ケイはフードをはずし、メイに近づいた。
「まあ、やっぱりあなただったのね。こん
なところで会うなんて、いったいどうしたこ
とでしょう。あなたのおばあさま、ずいぶん
ご心配なさっていたわよ」
「わかってるわ」
「もう家には寄ったんでしょ」
「ああ、まあ。用があって」
「ほんとう?わたしにはうそついたらいや
だわ」
「ちょっと近くを通りかかったのよ。そし
たらあなたたちったら、雪合戦なんてやって
るじゃないの。驚いたわ。わたし、ふいに子
どもの頃を思い出しちゃってね」
ケイはなかば涙声になった。
「もう今までどうしてたの、なんていわな
いわ。今が今良ければそれでいいわ。いっしょ
にやりましょう」
「うん。ありがとう、メイ」
久しぶりに会って、メイはケイと子供のよ
うにたわむれ始めた。
抱き合ったり、雪の上をころがったり。
しかし、ニッキの胸中は穏やかではない。
(ケイだって?ケイがなんだってこんなと
ころに今頃やって来るんだ)
ニッキはいそいで、ケイについての情報を
頭の中から引きだそうとした。
森の中で数日行方知れずになってからとい
うもの、ケイは様子がおかしくなったらしい。
気の毒なことに、彼女は黒い円盤にさらわ
れてしまい、脳に何らかの手術を施されたら
しいことが判明していた。
もはやケイは地球防衛軍にとっては敵でし
かない。
それを認めることには、ニッキもためらい
があった。
ケイはほとんどロボット同然。
敵の思うように操られていた。
(同情すべき点があるにはあるが……)
ニッキはなんとかしてケイを打ち負かさな
くてはなるまいと思った。
ケイとメイが雪合戦に興じている間に、ふ
とした瞬間に、ケイの左手がニッキの腰の拳
銃にのびた。
「すき、ありよ」
メイは大声をだした。
両手ですくった雪を、あろうことか、ニッ
キの顔面にあびせかけ始めた。
「こ、こら、メイちゃん。どうしてこんな
ときに。ケイがねケイが……」
「ケイちゃんがどうしたの」
ニッキは目といわず鼻といわず、雪まみれ。
ろくに話もできない。
たまらず、ニッキは降り積もった雪の上に
這いつくばるしかなかった。
「こうさん、降参。もうかんべんして」
ニッキは白旗をあげた。
「だあめ。許してあげない」
ケイの声だった。
メイとケイ。
ふたりして、攻撃されてはたまらない。
たちまち、ニッキの体は雪だるまになった。
またもや、ニッキの腰のあたりがもぞもぞ
する。
ケイはニッキの銃をとるのを、あきらめて
いないらしい。
そう感じたニッキは、渾身の力をふりしぼ
り、雪からの脱出をこころみた。
「ねえ、メイちゃん。ニッキって、まだ降
参してないみたいよ。もっと雪をかぶせてあ
げましょうよ」
ケイがそそのかすと、メイは、
「そうね。でも、なんだか、かわいそう」
「遠慮なんてしないでいいのよ。子どもの
わたしを、さんざんにいじめたんだから」
「あら、そうだったからしら?いじめたん
じゃなくってよ。あなたがわたしをいじめる
のを、とめようとしただけじゃない」
ニッキは動くのをやめた。
メイとケイの話に、しばらく耳をかたむけ
ることにした。
変に感情的になって、おのれをさらけ出し
ては、ケイの背後にいるほんものの敵に、弱
みをつかまれることになってしまう。
ニッキはそう感じた。
「まあ、やっぱりあなただったのね。こん
なところで会うなんて、いったいどうしたこ
とでしょう。あなたのおばあさま、ずいぶん
ご心配なさっていたわよ」
「わかってるわ」
「もう家には寄ったんでしょ」
「ああ、まあ。用があって」
「ほんとう?わたしにはうそついたらいや
だわ」
「ちょっと近くを通りかかったのよ。そし
たらあなたたちったら、雪合戦なんてやって
るじゃないの。驚いたわ。わたし、ふいに子
どもの頃を思い出しちゃってね」
ケイはなかば涙声になった。
「もう今までどうしてたの、なんていわな
いわ。今が今良ければそれでいいわ。いっしょ
にやりましょう」
「うん。ありがとう、メイ」
久しぶりに会って、メイはケイと子供のよ
うにたわむれ始めた。
抱き合ったり、雪の上をころがったり。
しかし、ニッキの胸中は穏やかではない。
(ケイだって?ケイがなんだってこんなと
ころに今頃やって来るんだ)
ニッキはいそいで、ケイについての情報を
頭の中から引きだそうとした。
森の中で数日行方知れずになってからとい
うもの、ケイは様子がおかしくなったらしい。
気の毒なことに、彼女は黒い円盤にさらわ
れてしまい、脳に何らかの手術を施されたら
しいことが判明していた。
もはやケイは地球防衛軍にとっては敵でし
かない。
それを認めることには、ニッキもためらい
があった。
ケイはほとんどロボット同然。
敵の思うように操られていた。
(同情すべき点があるにはあるが……)
ニッキはなんとかしてケイを打ち負かさな
くてはなるまいと思った。
ケイとメイが雪合戦に興じている間に、ふ
とした瞬間に、ケイの左手がニッキの腰の拳
銃にのびた。
「すき、ありよ」
メイは大声をだした。
両手ですくった雪を、あろうことか、ニッ
キの顔面にあびせかけ始めた。
「こ、こら、メイちゃん。どうしてこんな
ときに。ケイがねケイが……」
「ケイちゃんがどうしたの」
ニッキは目といわず鼻といわず、雪まみれ。
ろくに話もできない。
たまらず、ニッキは降り積もった雪の上に
這いつくばるしかなかった。
「こうさん、降参。もうかんべんして」
ニッキは白旗をあげた。
「だあめ。許してあげない」
ケイの声だった。
メイとケイ。
ふたりして、攻撃されてはたまらない。
たちまち、ニッキの体は雪だるまになった。
またもや、ニッキの腰のあたりがもぞもぞ
する。
ケイはニッキの銃をとるのを、あきらめて
いないらしい。
そう感じたニッキは、渾身の力をふりしぼ
り、雪からの脱出をこころみた。
「ねえ、メイちゃん。ニッキって、まだ降
参してないみたいよ。もっと雪をかぶせてあ
げましょうよ」
ケイがそそのかすと、メイは、
「そうね。でも、なんだか、かわいそう」
「遠慮なんてしないでいいのよ。子どもの
わたしを、さんざんにいじめたんだから」
「あら、そうだったからしら?いじめたん
じゃなくってよ。あなたがわたしをいじめる
のを、とめようとしただけじゃない」
ニッキは動くのをやめた。
メイとケイの話に、しばらく耳をかたむけ
ることにした。
変に感情的になって、おのれをさらけ出し
ては、ケイの背後にいるほんものの敵に、弱
みをつかまれることになってしまう。
ニッキはそう感じた。