歳をとるにしたがって、時間の流れが加速しているように感じていた。
それは、何を見ても既視感が起きて興味を持つことが少なくなったためだろうと思っていた。
しかし、つい最近、そうではないのだと考えるようになった。
生物の仕組みは歳をとるにしたがって時間が速く過ぎさると感じるようにできているのである。
分子レベルで生物の体内で進行していることが少しずつ解明され、
1日のリズムを刻む生物時計の化学反応も発表されている。
月と連動した生物のリズムや渡りなどの年周期はよく知られている。
ひと月分のカレンダーや1年分のカレンダーも当然体内にあるはずだ。
そして、過ごしてきた人生の時間と結びつけられた年表も蓄えられている。
生物は老化とともに、化学反応速度が遅くなり、体内時計の時の刻み方も「遅れ」だす。
老化とともに、体内時計の回転が速くなるのではなく遅くなるのだ。柱時計はいぜんと同じ時を刻んでいる。
自分の体内時計で15時間しかたっていないのに、柱時計はすでに24時間経過したことを示しているから、
時間があっという間に過ぎたように感じるのである。その結果はカレンダーや年表にも影響を与える。
老齢化とともに起きる時の加速は、「そう感じる」のではなく「事実」なのである。
それほど遠くない未来に、カレンダー遺伝子も発見されるに違いない。