日々雑感

心に浮かんだこと何でも書いていく。

秋たけなわ

2009年10月22日 | Weblog
秋たけなわ

大阪のメインストリートは御堂筋で、路の両側はイチョウ並木になっている。
その御堂筋と交差する通りに周防町がある。

その周防町の並びにエフという名の喫茶店がある。12月も年末におしせまった
ある日、私は、Mさんとここで待ち合わせをした。そのエフ店の女経営者はその昔、
Mさんと、懇ろだったという話だった。

彼女は金縁の眼鏡をかけていたが、それが上品な顔立ちにとても良く似合っていたし、履いてた黒の、ビロードのスカートがなんともいえず清楚な感じで、とても水商売の女経営者には見えない。どこか山手風の感じのする人であった。当時50歳そこそこの年齢ではなかったかと思う。

Mさんは、昔金持ちのボンボンであった。金にあかせて、いろいろな遊びや道楽をしていたので、やることがなかなか粋であったし、世間の裏表をよくしっていた。そして、彼は二号さんや二人の子供と暮らしていたが、 ある日まったく突然、ポックリ亡くなった。
兆候は全然無くはなかったのであろうが、ひた隠しに隠していたのであろう。

私には彼が死ぬ人なんて、とても予想だにできなかった。しいてあげれば、彼はよく酒を飲んだ後に、[酒が飲めない位なら死んだほうがましだ。」と言っていた事くらいである。

今から考えれば、それが伏線になっていたのかもしれない。しかしいずれにせよ、彼は、自説を地で行ったいた人である。死因は酒の飲みすぎによる肝硬変だった。彼はまたこうもに言っていた。

[人間的に感情の通いあいがない妻と、名目上の夫婦関係を保つよりも二号さんと暮らしている方がよほど幸せだ。大声を張り上げて怒鳴りあってよく喧嘩もするが、それでも感情の通いあいがあったから、またすぐ元の中に戻った。夫婦模様とはこんなものかな。]
僕は当時20代で、まだ結婚していなかったので、夫婦の人間模様など全くわからなかった。
僕はじっと耳を傾けて彼の説を理解することに努めた。50代には50代の知恵がありに20代には20代の知恵がある。

、昨日久し振りに御堂筋から周防町あたりをうろついた。エフ店は、人通りが多いにもかかわらず、ひっそりしていた。あの上品な彼女は、とうの昔に70歳を越しているだろう。ひょっとするとMさんの後を負うようにして、既に他界しているかもしれない。

コーヒーカップから流れて来るあの当時の匂いにふれて当時の雰囲気を感じながら、20年昔のMさんとの会話を思い出した。
物思いにふける秋たけなわである。御堂筋のイチョウは、風に吹かれて散っていく。