日々雑感

心に浮かんだこと何でも書いていく。

泉北狐

2009年10月10日 | Weblog
泉北狐

池があったり、小高い丘があったりした時分はこの地域は動物たちの格好の住み処であった。鉄道が敷かれ、その下を車がひっきりなしに走る。
物音ひとつせず、たまに吹く風の葉音のみが、唯一の騒音だったのに、いったいこれはどういうことだ。昼と言わず、夜と言わず、ワーンと地鳴りがしている
このワーンには切れ目がなく、大小とりまぜた車の洪水の音である。
これだけ通ると狐はノイローゼにならざるを得ない。

世の中えらく変わってしまったなぁ。これから先一体どうなるのだろう。

泉北陶器山にあった住み処を人間に奪われた泉北狐はひとりでつぶやいてとぼとぼと安住の土地を求めて小走りに走り出した。終の棲家を探すために。

ひょっとしたら人間に占有されて自然が開発され、永遠に住み処が無くなっているかも知れないが。それでも生活の場を見つけなければならない。キツネは途方に暮れた。

「ふん。共生だなんてうまい言葉で俺らをだましやがって」キツネや狸が人間をだますというのは判るが、人間が狐や狸をだますなんて。世の中ひっくり返ってしまっている」。

ぼやいてはみたものの良い智慧は浮かばず、すごすごと闇の中に消えていった。