11月3日のことと聞いた。大好きな作家のひとりだった。何事も飾らず、ひょうひょうと描き続け造り続ける姿は忘れることができない。身の回りにあるモノは、何でも作品の材料となった。その場にあるモノと状況で次々に新しい作品が生まれていった。ある時は木片、ある時は石ころ、ある時はボンドなどなど。この人にかかれば、時間も空間も自由自在だった。
初めてこの人のことを知ったのは、ずっと以前のこと。宮崎市内で行われたパフォーマンスの時だ。白い壁に太い針金がくねり、その先端に一個の電球が取付けられた。そして灯りがともった。針金は電気のコードだったのだろうが、みるみる作品ができ上がっていくのは、見ていて気持ちよかった。そしてその時、氏から参加者へ思わぬプレゼント。それぞれの似顔絵がプレゼントされたのだ。A3程の西洋紙にクレパスでさっと描かれたものなのに、その人その人の本質が見抜かれていた。もちろん私も描いてもらった。
今、私の作業場の本棚に、黒い背表紙の「堀尾貞治80年代の記録」という本がある。その表紙をめくると、一枚の絵が貼付けてある。印刷ではなく、一枚一枚描かれたものだ。氏の行為の痕跡である。こういう風に、何事にも束縛されず自由であるといい。そういう意味では、氏は人生の先導役だったのかもしれない。この絵をここに載せて、氏の冥福を祈りたい。堀尾さん、ありがとう!