日本写真家協会編 朝日新書
ISBN978-4-02-273163-0 P132より引用
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44 樹木にも「パブリシティー権」はあるの
Q 信州M盆地の一画に毎年見事に咲く
枝垂れ桜があります。残雪にかがやく北
アルプスの山々を背景にピンクの花びら
が美しく、写真を撮る愛好家がふえてい
ます。ただ、この枝垂れ桜は個人の庭の
中にあり、最近そこの地主が、「桜の所
有者は自分であり、したがってこの桜の
肖像権は私にある」と言い出しました。
桜の木に肖像権はありますか。
A ご質問にある「肖像権」の対象は「人」
ではなく枝垂れ桜という「物」を対象に
しており、その物の所有者による「パブ
リシティー権」の主張と受け止めること
ができます。(中略)
ところで、人ではなくて物を撮影し、そ
の写真を公表することが自由にできるで
しょうか。物自身が何らかの権利をもつ
ということはありませんので、今回の場
合、枝垂れ桜の所有者との関係が問題と
なります。(中略)
ご質問に似た事例として「楓の木に関す
る東京地裁判決二○○二」(平成一四年
七月三日)があります。この判例によれ
ば「所有権の内容は、有体物としての楓
を排他的に支配する権能にとどまり、無
体物である楓の画像にまでは及ばない」
したがって「被告による楓の写真撮影・
出版販売については、原告の所有権が侵
害されたとはいえない」
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▼最近は誰でも写真が簡単に撮影できる
ようになってきて、そのマナーが問われ
ています。昔に比べて撮影者の数が大幅
に増えたようです。昔はそれなりのルー
ルがあって自由に撮影できました。写っ
てたからどうのこうのということはなか
ったです。それが最近はちょっとでもカ
メラをむけると怪しまれる。最近のコン
テストの応募要項には「被写体の人物か
ら承諾を得た上で応募してください」と
記述があります。撮りにくくなりました。
また、いつぞやは、お宮での撮影会に行
った折、行事開始に時間があったので、
一休みに灯篭に腰掛けていた人がいまし
た。それを見た宮司の方が「灯篭は神の
宿る場所だから腰掛けないでください」
と説明しても中々従おうともせずにひと
悶着ありました。カメラマンのモラルも
問題です。↑の枝垂れ桜綺麗なんでしょ
うね。所有者の敷地内での撮影は禁止で
すが、所有地外なら自由ということです
ね。