姉の電話は長い。
人の話は聞かないで一人でしゃべり続けて2時間半。
ひたすら聞き続ける私は少々疲れる。
話はあちらに飛び、こちらに飛び、最初の話から相当それまくる。
前に聞いた話も毎回出て来るが、私は初めて聞いたかのように相槌を打つ。
彼女は認知症とかではない。若い時からこの調子である。
なので私は聞くに徹する。
私には姉と弟、義理の弟妹がいるが、幼い頃から辛苦を共にして来たのはこの姉だけで、他の3人の現在の消息は知らない。
何かの時に親を頼れない私達は、子育ての時期はお互い近くに住んで助け合った。企業戦士だった私たちの夫は家にいなかったので。
私も姉も若くして夫を病気で失い、姉は20数年前に大病をし、私も癌になった。
子供の頃に筆舌に尽くせぬ苦労をして、結婚してからもお互い似たような境遇になって、姉妹で何でこんなに辛い思いをするのだろうか?とも思った。
キレイ好きだった姉は物で溢れた家で生活し、片付けが下手で姉に叱られていた私はスッキリとした生活空間を好むようになった。
信心深い姉に比べて、私はそういうところはちょっとドライだ。
色々似ていて、でも、ちょっと違う。
もし姉がいなくなったら寂しいだろうなって思うから、私は彼女の長い話も、いつか聞いた同じ話も聞き続ける。