真実が語られる九章~十章です~。
九章-1「ホワイトパールの泡沫恋慕」
妃が自ら消えてしまったことで、またも心を痛めた夜子。クリソベリルは彼女を救うには彼女の過去を知る必要があると瑠璃に言い、一冊の魔法の本を開かせます。その本は「ホワイトパールの泡沫恋慕」。遊行寺夜子の過去が分かるという本でした。しかし、それは全て事実ではなく、ある辛い真実を隠すための幻が入り込んだ本でもあります。つまり、この本で語られることが全て事実ではないということです。
先ずは闇子のことが語られています。遊行寺家へ嫁いできて周囲から色々言われたが当主の夫が守ってくれたことで幸せだったこと、自分の知らぬ間に夜子が迫害されていたこと、闇子が夜子を守るために黒き魔法の本を開いていたこと、その行為によりますます夜子の立場が悪くなってしまったこと、更にこれまでずっと守ってくれた遊行寺家当主である夫からも敬遠され図書館暮らしになったこと、夜子のために理央を作ったこと、本家から手に負えないと汀がやってきたこと、汀は夫の不倫相手の息子であること、全てを諦めて夜子のためだけに生きようと決めたこと・・・。
その後は瑠璃と夜子の出会いの話が語られます。瑠璃の初恋が夜子であることも。お互い初恋同士で結ばれ幸せになるはずが、夜子が自分から離れることを恐れた闇子によって2人の恋は引き裂かれてしまいます。魔法の本を使って。挙句に妃の淡い恋心を利用して夜子と瑠璃の普通の恋愛を兄妹の禁断の恋にすり替えてしまうとか・・・これがもしも本当のことなら闇子はかなり自分勝手な人間ってことになりますが・・・ここは話に違和感のある部分なので、幻ということになりますね。この直後、その指摘をかなたがしますけど。
瑠璃はホワイトパールの本が語る過去を受け入れようとしますが、しかし、かなたはこれが真実ではないと主張します。これがもし本当なら、1年前、瑠璃は幻想図書館に招かれることはなかったこと、図書館に住むようになってからは夜子との関係を取り持とうとしていたことなど、本の中で語られる闇子の気持ちとは正反対なことばかりしているからです。
一方、瑠璃をかき乱して満足気味なクリソベリルは闇子が遺した物語「パンドラの狂乱劇場」の本を開きます。すると、ページが破られており、困惑します。妃エンドを除けばクリソベリルが初めてあのイラッとする嗤い以外の表情を見せた瞬間でしたね。ホワイトパールの語る過去が真実かどうか・・・それを調べるかなたは、妃の部屋で一通の手紙を見つけます。それは妃から瑠璃に宛てた手紙でした。その手紙に書かれた場所・・・廃教会に行った瑠璃とかなたは、破られたパンドラのページを見つけます。そして・・・妃との束の間の邂逅を経て、再びクリソベリルと対峙。そこで、クリソベリルに破れたページを返すかどうかの選択肢が現れます。
九章-2「ファントムクリスタルの運命連鎖」
破られたページを返した場合、「ファントムクリスタルの運命連鎖」となります。そして、パンドラのページを戻すクリソベリルですが、まだ1ページだけ欠けていることに気付きます。そう、妃だけではなく、理央もまたパンドラの存在を知り、ページを破っていたのです。その破った1ページは理央にとって許せないものだったから。「四條瑠璃が遊行寺夜子を好きになる」・・・瑠璃の初恋もまた本によって書かれていたものでした。でも、瑠璃の気持ちを知った理央はクリソベリルに対し、この破ったページはもう必要ないと言い、クリソベリルの元にページを置いていきます。クリソベリルもまた瑠璃の気持ちを信じ、表舞台から姿を消すことにします。
その後、瑠璃は夜子に告白しますが、夜子に拒絶されてしまいます(というか逃げられる)。瑠璃の本心を確かめるために夜子は魔法の本「ファントムクリスタルの運命連鎖」を開きます。これは主人公にとって都合の良い自分を見せる本。自分と正反対の性格の自分になり、瑠璃を騙して試そうとします。瑠璃は突然性格が変わった夜子に戸惑い本の仕業ではないかと疑いますが、もしかしたら本当に自分を変えようとしているのかもしれないと静観することにします。
そして、夜子とのイチャラブが続いたある日の夜、夜子は瑠璃を外へ誘い出し、瑠璃の本心を聞き出し、ネタばらしをします。瑠璃が好きになったのは本によって変わった夜子であって、本当の私を好きになったわけではないと・・・。瑠璃はそのことにショックを受けますが、自分自身が最初に抱いた気持ち・・・夜子を幸せにしたいという気持ちを思い出し、開き直って夜子に自分の想いをぶつけます。
告白への返事が出来ずまたも逃げ出す夜子ですが、かなたによって図書館に鍵をかけられ、逃げ場を失った夜子は「あたしはキミのことが大嫌い、それでも傍にいてくれるなら全然別に構わないから」と大よそ素直じゃないOKの返事をします。なんかもう、本当ツンデレを超えたツンデレな女の子ですねw 恋人同士になった後の夜子のデレっぷりはハンパねぇですw 可愛いw 最後も幸せな結末でしたしね。本の上での幸せってことなんですけど、理央編や妃編に比べたら何万倍も良い終わり方だったと思います。
破られたページを読んだ場合、物語は正規の方向へ向かいます。
夜子エンドみたいな終わり方でいいから、理央エンドもそうしてほしかった(つд⊂)
十章「オブシディアンの因果目録」
ついに語られる真実。先ずは汀のことから。汀は遊行寺家当主と浮気相手との間に出来た子ども。これはホワイトパールと同じ。そして、当主は闇子ではなく浮気相手が元々本命だったが結婚を反対され遊行寺家と密接に関わる家系である神宮寺家の闇子と結婚することになりました。これは闇子視点のホワイトパールでは書かれていなかった真実です。そして、産まれたのが夜子でしたが、白髪赤目は遊行寺家にとって“呪われた赤ん坊”でしかなく、前当主である祖父は夜子を殺そうとした・・・ここもまぁホワイトパールと同じです。そこからは闇子と夜子が島流しにされたこと、2人が居なくなったことで再び汀が疎ましく思われるようになり2人と同じ島へ飛ばされたことなどが語られ、夜子と汀が出会います。本家で酷い目に遭って対人恐怖症になっていた夜子を見た汀は彼女を守ろうと思い、彼女との交流を図ろうと努力します。それから半年後、夜子の心境に変化が現れたことから、今度は友達を作ろうと瑠璃を紹介します。
汀の次は夜子です。最初は夜子と瑠璃の出会いから。この部分はホワイトパールでは幻に置き換えられた部分になります。2人の出会いはホワイトパールで語られたような甘いものではなく、最悪に近い形での出会いでした、まぁ単に瑠璃が踏み込み過ぎて夜子にビンタくらっただけなんですけどw それでも、瑠璃は態度を変えずに夜子に接します。夜子が瑠璃を嫌う理由はただの強がり。裏切られるのが怖いから嫌いで居続け、嫌いなままならもし裏切られても耐えられるから。まぁ要するに好きなんだけど自分の心を守るために嫌いで居続けたいってことですね。そして、そういう自分が1番大嫌いということも。
3人目は理央。瑠璃と出会ったことで夜子は更に変わっていきましたが、夜子の初恋に気付いた理央と闇子は、彼女が良い方向へ変化していることに安堵。しかし、闇子は1つ懸念を抱きます、夜子が失恋したらどうなるのだろう・・・と。そして、瑠璃と妃が相思相愛であることに気付きます。ホワイトパールでは本が2人を引き寄せたことになっていましたが、それは間違いということでした。しかし、最初に瑠璃に告白したのは妃ではなくクラスメイトの女子。それを目撃した夜子は心の痛みに堪えられなくなり、それを見た闇子は最初は失恋も彼女の成長に必要だと思っていたのに理性とは違う本能的な行動に出てしまいます。それがパンドラの原型。しかし、あまりに中途半端なものだったため、夜子は瑠璃が告白されたことを忘れたものの、瑠璃は“誰かに告白された”という記憶だけが残ってしまいます。それが現実を歪ませ、瑠璃は“妃に告白された”と思うようになってしまいます。闇子がしたことは、傷つく夜子を楽にしようとしたはずが、逆に禁断の恋を実らせてしまうという皮肉な結果に終わります。理央は全てを知りながら、好きな人が悩み苦しんでも何も出来なかったこと・・・理央がローズクォーツで知られたくなかった秘密とは自分が紙の上の存在だったからというだけじゃなく、瑠璃の味方にはなれないということを知られたくなかったからでした。
4人目は妃。妃の死の真相を語る重要な場面です。瑠璃たちが闇子の使いで廃教会に赴き、奏から「サファイアの存在証明」の本を受け取ったときのこと。奏は1つだけ嘘を吐いていました。渡した本は「サファイアの存在証明」ではなく「オニキスの不在証明」。妃が黒い本に興味を持たないように善かれと思って吐いた嘘でしたが、「サファイアの存在証明」の内容に興味を持った妃が本を開いてしまったことで事態はどんどん悪くなっていってしまいます。妃は途中からこれが「サファイアの存在証明」ではないことに気付き、クリソベリルが現れてからはそれが「オニキスの不在証明」であることを知ります。サファイアは忘れられてまた思い出す物語。けれどもオニキスは忘れて思い知らされる物語。つまり、瑠璃が妃を忘れるのではなく、まったくの逆で、妃が瑠璃への恋心を忘れる。更に最悪なのがその後。瑠璃を忘れ別の男に恋をしてしまうという結末でした。そんな結末を許せない妃は、ほんの一時でも瑠璃以外を愛するくらいなら瑠璃への想いを抱いたまま死んでみせようと決意します。妃の瑠璃への想いがどれほど強いか分かりますね。妃エンドでもそうであったように、その固い決意でクリソベリルの上をいくことが出来た唯一のヒロインです。
5人目は瑠璃。三章の終わりでクリソベリルから妃の死については真実が語られてましたが・・・1年後、瑠璃がそれを覚えていなかった理由・・・それは、“瑠璃は既に死んでいたから”。“妃の後を追って自殺したから”でした。そう、理央と妃だけではなく、瑠璃もまた紙の上の存在でした。そして、瑠璃と妃の本を書き上げた闇子は力尽き息絶えます。
これまでの過去が語られた後、瑠璃は冷静にそれを受け止めます。そして、紙の上の存在であったとしても、妃とは違い自分の存在を認め、残された人のために何が出来るか考えるようになります。一方、かなたはクリソベリルから一連の魔法の本の事件は誰が起こしたものなのか聞かされます。夜子の心の闇がそうさせたのだと。そして、かなたは有る事に気付き、1つの物語を終わらせるために、行動を起こします。かなたを危険視するクリソベリルは次に夜子の元を訪れ、一冊の本を彼女に渡します。それは瑠璃の本でした。その本に書き加えれば思い通りになると。しかし、夜子はクリソベリルの予想に反してそれを拒みます。
理央もまた、ローズクォーツのときから宙ぶらりんになっていた自分の気持ちにケジメを付けようと瑠璃と話をします。失恋した理央の「こんなことなら最初から恋心をなくしてくれたらよかったのに」と「最後まで好きだって言えなかった」と「瑠璃くんを好きになれて幸せだったよぉ」っていうセリフが印象深かったですね。次に生まれ変わったときは普通に恋を伝えられる普通の女の子としていきたいなっていう願いが切なかったとです。
かなたは夜子に対し「瑠璃に告白する」と宣言し、瑠璃と廃教会で2人きりになり、黒い本が語った真実の中に語られてなかった最後の真実があることを話します(隠されていたのではなく言及されていなかっただけ)。瑠璃に初めて告白してきたのは誰なのか・・・そして夜子がかつて言っていた“サファイアは開いている”ということ(妃が開いたのはオニキスなので本来ならサファイアは閉じてないといけない)。瑠璃に告白してきたクラスメイトというのはかなたのことであり、サファイアを開いたのもかなたでした。蛍がかなたの元にいたのも瑠璃から託されたから。そういった記憶がサファイアによって消されていたのですね。ヒスイやアメシストはサファイアがかなたの物語を進めるために開かせた本だったわけです。ちなみに、本を開かせたのは夜子。瑠璃への告白を見てしまった夜子が、かなたにサファイアを開かせてしまったというわけです。クリソベリルが言っていた“夜子は加害者”というのは真実でもありました。図書館に来てから汀や瑠璃の存在によって良い方向へ向かっていたはずが、この時から夜子を取り巻く世界は壊れていった・・・というわけです。
こうして、十章で過去に関する真実はほぼ語られることになりますが、かなたの告白を見てしまい、これまで色々あった出来事で心がボロボロになっていた夜子は、瑠璃とかなたの2人が結ばれるという事実を認めたくなくて、ついに自ら“魔法の本”を書いてしまいます。
十章で分かったことは、メインヒロインは妃でも夜子ではなく、かなた!ってことですね。まぁ途中から薄々感じられたことですけど。
さてさて、次はクライマックスの十二章~十三章です~。・・・何故か十一章はありませんw