大樹の上の小さな住人

2013-06-09 22:40:54 | 哺乳(Mammals)


ボルネオコビトリス(Exilisciurus exilis) Least Pygmy Squirrel


ダナンバレーのロッジの周りでは、真昼間でも哺乳類が結構見られる。
この時も丁度カニクイザルの群れがロッジのすぐ横を通過するタイミングで、ガサッガサッと木から木へと器用に飛び移っていた。
アカハライモリのような配色のミケリスがロープをつたってスルスルとやってきたかと思うと、私に気付いて身を翻し、走って木へよじ登った。
すぐ近くで気配がして、キツツキかと思って振り返れば、小さくて可愛いボルネオコビトリスが私からほんの3メートルほどの木の幹にいて、何をするでもなくボーっとしていた。余計可愛い。








スイロク(Cervus unicolor) Sambar


夕方。1人でメインロードを歩いた後、暗くなってきたのでロッジに引き返そうとすると、私の前に2頭のスイロクが立ちはだかった。スイロクは水鹿と書き、体格もニホンジカぐらいある。
どうやらこのスイロクはロッジの方向に向かっているようで、私はスイロク達と一定の距離を保ちながら歩いた。
後でわかったことだけれど、スイロクは毎晩大勢でロッジの草地へ食事に行くのだ。宿泊客の殆どはこのことに気が付いていない。

ダナンバレーのナイトサファリは、トラックの荷台に乗って行う。
オフロードをお構いなしに進む四駆のトラックの荷台は、状態の悪いオフロードを行けば行くほど大きく揺れて、さながらテーマパークのアトラクションだ。
ナイトサファリのメインターゲットは夜行性の哺乳類で、数回乗った私はスローロリス、
オオカカムササビ、オオマメジカなどを見た。



【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/31th Dec, 2012】


an unknown bird

2013-06-08 23:09:39 | 鳥(Birds)


クロアゴヒメアオヒタキ(Cyornis caerulatus rufifrons) Large-billed Blue Flycatcher/female


クロアカヤイロチョウを見た興奮が冷めやらぬままに暗いトレイルを歩いていた私は、とある鳥を見て一気にクールダウンした。Blue Flycatherであることははすぐに見て取れたが、種まではすぐに分からなかった。
例え海外での鳥見でも、ちゃんと予習さえすれば見た瞬間に殆どの鳥はわかるけれど、たまに自分の辞書に載っていない鳥が出ることももちろんある。

こういう鳥のことを人は「ワカンネードリ」とか「クエスチョンドリ」など呼び、仲間内でああでもないこうでもないと議論を醸す。このワカンネードリの出現も鳥見の醍醐味の一つで、答えに辿り着いた時はとても嬉しい。しかし分かるまでは延々と頭を悩ませ眉間にはシワがよりっ放しになる。

さて、上の写真の鳥がこの時見たワカンネードリ。
ジズはボルネオヒメアオヒタキの雄の幼鳥または第1回冬~夏羽だった。理由は喉の橙色が腮まで達していたことと、背面は青色だが頭部は茶色で、体形や止まり姿もマレーシアヒメオヒタキとは違ったからである。
しかし識別が怪しい鳥をフィールドで断定してしまうのは危険だと思い帰ってからよく考察してみた。
Blue Flycatcherの中でミヤマヒメアオヒタキ、コビトヒメアオヒタキ、マングローブヒメアオヒタキは生息域が違うため頭の隅には置いてはおくが選択肢から外して考える。マレーシアヒメオヒタキは先述の通り違うとして、残りはボルネオヒメアオヒタキかクロアゴヒメアオヒタキとなる。
両者の幼鳥は頭部にコサメビタキの幼鳥のような顕著な鱗模様がある(クロアゴヒメアオヒタキの幼鳥に関しては下嘴の大部分が黄色になる)ため、考えられるのは雄の第1回冬~夏羽か、またはクロアゴヒメアオヒタキに関しては亜種C. c. rufifronsの雌ということも考えられる。
しかし私の持つフィールドガイドのBIRDS OF BOREO(Susan M., 2009.)にはクロアゴのrufifrons雌は喉から腮にかけてが白く描かれていた。これは私がはじめボルネオヒメアオヒタキと思った理由だった。
ここで背面の青色に注目すると、雄成鳥の青味よりも明らかに控えめな青色であることに気が付く。コルリのような青だ。ボルネオヒメアオヒタキやクロアゴヒメアオヒタキの雄は背面が茶色の幼羽から換羽する際には鮮やかに青い成鳥羽がモザイク状に出現するため(三列~初列は除く)、このように一様に鈍い青色になるとは考えにくい。
そんな時、ロッジの売店で何気なく、私の持っていないPhillipps' Field Guide to the Birds of Borneo(Quentin P., 2012.)を立ち読みしていると、クロアゴヒメアオヒタキのrufifronsの雌の背面は一様に暗青色に描かれているではないか(喉の色はちゃんと見るのを忘れた)。
やっとこれで殆ど解決と思いきや、写真の個体は足が肉色をしていることに気が付いてしまった。これではここまで考えてきたことが総崩れとなってしまう。BIRDS OF BOREOにはBlue Flycatcherの足は皆黒色に描かれていたからだ。
けれど色んな画像を見ているうちに、クロアゴヒメアオヒタキに限らずヒメアオヒタキ類の足の色は黒~肉色までバリエーションがあることが分かった。まったく、これが図鑑を全部信じてはならない良い例だ。
嘴は大きく太め、頭部は褐色。腮から下尾筒までは淡橙色、このうち胸は橙色味が強く腹は白色味がありこのコントラストがある。背面は肩羽~大雨覆まで暗青色、三列~初列は褐色で暗青色味が少しあるようにも見える。尾羽下面の色は前ボケのため不明。
結局のところ、クロアゴヒメアオヒタキの雌成鳥ではないかと私は思う。




キムネハナドリモドキ(Prinochilus maculatus) Yellow-breasted Flowerpecker


キムネハナドリモドキは胸から腹が黄色でそこに緑の縦斑が入り、結構綺麗な鳥。頭頂には良く見るとオレンジのパッチがある。ハナドリの仲間は頭頂にだけ赤やオレンジがあるものが割りと多い。




オオキミミクモカリドリ(Arachnothera flavigaster) Spectacled Spiderhunter


こちらはオオキミミクモカリドリ。アイリングは顕著に太く、耳の黄色いパッチも端がまとまってばらけない。
キミミクモカリドリと比べてみると違いが良く分かる。




ルリノドハチクイ(Merops viridis viridis) Blue-throated Bee-eater


歩いてロッジへと戻る頃にはもうお昼になっていた。
フライングキャッチをするタイプの鳥にとって電線は良い止まり木になる。
この時はルリノドハチクイとリュウキュウツバメがいた。リュウキュウツバメは連続飛翔で虫をとるが、休息をかねてフライングキャッチ式の採餌をする時もある。




リュウキュウツバメ(Hirundo tahitica javanica) House Swallow

【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/31th Dec, 2012】


暗い森の底を跳ねるガーネット

2013-06-07 22:24:55 | 鳥(Birds)


クロアカヤイロチョウ(Pitta ussheri) Black-and-crimson Pitta


今日は朝から晴れていて、気温も高い。雨季の今、この状況はとても貴重なグッドコンディションだ。
キャノピーウォークウェイから降りてしばらくメインロードを歩くと、ふいにすぐ近くの藪から少し儚げな声が聞こえてきた。
「ヒューーーーィッ」
これを聴いた私は車に轢かれそうになった猫みたいにビクっとなって固まり、そしてこみ上げてくる、はやる気持ちを精一杯抑えて自分を落ち着かせた。危なくこの鳥の名を叫んでしまうところだった。
スローな動作でその場にしゃがみ込む私。
一定の間隔で鳴くsongを聴きながら待っている時には震えがおさまらなかった。
しばらくしてふいに、込み合った藪の中に横たわる倒木の上に鳥のシルエットが上った。
クロアカヤイロチョウだ....!
まず双眼鏡でこの鳥を見た私は、あまりの美しさに絶句した。
上背は深いガーネット色の紫、その色は背や三列に至るまでにはグラデーションで藍色、深い青色へと変わる。雨覆にかけてその青色が急激に淡色になると同時に金属光沢を帯び、炎色反応をも思わせる羽色となっている。胸から下尾筒にかけては深紅が覆い、高級感さえ醸し出す。

このピッタは以前、後頭が赤いムラサキヤイロチョウと同種で別亜種の関係だったが、近年別種になった。
Noisy, Blue-wingedに続き、このピッタは私の人生の中で見た3種目のヤイロチョウとなった。 



【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/31th Dec, 2012】


キャノピーの鳥

2013-06-06 23:48:39 | 鳥(Birds)


モリアオゲラ(Picus puniceus observandus) Crimson-winged Woodpecker


クビワヒロハシを見ていたら、木の下の方から今度はモリアオゲラが上って来た。
私の目線の高さほどまで来るとピタリととまり、それからここに蟲がいそうダナと言わんばかりに同じあたりを何度も小突き始めた。
たまに黄色の冠羽が開いて後頭がとんがる。





舌を駆使して蟲を深追い中



【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/31th Dec, 2012】


鳥の目線で見るジャングル

2013-06-05 20:31:08 | 鳥(Birds)


クビワヒロハシ(Eurylaimus ochromalus) Black-and-yellow Broadbill


ボルネオ3日目。ロッジで早めの朝食をとった後、6時半から鳥見を開始する。
6時から丁度明るくなり、30分後には鳥が探せるぐらいの明るさになる。朝のジャングルからは実に様々な鳥の声がして、時おりカサコソと葉を揺らして動く鳥影が見える。
「ビッ!ビビッ!」と鋭い地鳴きを発して飛んでいったコクモカリドリは、昨日ロッジの植え込みの花に来ていたのも見たけれど、あまりにも動きが速くて双眼鏡で追うのがやっとだ。コクモカリドリは動きは速いがすぐに全身を現してくれるので観察自体は容易。
しかしこの森で特に見づらいのがBabblerの類。彼らは、ただででさえ暗い熱帯雨林の、さらに暗い林床やブッシュの中が大好きで、なかなか姿を見せてくれない。体色も茶色やグレーを基調とした種が多くて背景に溶け込みやすいがために、識別も厄介だ。
唯一救いなのはBabblerの仲間は鳴き声が大きい種類が多いことである。だからまず鳴き声で識別して、声を発している場所のブッシュを丹念に双眼鏡で見ていると1秒ぐらいは姿を見せてくれることがあるから、そこですかさずものにするのだ。
この時も潜行性の強いアオメモリチメドリとセアカマルハシ、ズアカチャイロチメドリをやっとの思いで見た。

1人で歩いたら絶対迷いそうなトレイルの途中に突如階段が現われた。
その急な階段は樹冠の足場へと続いていて、そこから背の高い樹と樹の樹冠を狭いつり橋で繋ぐ「キャノピーウォークウェイ」が始まる。
キャノピーはこれまでも同ボルネオのグヌン・ムルやポーリンで何度か経験があったから、もうつり橋を渡る時の恐怖心は無かった。つり橋を渡る私から恐れを取り除いたら、後には好奇心と、樹の上層を歩きながらにして見渡せているという不思議な感覚が残った。まさにこの熱帯雨林の樹冠部に生息する鳥達がいつも見ている景色なのだ。
樹冠の足場部でしばらく静かにしていると、鳥の気配が結構する。
そのうち直線的な軌道で飛んできて、私のほんの目の前にとまったのは、おとぎの国から抜け出してきたかと思うほどコミカルな色と形をしたクビワヒロハシだった!マンウォッチングにでもやってきたのだろうか。
そして間もなく、とても嬉しい出来事が起こった。
なんと私が見ている前で、「ピュー、ピューピューピューピュピュピュピピピピピピピピピ......ッッ!」と段々リズムが加速していくトンデモナイさえずりを始めたのだった。このsongは一度聴いたら忘れられないほどに印象的だ。











【Danum Valley, Borneo, Malaysia(ボルネオ,マレーシア)/31th Dec, 2012】