耕治人と言う作家を知らないが、亡くなってから10ヶ月後の昭和63年にNHKテレビが晩年の耕治人夫妻を描いた『ある老作家夫婦の愛と死』という番組を放映し、その再放送をしていたのでついつい暇に任せて見てしまった。『天井から降る哀しい音』は、すっかり頭の呆けた妻が台所で調理の鍋をガス台にかけたまま放置して置くので鍋を何個も黒く焦がしその都度、天井に取り付けた火災警報器が哀しい音をたてて鳴り続けるという話。『どんなご縁で』は、その妻が失禁するようになり、夫がその始末をしてやると、夫として認識できなくなった妻が、夫に「どんなご縁で、こんなことを」とお礼を言う話。『そうかもしれない』は、やがて夫がガンで入院しているときに介護人に付き添われて見舞いにやって来た妻が「あの方がご主人ですよ」と促されて「そうかもしれない」とつぶやく話。これら3作品を中心にしたTV内容だった。妻が夫の作家活動を邪魔しないように神経を使い、支えてきた一途な思いが、80歳になったときに呆けによって失われ、さらに妻の痴呆は進行し、これからは夫は妻を介護するする番だと思い悔い改める。そして遂に意を決して妻を老人ホームに入れることになる。私生活をこれら『命終三作品』に淡々と書き連ねたことが読者に共感を呼ぶ。私たちも身につまされた。夫婦には夫婦にしか分らないことがある。
今日の夕食は、
◆ロール白菜
◆〆サバのなます
◆大根田楽
◆ご飯
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