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ウィリアム・モリス展


現代はものにあふれている。100円ショップに行けば大概のものは手に入る。これでもかこれでもかというように、ものが増え続けている。そしてゴミも・・・。それも、人類史を超える寿命を持つ核のゴミまで・・・。

名前にひかれて「ウィリアム・モリス展」へ出かけた。宮崎県立美術館だ。ウィリアム・モリスという名前は、「アーツ・アンド・クラフツ運動」という言葉とともによく知っていたが、実際に作品を見るのは初めて。
18世紀後半にイギリスから始まった産業革命の結果、社会には工場で大量生産されたものがたくさん出回るようになった。そのため職人は職を失い、手仕事の美しさも失われていった。それではダメだとして、アーツ・アンド・クラフツ運動(美術工芸運動)の中心にいたのがモリスだった。そのため、「モダンデザインの父」と呼ばれる。日本の時代で言えば、おおよそ幕末から明治の初め頃に活躍した人だ。

展示作品を見ながら、浮世絵を思い浮かべることとなった。同時代に制作された椅子やランプの作品もあったが、見入ったのは壁紙。あしらわれていたのは、イギリスの自然の植物や鳥だ。唐草模様的に図案化された植物を下地に、くり返し配置された鳥の壁紙の他、柳がデザイン化された壁紙など。中でも柳の壁紙は、ゆるやかに曲線を描く茶の茎と、細長い葉っぱの濃淡の緑が流麗で美しかった。そして、それらの壁紙の刷りが素晴らしいのだ。紙に木版の色刷りだ。浮世絵の他にもこんなにすごい刷り物があったのだと思った。壁紙だから浮世絵よりずっと大きい。それらは競って買い求められたという。
浮世絵は版元があり、絵師が居て、彫り師が居て、刷り師が居て成立した。壁紙も同じだ。製造元があり、デザイナーがいて、彫り師や刷り師がいた。製造元の名には、モリス商会などが読み取れた。デジタル社会になり、職人の仕事ですら数値化される現代だが、人間の手が生み出すものは、どこか柔らかさや優しさがある。失ってはいけない世界だ。
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