴール!

その後もゴレイロ芹澤は再三の好守をみせていたが、イングランドに3点目を奪われてしまう。
そしてコーナキックからうまくパスをつなげられ4失点目。
イングランドの9番にうまくゴレイロとディフェンスの間に走り込まれた。

その後、ベンチで息を整えた阿部や岩淵が両サイドからガンガン仕掛ける。
しかし左サイド岩淵のパスを受けた阿部のシュートはイングランドのゴレイロの好守に阻まれる。

そして日本のFK。
吉原がゴール前で体を張りゴール!! 2-4と追い上げる。
鳥肌がたったぜー。
男子選手たちも観客席から声援を送る。

しかし残り時間は少ない。
そしてとうとう残り時間1分をきってしまう。
しかし日本は粘りを見せる。左サイドコーナキックから井部がゴール前ファーサイドのスペースへパスを送る。
走り込んだ阿部がスライディングシュート!!
ゴールネットを揺らし日本が1点差に追い上げる!

しかし追いつくには時間が足りなかった。
日本はイングランドに敗退、6位という成績で全日程を終えた。

日本は未来へつながる粘りを見せてくれた。
一方のイングランドは守るべきところと得点を奪うべきところのメリハリの効いた好チームだった。
そのイングランドを脅かしたという意味では評価すべきことだろう。
しかし何もできなかった前半など課題も残った。

大会を通じてみると、今大会、“気持ちが切れない”チームであったことが何よりの収穫だ。
チーム力が格段にあがったことは確かだろうし、総力戦で戦えるベースとなったチームの底上げ、戦術の共有。フィジカル面での成功も収穫だろう。
しかしほとんどの試合で先制点を奪われるなど、課題も多数あるだろう。
そのことはおそらく選手自身が一番よくわかっているはず。

選手たちは“やりきった”という手応えをきっと感じただろう。
しかしそれ以上に、“悔しさ”を日本に持ち帰ることにもなるのだろう。

それがきっと未来につながっていくことを願って。

選手、そしてスタッフの皆さま本当にお疲れ様でした。


『デフフットサル男子日本代表』最終戦に勝利し7位で大会を終える

2015年11月27日 | ろう者サッカー

タイで開催中のデフフットサルワールドカップ。
今日は男女チームともにチームの最終戦である。
男子はブラジルと7~8位決定戦、女子はイングランドと5~6位決定戦。

まずは男子代表からキックオフ。
これまでなかなか時間がとれず男子フットサル代表の試合映像を最初から最後まで見れたのは、この最終戦が初めて…。
すいません。ツイッターで試合経過をフォローし心のなかでは応援していましたが。

試合前には両国の国歌が流れる。
ブラジルは何名かの選手が歌詞を手話でも表す。かすかに聞こえる難聴の選手たちが表出しているのだろうか?
皆ベンチを見ているようなので通訳を見て手を動かしているようでもある。

ブラジルは世界ランキング13位以内に入っていない。これは国際試合がなかなかこなせないためポイントがついていないのだろうか。
ブラジルは個人としてもチームとしても、あまり“上手い”という感じには見えない。国内での活動も限られているのだろうか?
パラリンピック種目のブラインドサッカーなどには重点的に予算が配分されていてデフにはあまり資金が回ってこないのだろうか?例えばブラインドサッカーブラジル代表の世界での位置と比べるとやたら見劣りがしてしまい、ひ弱さを感じてしまう。
日本が、吉岡を中心とした組織的かつ集中した守備でブラジルの個人技を封じ込めている側面はもちろんあるが。
日本のほうがチーム戦術的にもフィジカル的にも頼もしく見える。

そして先制点はニッポン!
怪我から復帰した東海林が意外なタイミングでミドルシュート、ブラジルのゴレイロは不意をつかれたのか死角になったのかうまく反応できずゴール!!
1-0で前半を折り返す。

後半、松本がゴール前の風間へパス、風間がきっちりとゴールに蹴り込み2-0とリードを広げる

その後、上井のミドルシューㇳが決まり3-0。
1点目と同じようなゴール。ブラジルのゴレイロはぼーっとしている瞬間があるというか波があるというか、のあたりのことも日本は織り込み済みで狙っていたのかもしれない。

試合終了間際、ゴール前でブラジルにパスをつながれたピンチは菱岡の好守で難を逃れる。
そして試合終了のホイッスル。
『デフフットサル男子日本代表』は7位の成績で全日程を終えた。

選手たちはサポーターに挨拶し、船越キャプテンはカメラを通して日本で応援している人々にも挨拶。
この試合に関しては日本の完勝。
7位という成績に選手たちは満足していないと思うが、とにもかくにもお疲れ様でした。

ちなみに男子決勝は地元タイとイランの組み合わせ。

女子の最終戦は14時(日本時間)キックオフ。


『デフフットサル女子日本代表』イランを撃破 『男子』もノルウェーに勝利

2015年11月25日 | ろう者サッカー

タイで開催中のデフフットサルワールドカップ、女子日本代表は5~8位決定戦でイラン代表と対戦。
イランの選手たちはヘジャブを頭に巻いてのプレー。スポーツ仕様で通気性も良かったりするのだろうか?

前日の怪我が心配されたゴレイロの芹澤も先発メンバーに名を連ねる。
試合はいささかオープンな打ち合いの様相で進んでいく。
そして日本に、今大会初の先制点が生まれる。
植松が左サイド角度のないところからループ気味のシュートを放ち、先制!
植松は喜びを爆発させる。献身的な守備でチームを支えてきた植松、喜びもひとしおだろう。

しかし直後イランに同点に追いつかれてしまう。イランは左サイドから強烈なシュート、芹澤が止めたこぼれ球をイランの選手が押し込む。
その後イランがPKを得るが、芹澤が体を張って止める。

そしてさらにはイランが、左サイドから右足アウトからの技巧的なシュートで逆転。
『オフサイドガールズ』たちもなかなかやります。(『オフサイドガールズ』はイラン代表の試合見たさに男装してテヘランのアザディスタジアムに忍び込もうとするイラン女性たちの劇映画。2005年のアジア予選が舞台)
しかし日本も沖縄の最年少プレーヤー宮城がフェイントで一人をかわし、ドリブルシュート。豪快にゴールネットを揺らし同点に追いつく。

一方、男子代表は同時進行でノルウェーと対戦。5-4と追い上げられるが6-4と突き放す。

女子の試合は2対2でハーフタイムへ。

男子はノルウェーのシュートをゴレイロ菱岡が弾き出したところでタイムアップ、ノルウェーに勝利した。
グループリーグの戦績は2勝2敗1分け。

そして女子代表の後半。
日本は見事な連係で勝ち越しゴールをあげる。
岩淵が持ち前のキープ力を活かし切り返して左サイドの阿部へ、阿部の折り返しに井部が合わせてゴール!!
3-2と勝ち越した。

その後、イランのミドルシューがクロスバーを直撃し肝を冷やす場面などあったものの、14分過ぎ、岩淵から自陣でパスカットしてドリブルで持ち上がる。
日本のカウンター。田村も並走。岩淵からのパスを田村が流し込みゴー~ル!
出番も少なく、主力の休ませ要員として献身的にプレーしてきた田村!!!
チーム戦術が徹底しているからこそのゴールでもあるだろう。

そして1分後には阿部のゴールが決まり5-2。(一瞬画面から目を離していて流れがわからず。すいません)

その後も岩淵のカウンターからのドリブルシュートが決まり6-2!
岩淵キレキレだ。

もちろん相手が疲れてきたこともあるが、総力戦でチームをうまく回してきた監督の功績はとても大きい。
そしてゴレイロの中村、原田も出場。
そしてタイムアップ、6-2で勝利!
5~6位決定戦に駒を進めた。

5~6位決定戦の相手は、地元タイの挑戦を7-1と退けたイングランド。2009年のデフリンピック、ろう者女子サッカーが初めて世界に挑み、『世界の壁』をいやというほど見せつけられたイングランド。いやあの時はグレートブリテンでしたが。

それはともかく、最後は勝利で締めくくって気持ちよく帰国してください。


『デフフットサル女子日本代表』の闘いは続く

2015年11月25日 | ろう者サッカー

一つ前の記事の続編です。

『デフフットサル女子日本代表』が準々決勝イタリア戦でPk戦の末敗れた直後、順位決定戦のことをすっかり失念していました。
事前情報としては知っていましたが、敗戦のショックで忘れてしまってました。 
大変失礼しました。

またチームのことを以前と比較して書き過ぎたような気もしています。 
例えば2009年台北デフリンピックも2013年ブルガリアデフリンピックも、練習を見ていて結果は概ね予想が出来て実際その通りになりました。
今回合宿にはあまり行けませんでしたが、直前合宿などを見てもかなりいいところまで行けそうなのは目に見えていたこと。
そういった意味でも、“今を生きている”彼女たちにむかって、過去との比較で「素晴らしい」と言ったような気もして反省。

彼女たちは既に切り替えて、5~8位決定戦にのぞむ気持ちを作っているようです。

次戦は本日25日16時(日本時間)から。相手はイラン。
是非勝って5~6位決定戦に進み、おそらく勝ち上がってくるだろう世界ランキング3位のイングランドに勝利してほしい。

男子はグループリ−グの最終戦ノルウェー戦。日本時間15時キックオフ。

闘いはまだまだ続く。 


『デフフットサル女子日本代表』準々決勝PK戦で敗れる

2015年11月24日 | ろう者サッカー

ふー、ライブ中継を見ているだけで疲れる試合だった。
タイで開催中のデフフットサルワールドカップ、つい先ほど準々決勝日本vsイタリア戦が終わり『女子日本代表』は残念ながらPk戦で敗れ去った。

悔しい、とても悔しい。
しかし胸をはって帰国するに値する内容だった。デフフットサル女子代表、11人制のろう者サッカーを含めても、歴史上もっとも内容の伴った大会だったと思う。

グループリーグ初戦こそ前回大会優勝国のロシアに0−3と敗れたものの、次戦では世界ランキング4位のスペインを4−3で撃破!見事にベスト8進出を果たした。
そしてむかえた本日の準々決勝。
スターティングメンバーは折橋菜奈、井部、岩渕、阿部、ゴレイロに芹澤。
フィクソの井部が最後尾で全体を絞め、上がった時には菜奈などがカバー 、組織としての守備がきっちり構築されているなかで、岩渕や阿部が積極的にしかける。
元々頼もしかった井部はさらに頼もしくなり、うまいけど粗も多かった菜奈や岩渕は集中力を切らさない、 セカンドメンバーの植松や野崎も懸命に走り回る。野崎の成長は目を見張るものがある。
ゴレイロ芹澤も好守でゴールを許さない。
一進一退の攻防が繰り広げられるなか先制したのはイタリア、左右に振られて一瞬の隙を疲れた。
要の井部や菜奈が抜けている時間帯の失点だった。 しかしこれも致し方のないこと。日本は総力戦で世界に挑む。
9年前、初めてろう者サッカーを見た時に最初の目に止まった大久保 も出場。個人的には感慨深いものがあった。
その後は最年少の宮城や田村、吉原なども出場。大谷、原田の出場は確認出来なかった。控えのゴレイロの中村はベンチで選手たちをささえたことだろう。

現在のチームは先制されても決して下を向かない。逆転できると本気で思っている。
そして井部の同点ゴールが生まれる。
さらには阿部がドリブルで持ち込みシュート、ゴレイロがいったん弾くものの岩渕がこぼれ球につめて2−1と逆転。
こういったこぼれ球につめる動きは献身的というより当たり前のように繰り返されていた。攻守の切り替えの速さも然り。 日本は本当にいいチームに仕上がっている。
前半終了間際にはクロスバーを直撃されるなど危ない場面もあったものの、 2−1とリードして前半を終えた。

イタリアは10番の選手を中心としたチーム。日本の選手は全員が(ゴレイロ以外)が交代を繰り返すが、大黒柱の10番は出ずっぱり。
前線でポストプレーで起点となったり強烈なミドルシュートを放ったりするものの、日本も10番対策は万全のようで井部や菜奈を中心として10番を押さえ込む。 
しかし残り7分ほど、その10番の強烈なミドルシュートが日本のゴールネットを揺らす。 
2−2の同点。
試合はそのまま5分ハーフの延長戦へ。

延長前半、先にゴールを奪ったのはイタリア。DFに当たってコースが変わったシュートが日本ゴールに吸い込まれた。
「もうだめか…」一瞬そう思った。 ごめんなさい。ピッチ上の選手たちは微塵もそんなことは思っていない。
すぐさま阿部のゴールで同点に追いつく。

ここまで交代なしのイタリアの10番が故障で泣きながらベンチへ向かう。交代なしのここまでの出場、敵ながらあっぱれだ。
でも日本には有利か。
しかし延長後半再び治療を終えた10番が出てくる。
まさしく死闘である。

試合は延長でも決着がつかずPK戦へ。
「イク(芹澤)、止めてくれ!」念仏のように心のなかで唱え続ける。

フットサルは3人の選手がPkを蹴る。
先攻はイタリア。左隅に決めた。
日本の1人目は井部。重圧のかかる1人目には適任だろう。冷静にゴール左隅に蹴り込む。

イタリアの2番手、芹澤が触ったものの決められる。
日本の2人目は岩渕。
正面気味のシュートがイタリアのゴレイロに止められる。

イタリアの3人目は10番の選手。満身創意でぼろぼろだ。
その10番が決め、日本のワールドカップが終わった。

悔しい、本当に悔しい。
でも本当にいい大会、いい内容だったと思う。

選手、監督を始めとするスタッフの方々も胸を張って帰国してほしい。
最後にPkを外した岩渕も然りだ。
2013年に開催されたブルガリアデフリンピックでは最も物足りなかった選手だったが、今大会は素晴らしかった。今後さらなる高みを目指してください。 

今大会の結果、そして内容は、以前からろう者(デフ)サッカー、フットサルを見続けてきた立場としても、とても誇らしい。 


男子の大会はまだまだこれからだ。

PS 女子も大会が終わったわけではなく、5~8位決定戦があります。 まずは明日16時(日本時間)、相手はイラン。