宮本啓一著 南風堂
これといった資産もないところから
事業を始めることを「裸一貫から身
を起こす」といいます。つまり「裸
一貫」というのは、頼りになるのは
おのが才覚と体力だけという状況を
意味しています。
事業に失敗したとき「本来無一物、
裸一貫でまたいっちょうやってみる
か」といったりします。もとは禅宗
用語「本来無一物」は、もとは「さ
とりとか煩悩とかいったものなども
ともとない。したがって、煩悩を払
って悟りを得るなんてこともない」
とややこしい。
一貫は3.75kg、生まれたばか
りの赤児のだいたいの体重です。親
がどんなに金持ちでも赤児は何も持
たないで生まれてきます。確かに現
実には、親の七光ということはあり
ますが、最後に決め手となるのは、
結局その人自身の才覚、体力、気力
といった、総合的な資質です。かの
ナポレオンは、いつも惨敗を喫した
ときのことを考えて作戦を立てたと
いいます。これはただ用心深かった
と言うだけではなく、最悪の事態を
考えることによって、おのれの本当
の実力をしっかりと冷静に見つめる
目を持っていたということです。
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もともと本来無一物なら、なにもか
もうまくいっている時こそ最悪の事
態を考えておくべきで、もとはとい
えば裸一貫の赤児だったのだという
ことを頭に入れておく必要がある。
ギリギリまで追い込まれて、やり直
す時、やはりその人本来の底力がも
のをいいます。立ち直れるかどうか
は本人の心がけひとつです。