日々雑感

心に浮かんだこと何でも書いていく。

朝の通勤ラッシュ・プラットフォーム

2007年11月08日 | Weblog
とにかく急いでいた。この列車に乗り遅れると最終駅に到着するまでには、実に3時間以上も、遅れて着くことになる。私は時間表を見て調べるより、駅員に尋ねた方が早いと思い、駅員を探した。すると
階段を下りた最も混雑ところに、歳の頃、30前後の若い駅員が、すずめのお宿みたいな頭をして、一人突っ立っていた。見るからにぶっきらぼうな感じのする青年だったが、愛想面では、悪評高い国鉄とは違い、乗客にこたえる応対をちゃんと教育されて、サービス精神をたたき込まれた私鉄職員だから、きっと丁寧に分かりやすく教えてくれるだろうと期待して、「伊勢にいくには、どの電車が早いですか」と尋ねた。彼はおおむ返しのような口調で、「普通」とだけ言った。続けて何らかのコメントを期待して待っている私に対して、彼は再び口を開かなかった。答えは、ただ、それだけだった。あまりにも簡単な案内で、あっけにとられて、私は彼の顔をじっと見つめた。彼は身動きもしないで、ただ一点をじっと見つめている。
 気分を害した私は胸くそ悪くなって、反対側に入ってきた電車に飛び乗った。がらがらにすいた電車の座席に腰をかけながら、私は今の出来事を頭の中で反芻してみた。

 「普通」それはまったく正解である。前もって調べておいた時間表でもたしかに、1電車乗り遅れると普通電車で行く以外に手はなかったはずだから、簡単明瞭である。お互いに忙しい身なのだから、正確で、簡単明瞭ならば、それに越したことはないのに、何故腹が立つのか、気分を害したのか、訳がわからないまま、私は駅員が無愛想でぶっきらぼうな返事をした理由を推測した。
 きっと彼は、徹夜マージャンで負けたのだろう。そのとばっちりが私にも当たったのだろう。いやひょっとすると、夫婦喧嘩でもして朝メシ抜きで家をとびだしてきて、いまだに朝飯抜きの状態でいるのかもしれない。あるいは訳もなく不機嫌な状態のところへ、せかせかした私が飛び込んで、彼の癇に触ったのかもしれない。

 いろいろ考えを巡らすことは、興奮した時に飲むコップ一杯の冷水の役割をするのか、私のかっかした頭のボルテージは下がり始めた。そしてほどなくして、私は人には、おのおの他人にはわからない事情というものがあると考えるようになった。彼には彼なりの、私には私なりの、ただそれがうまくかみ合わなかっただけの話である。だからそんなに目くじらを立てるほどの事柄ではないと、物わかりが良くなった自分を発見した。忙しい歳末のある私鉄ターミナルにある駅の朝のプラットフォームでの、1コマである。
まもなく正月、今年も大過なく無事に、くれようとしているとしている。