2000年から2005年の5年間は、第何次かの「ベンチャーブーム」でした。
その背景として、日本経済の活性化や健全な発展には、優良で多数のベンチャー企業育成が不可欠であるとされた。ネットの普及や公共政策がその後押しをした。そして、多くの若者が起業に憧れ、果敢に挑戦するユニークな事例が出てきました。
さらにその根底には、バブル崩壊後の失われた10年を脱却して、新しい産業を育成しないと日本経済は再生しないという国民全体の危機感があったように思います。社会全体として、ベンチャーを応援しようという温かくかつ友好的な雰囲気があった。
2006年初頭に一部の不心得者集団によって、そうした流れは大きく失速してしまいました。そして、すべてのベンチャー企業が同一視されるようになり、とにかく業績不振や下方修正した企業は皆悪者と非難されるようになりました。
ベンチャーのベンチャー企業たる所以は、大企業では決してできないような新しい領域に対して、一か八かの挑戦をすることが信条であり、その結果、成功すれば急激な業績拡大が見込める一方で、失敗すれば、一挙に大赤字となる。
こうしたダイナミックな経営スタイルこそが、ベンチャーの醍醐味のはずであり、その後ろ盾として個人投資家には大いに貢献いただきました。そのような日本における挑戦型社会構造の端緒が、残念な不正行為の露呈によって、一挙にしぼんでしまいました。
そして、まじめに挑戦してきた結果として図らずも業績悪化を招くこととなった志あるベンチャー企業も、不正によって市場退場させられた企業などと一緒にされてしまうことになる。
その後、2000年代後半の世界経済危機に際して、最近ではベンチャーへの期待や支援の話はほとんど聞かれることがなくなってしまいました。これは大変残念かつゆゆしきことかと思っております。
確かに足元の経済情勢を見れば、アジアの成長を取りこむべく、大型のインフラビジネスなど、ベンチャーにはとても扱えない大企業ならではのビジネスモデルが重要かもしれない。しかしながら、もっともっと長い目で見た時、資源の乏しい日本が低炭素社会においていかに国力を増大させていくかとなると、現状の産業構造のままで良いはずはない。むしろ産業構造の転換は不可欠なのではないだろうか。
では、どういう産業構造に長期的に変革していくべきか?その正解はまだ誰にも見えていない。だからと言って、手をこまねいていていいものだろうか。
私は今こそもっと新しい産業分野や企業が生まれてくるような土壌づくりを地道にしていかねばならないのではないかと思う。
ベンチャーブームと呼ばれるように多少の波があるのはやむを得ないが、根底に一貫したベンチャースピリットの醸成をしていく覚悟と信念が必要ではないか。
ただでさえ農耕民族的な日本人気質は、ベンチャースピリットに欠けるとされてきた。もういい加減そうしたレッテルを払拭したいものである。
経済不況期の今こそ、ベンチャーブームの再燃を期す!