徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

名刀現る!?

2011-06-13 19:42:29 | 拵工作
先日、柄前の納品にて、お客様宅へお伺いしました。
拵えは、お気に入りいただき、無事お納めいただくことができました。
拵師として、最もうれしい瞬間です!

なお当日は、居合高段者の皆様がお集まりになっており、にわか鑑定会となりました。
この機会に、先生方の愛刀を拝見する機会をいただき、思わぬ眼福にあずかることができました。

そんな中、拵えの新規ご依頼をいただき、お預かりさせていただくこととなったお刀があります。
現状は、模造刀の拵えに収まっており、柄は刃方と峰方がコの字型に作られた典型的な量産柄下地です。
鮫皮は短冊、縁頭は模造刀に良く見かける量産装具が用いられています。
目貫は、現代製ながら武具(槍・鉾)の図が用いられており、唯一再利用可能なものの逃げ目貫に組み込まれており、典型的な逃げ腰拵え?になっています。

さてさて、気になるのは刀身です。
刀礼を済ませ鯉口を切るや、味のある着せのハバキが覗いています。
この時点で、10中8~9現代刀ではないな?と想像がつきます。

しかしながら、何とも違和感が…。

ハバキ元の身幅は、重量(軽い)の割りにやけに広く35mmはありそうです。
厚みは薄く、刀身を鞘から完全には抜ききっていないながら、身幅広く重ねの薄い作り込みであることが伺えます。
当該お刀は、試し斬りに多用されていらっしゃるとのことで、物打ちの辺りから大きな曲がりが見られます。

刀身を抜き放ち、上の出来を拝見すると!
う~ん、何とも美しい!
只者ではないな?っと、一気に熱がこもります。

身幅が広くて重ねが薄い、切先は延びごころ、反りは浅く、長さは約定寸。
新刀と見るなら慶長、新々刀と見るには柾がかった板目調の地肌は黒すぎる。
切っ先は古研ぎながら、焼詰らしく見えます。

早速、おもちゃの柄を外すとナカゴはウブ。
しかし、体配といい、細直刃調の刃中の働きといい、南北朝の大和を彷彿とさせるではありませんか。
こころなしか、先反りのけがあることから、室町初期とも見えます…。
いや~いずれにしろ、試し斬りにはもったいない!

後日、お預かりしてゆっくり拝見すると、ナカゴに二字銘らしきものが、兼■。
直江志津と見るには、贅沢でしょうか?

拵え工作のために、刀装具の調達に躍起になっているのですが、身幅の広い刀身に合う時代縁というのは極端に少なく、なかなか良い金具が見つかりません。
そうそう、鍔は現状の現代鍔のままでよかったのであろうか?
これだけの名刀には、不釣合な気もしますが、まともな鍔は値がはるのも事実。
後はバランスとの兼ね合いです。

う~ん、悩ましい。