黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

不機嫌な太陽―気候変動のもう一つのシナリオ―  No.3

2022-09-12 09:47:21 | 地球温暖化

    不機嫌な太陽―気候変動のもう一つのシナリオ―  No.3

§4.雲の形成を左右する宇宙線は、どこから発生しているのか。どうして変動するのか。

概説より再掲

天の川銀河内での太陽系の周回

宇宙線が、爆発した星から放出されて地球に到達し、地球の3つの遮蔽層をくぐりぬけて地球の低空の大気迄到達して雲を作り、気候に影響を及ぼしていたのである。宇宙線の変動によって、地球にいろいろな気候の変化を生じていた。 地球への宇宙線の流入量は、太陽の状態によって変化するだけでなく、太陽系が天の川銀河のどの位置にいるかによっても変化している。 太陽は地球を伴って、天の川銀河の中心の周りを周回する軌道に乗って、星の間を通過している。その時に、時々暗黒領域に入ることがある。そこは熱くて明るい爆発性の星が少なく宇宙線が少ないので、地球の気候は温暖になる。この時期を温室相と呼ぶ。逆に、星の光が明るく宇宙線が強い時には、地球は氷室相(氷河期)に入る。

〇天の川銀河の明るい「渦状腕」を太陽が通過することにより、地球の大きな気候変動が.起きることがこれで説明された。地球上に動物が生存した5億年の歴史の間に4つの腕を通過し、温室相から氷室相への切り替えが4回起こっている。  [腕(スパイラル・アーム)とは、銀河系公転運動において『恒星系および星間ガスの渋滞』によるらせん腕型の偏在部分が生じる。ウィキペディアより] (図参照)

それでその時にいた恐竜の一部の小さな恐竜が、体温を保持するために羽をはやして、その後、鳥に進化したという。

 スターバースト

 約23億年前と7億年前の2回、「全球凍結」が起こった。これは熱帯までも氷河や氷山であふれ、地球全体が凍結したのである。これは、天の川銀河が他の銀河と軽く接触することにより、天の川銀河でスターバースト(星の誕生や死が頻発したすさまじい状態)が誘発された時期と同じ時期に起こった。宇宙線が極めて多くなり、雲が地球を覆い、世界を暗くしたために、地球全体が凍結したのである。〇これに対して、その度に生物が緊急の適応をして、大きな進化をし、最後の全球凍結期に動物が出現した。

 他方、地球が誕生した初期の頃は太陽も若く、光量も少なく、地球も温暖だった。太陽は宇宙線を払いのける能力が今よりはるかに強かった。〇それで38億年前のグリーンランドの岩石から、最古の生物が発見されている。生物が棲みやすい条件が創り出され、それ以来生物は、常に変化する気候に耐えて適応してきた。生物の歴史は、宇宙線の強烈な時と少ない時との間で、生物圏は拡大と縮小との間を揺れ動いていた。

近くで超新星爆発 (二足歩行の人類の登場)

 最近では過去300万年前からの間に、数個の星団が超新星爆発を続いて起こし、すぐ近くにいた太陽と地球を奇襲し、宇宙線が強くなった。この大異変が、アフリカの乾燥化を引き起こし、それにより石器の製作人間の初舞台(二足歩行の人類の登場)が誘発された可能性がある。(日経サイエンス2022年8月号の「気候が形作った人類進化」参照)                                                             天の川銀河

                          日経サイエンスより

2章 宇宙線の冒険

宇宙線は、太陽の磁場と地球の磁場によっても一部しか遮蔽できないが、宇宙線に含有される高エネルギーの原子核以外はすべて地球の大気によって食い止められる。気候変動を引き起こす宇宙線は地球磁場の変動を受けない

1節 宇宙線の概要

宇宙線の発見と命名

 1912年ウィーンのヘスは熱気球により、空気の伝導性は上空ほど高くなるということを確認し、それを高空の放射線によると考えた。それをシカゴのミリカンは宇宙線という名前を付けた。すぐにそれは未知のものを含む荷電粒子であることが判った。

 研究方法と成果

 その後、粒子加速器によって研究され、宇宙線が「灼熱の発生源(超新星の爆発)を出発してから、空気中を通過し、我々の体の中を通り抜け、そして地面の岩石の中に消滅するまで」の全過程はようやく明らかになった。

2節 宇宙線の発生源のつきとめ

 発生源の確認

 2003年ナミビアの観測所で、爆発した超新星の残骸の中から宇宙線が作られて、ガンマ線、つまり宇宙線やってくることが確認された。

 宇宙線の発生源の確認方法

 宇宙線が、宇宙空間で原子と衝突した際に発生するものの中にガンマ線がある。宇宙線の生成場所には、宇宙線の濃度が高いのでガンマ線も強い。ガンマ線は光と同じ形態なので、光と同じように発生源から直線状にやってくる。ガンマ線は人工衛星で確認でき、宇宙線の生成している場所からの放射されるガンマ線は約1000倍程度に強力である。その強力なガンマ線は、空気中で放射光をとらえることのできる大きな望遠鏡で検出できる。この原理で1989年アリゾナの天文台で超新星の残骸からの高エネルギーのガンマ線を初めて確認した。

 改良した望遠鏡による観測

 8カ国の科学者の協力で作られた、ヘスという名前の望遠鏡を使ったナミビアの観測所で、超新星の残骸を10時間にわたり観測した。非常に高いガンマ線により、未知の星が初めて明らかにされた。見つかった超新星の残骸物の星は、誕生して千年しかたっていないので、宇宙線の発生を始めたばかりであった。

3節 星の燃えかすから出るもの

 宇宙線を生成する超新星

 新星は、それまであった星が突然極めて明るくなり夜空で確認できるようになったものである。超新星は大異変が起こって1つの星が爆発したものである。宇宙線を生成するのは特に大きく、太陽より大きい星が爆発して超新星になったものである。

 星の一生

 太陽内部では、核融合が起き、水素をヘリウムに融合してエネルギーを生み、それが地球の生命を育んでいる。水素が使いつくされてヘリウムになると、それが燃焼して炭素と酸素を作る。燃焼はここで終わり、その後次第に冷めて死んでいく。これを白色矮星(わいせい=小さい星)という。 太陽より大きい星は、原子核の燃焼は続き、炭素と酸素が燃焼して、最終的にケイ素(シリコン)が融合して鉄を作れば、核の燃焼によるエネルギーは止まる。熱が無くなると鉄の中心核はつぶれ、その星は崩落する。その崩落により超新星爆発が起こり、星の上部の大部分を宇宙空間に吹き飛ばす。それにより解放されたエネルギーにより核反応が起こり、鉄より重い金やウラン (ウラニウム)などを生じる。 この超新星は数週間、10億個の太陽と同じくらいの明るさに輝く。あとに残った死んだ星は白色矮星よりずっと密度の高い中性子星になる。空には太陽より大きな星が死んだ中性子星が点在している。

 爆発で飛散した原子状物質

 星の爆発で飛散した原子状物質は、光速の1/30の速度で宇宙空間に広がり、膨大な運動エネルギーを持っているので、その1/5が光速に近い速さで飛ぶ宇宙線に変換していく。 このように飛散した残骸が存在する領域内に、宇宙線の生成工場が散在する。 宇宙線とは、宇宙に存在する物質(水素、ヘリウム、炭素、酸素、他)が非常に高速で飛行しているものである。その中で遅いものは光速の90%で、速いものは光速に近い。それ以上早くならず、運動のエネルギーは質量の増加になる。

 爆発後に起こる各種の変化

 ウィーンの天文学者ドルフィは、「超新星の爆発後しだいに宇宙線を生成し、膨張が減速し始めるのは200年後である」という。宇宙線のピークは10万年後で、それが数十万年間宇宙線を作り続ける。約100万年後にはエネルギーを使い果たして中性子星となり、宇宙をさまよう。それまでの間、宇宙線を出し続ける。数千もの超新星の残骸が宇宙線を放射し、天の川銀河に銀河宇宙線を放射している。

 宇宙線の種類

 銀河で生じる宇宙線を銀河宇宙線と呼ぶが、ここでは単に宇宙線と呼ぶ。超高エネルギー宇宙線は他の銀河で生じるものである。太陽の宇宙線は弱く地上には影響しない。また(一次)宇宙線とそれに他の爆発した星からやってくる(一次)宇宙線がぶつかって二次宇宙線ができるが、地上にはこの二次宇宙線が届き、1秒間に2個ほど人体を通過している。

4節 宇宙線はあってもなくても良いものではない

 宇宙線に対する見方の変化

 2001年フランスのミディピレネー天文台のカティア・フェリエ―ルは宇宙の見方についてのマニフェスト(宣言書)を出し、宇宙の成り立ちの上で宇宙線を位置付けた。 「天の川銀河の各星は、希薄な媒体(星間物質)の中にある。この星間物質は、①宇宙に存在する通常の物質、②宇宙線(相対論的荷電粒子)、③磁場、が含まれている。この3つの要素は同じ圧力をもち、電磁力により緊密に連結している」という。(宇宙線は、光速に近い速度で運動していて、相対性理論で補正が必要な粒子であるため、こう呼ぶ)

 天の川銀河内を飛び回る宇宙線

 超新星の残骸中から発生した宇宙線は、一部の高エネルギーのものは天の川銀河を出て広大な宇宙へ出ていくが、多くの宇宙線は数百万年の間、この天の川銀河内を飛び回る。 天の川銀河は円盤状で、横から見ると天の川として見える。重力によって両側から強く押し付けられている。円盤の中を縫うように磁場の力線は走り、その磁力は弱いが数千光年の長い距離の間、作用し続けるので、宇宙線は円盤内の磁力線に沿って飛んで行く。磁場の強さと宇宙線の数は、天の川銀河の場所によって違う。太陽と地球は、銀河内を絶えず移動しているので、地球が受ける宇宙線の強さと数(カウント又は強度)も変化している。 宇宙線の平均寿命は1000~2000万年であり、地球の46億年前の誕生から数百回更新されている。宇宙線の銀河内の量は一定ではなく、爆発性の星の生成率が変化していて、その爆発星のベビーブームの時期は、地球の歴史の中での極端な気候変動が起きた時期と結びついている。

 銀河に対する宇宙線の作用

 星間ガスと磁場と宇宙線が、相互に作用して滑りやすくなり、そこへ重力が作用して磁場は局所的に形が変わり、宇宙線の経路が変わる。星間ガスは半分に圧縮され、更に宇宙線と磁場の力を受け、高密度化し星が生成される

 星の誕生に対する宇宙線の役割

 暗黒星雲は、星間ガスが蓄積して、石質状、氷状、タール状の粒子群になったもので、新しい星の誕生地となる。銀河内の空間では様々な化学反応が起き、紫外線により多くの物質が作られ、そして分解されている。しかし、暗黒星雲の中では化学反応は続き、紫外線で始まり、宇宙線に引き継がれ、化学反応は数万年かかって一酸化炭素を製造する。 宇宙線は太陽と地球とを創造する仕事と、水や炭素化合物を作り地球を肥沃にする仕事に関わっている。

 5節 母なる太陽はいかにして我々を守るのか

 概要 大群でやってくる宇宙線は、太陽系の周りの部分に強い力でぶつかるが、太陽系を取り巻く巨大な磁場の内側のシェルターで、宇宙線の半分がはじき返されて、太陽系の惑星は守られている。

 太陽風

 太陽風が発見され、太陽が地球を守る方法が分かった。太陽風は、太陽から放出された荷電粒子の絶え間ない流れであり、太陽と地球を結び付けている。太陽の大気は、太陽の磁場で広い範囲に広がり、その内側に我々は住んでいる。 太陽は主に水素から構成されているが、太陽風は陽子が主だが、他の元素も、さらにそれを中和する原子も含んでいるので、電気的に中性を保っている。太陽風はそれと共に太陽の磁場を引きずっていて、太陽系の空間は磁気で満たされ、宇宙線に対抗している。 太陽風は風速350~750km/秒の間で変化し、太陽を出てから2~3日で地球を横切り、1~2年後に太陽圏から出て星間空間中に入って行く。

 太陽圏

 外側の星間ガスが太陽風を止めるところが太陽圏の境界で、そこから宇宙線が地球に届くのには約20時間かかるが、太陽からの光は8分しかかからない。 太陽圏の大きさは、太陽風の吹き方の強さで変化する。太陽表面の黒点が少ない時は、太陽活動は静かであり、太陽風の密度は低下するが、風速は増加し太陽圏の外側の境界を広げる。太陽は4週間周期で自転している。外からやってくる宇宙線を押し返したり、屈折させる太陽圏の仕事は、磁場の強力で小規模な不規則性によってなされる。これを生み出すのは、衝撃波である。衝撃波の出る原因は、一つは太陽の異なる部分から出る速い太陽風と遅い太陽風の衝突であり、もう一つは太陽の磁気爆発である。その爆発により巨大なガスの塊の放出が起こり、強烈な太陽風の噴出が起こる。太陽が激しく活性化すると、磁気活性の強い領域が存在して黒点を作り、衝撃波は強力になる。太陽圏で宇宙線は半分になるが、黒点数の多い期間の後には、さらに宇宙線が約30%減少することも判った。

6節 最後の2つの防衛線

 地球の磁場圏 (1つ目)

 太陽圏内に入った宇宙線は、太陽風による磁気衝撃を1~2日かけてジグザグ状に通り抜けた一部だけが地球に接近する。次にその宇宙線をはばむのは、地球が創り出す磁気遮蔽である。地球の液状の鉄芯内の発電装置が地磁気を作り出し、この地磁気が地球の周囲に磁気圏を作る。 オーロラは、太陽風が高速で来て磁気圏に当たり、磁気圏が変形して磁気嵐を起こし、磁石の針はふらつき、極地の空に輝かしたものである。 1868年から英国のグリニッジと豪州のメルボルンで開始された地球の反対側同士での磁気変動の監視は、無意識に太陽風の活発度を測定していた。太陽で起こった大きな質量放出は、地球の近くへ来て磁気の傘のようになり、宇宙線は1日以内に20%も減少し、回復には数週間かかる。宇宙線はばらついた軌道で到達するが、高エネルギーの宇宙線は地球のどこへでも到達する。低エネルギーの宇宙線は地球に接近できないが磁極の近くには落ちる。

 地球の大気 (2つ目)

 星空から来る一次宇宙線は、地球の大気に衝突して終る。厚さ25kmの空気層は大切な役割を果たしている。一次宇宙線は大気に衝突して停止するが、それに変わって現れる二次宇宙線は互いに衝突し合い、高エネルギーになる。二次宇宙線は地表から15kmでピークに達し、その後大気により減弱し、海面につく時には1/20までに弱められる。 旅客機は海抜10~12kmを飛行し、特に極地は磁場が高いので、北極横断航路を通過すると搭乗員特に女性(特に妊娠中の)は影響を受けやすい。  高地で生活している人もまた、高レベルの宇宙線放射を受けている。世界で最も海抜の高い首都であるボリビアのラパスは3600mあり、海抜150mのペルーのリマより、宇宙線の強度は12倍も高い。アンデス山脈の高高度の高原には800万人も住んでおり、インカ人とその祖先は数千年間繁栄した。したがってこの高い宇宙線放射レベルをうけることは致命的ではない。(だが、高地のボリビア人は速く老化してしまう)。 宇宙線は、自然の放射能に加えて発熱や化学物質の影響と共に、奇形や癌を引き起こす遺伝子変異を助長する。しかし、宇宙線はまた気候の変動と共に、種の進化を起こしうるものである。

7 地球に到達するミューオン

 大気の上層部で起こる宇宙線の原子破壊で生じるもので、地球に大量に到達し、エネルギーの損失が少ない荷電粒子は1種類しかない。それをミューオンという。

 ミューオンに関連する粒子

 ミューオンは電子の200倍質量が重く、不安定であるが、それ以外は電子と同じである。宇宙線が大気と衝突した時に、初めに核力粒子であるパイオンが大量に生産され、それが崩壊する時にミューオンが生じる。ミューオンは、ニュートリノを2つ放出して、1つの通常の電子になるが、寿命は200万分の1秒である。

 星の情報を盗み出す工作員としての素質

 大気を通過する粒子の中で電子は地上まで届かず、陽子や中性子は各分子中で相互作用をし、エネルギーを放出して上空に1500個あっても、海面に届くのは1個だけである。 大気への侵入者で、①いかなる物とも反応しにくく、②軽量で、③空気分子の中をかいくぐり、何も奪われずに通り抜け、大きな運動量を保有しているという粒子は、ミューオンしかない。ミューオンは地上に届くと、炭素原子、水素結合、水分子と結合して化合物群を生み出す。ミューオンは光速に近いので、内部時計は遅れ、寿命は伸ばされ、アインシュタインの相対性理論のお蔭で海面の高さまで到達し、二次宇宙線の98%を占める。ミューオンは水中や岩石の中にも入り込む。それを避けるために実験装置を深い鉱山(日本のカミオカンデなど)やトンネルの中に作られる。それでも雑音として現れることがある。

スべンスマルクにとってのミューオン    スべンスマルクにとってミューオンは、気候に最も影響を及ぼす宇宙線である。ミューオンは大気の最も低いレベルに到達し、世界を寒冷化させる低い雲の形成に影響を及ぼす。

8節 直感の裏付け

 ベーアの反論     1章でのユルク・ベーアの反論は、「14Cや10Beの生成率によって、宇宙線の大量流入が示されたにもかかわらず、気候の著しい寒冷化を伴わなかった」という、4万年前のラシャンプ期のことである。

 スベンスマルクの対応    2005年までに、アルゼンチンのピエール・オージュ観測所で、天の川銀河またはその向こうからの超高エネルギーの粒子によって、広範囲にわたる二次粒子のシャワーを生じ、大気中を雨のように降りそそぐことを観測した。これがスベンスマルクの予想を証明した。

 ドイツの宇宙線模擬プログラム

 ドイツに作られたカスケードと呼ばれる観測施設で、コルシカ(CORSIKA)と呼ばれるプログラムが作られ、コルシカはどの粒子が最終的に地表の検出器に到達するかを計算して、気象の問題とも関連した。コルシカは、高エネルギーのミューオンを大量に含む二次粒子の大規模なシャワーが生じることを相対性理論で証明した。

 スベンスマルクによるプログラムの実行

 標高2000m以下の大気中の宇宙線の活動に焦点を当てコルシカに計算させたら、ミューオン生成量の60%は、高エネルギーを持って天の川銀河外からやって来た宇宙線の生成物なので、太陽の磁場でも阻止できない宇宙線に由来した。それ故、これは数世紀の間は一定なので、太陽活動の変動に起因する気候変動には関係しないものであった。 

〇寒冷化を引き起こす低い雲の形成に影響を及ぼすミューオン生成量の残りの40%だけが、太陽の磁気活動の変動により変化する。気候変動を起こすミューオンは、地球磁場が消失しても3%しか増加しない。だが地球磁場が減少するとベーアが測定した10Beと36Cl(塩素)の原子は50%以上も上昇した。スベンスマルクの予想は正しかった。

9節 ラシャンプ磁極周回期への再移行  

 再移行の理由  コルシカで得たのは計算上で、ラシャンプ期の頃の宇宙線と気候の関係を再調査する必要があると考えられた。

 ラシャンプ期の状況

 この時期には、太陽の磁気が強くなったため、低い高度まで届く宇宙線が遮蔽されて雲が減少し、それと同時に、地磁気が弱くなったために14C、10Beその他の放射性原子が増加したのだろう。もちろん雲が減少したので温暖化が起こった。 これは氷床コアの測定から、この時の温暖化は、最後の氷期の間に繰り返し劇的な温度上昇が起こったダンスガール・エシュガー温暖期群の1つで、この温暖化は太陽活動が活発化した結果であった。

 年代の修正  年代の決定に14Cを用いる場合、地磁気が弱くなった時は、14Cの生成が増加しているので補正が必要である。当時の誤差は5千年にものぼった。2004年にマサチューセッツにある海洋学研究所のヒューヘンらは海底調査の結果を基に、修正された14Cデータを出版し、その後はそれによって修正された。

 考察  1996年スベンスマルクが「宇宙線が気候に直接影響を及ぼす」ことを提唱して以来、ベーアの反論が最も説得力があったが、それを論破できたことは進歩である。 もう1つの主役は「雲についての発見」である。

(注:これは、この書の要約と解説とまとめを、多くは原文の引用ですが、一部は短くまとめたり、書き直したりしています。詳しくは原著をお読み頂きたい。図は後ほど掲載します。  黒部信一)

 

 


不機嫌な太陽―気候変動のもう一つのシナリオ― 2

2022-09-12 09:15:21 | 地球温暖化

        不機嫌な太陽 ―気候変動のもう一つのシナリオ―  No.2

§3 雲による気候変動

 気候変動を起こす原因は雲の存在にあることの説明。雲量の変動は、宇宙線強度の変化に応じて起こる。その宇宙線の強度は、太陽の磁気遮蔽が強いか弱いかによって変化し、地球上の変化には影響されない。気候変動に最も重要なの種類が何かも特定できている。雲の増加は、地球の北半球を中心とした大部分の寒冷化をもたらし、南極大陸の雪原では温暖化をもたらすことから、雲が実際に気候を左右している。

3章 光輝く地球は冷えている

人工衛星による観測結果は、雲量が宇宙線の増減に応じて増減していることを示している。気候変動に最も影響を及ぼすのは低い雲で、それが地球を寒冷化させる。そのことは、逆にその雲が雪原の南極を温暖化させている事実により確認できる。

1 判っていなかった雲

 気候モデルにおいて

 2004年に米国大気研究センターのトレンバースは、「気候モデルは、雲を正しく扱っていない。・・」と言い、2005年には、それまでの気候モデルが正しくなかったことが明らかになった。1983~2002年の実際の雲の衛星観測と比較し、その違いは数百%にも達した。

 人工衛星での初めての観測

 雲の実態を観測するために、2006年に米仏のカリプソ衛星とNASAのクラウドサット衛星が一緒に飛んで、同じ雲を15分以内ずつ、一方はレーザー光レーダーで、他方はmm波レーダーで磁場観測を3年間続けた。これにより、厚い雲内の異なる各層の識別、小滴の粒径の測定、および雨として落下する小滴かどうかの区別などの多くが解明された。

 将来の気候予測

 この時期に「炭酸ガスの排出による気候の温暖化」問題が始まった。まだ「気候変動における雲の役割」は認められていない。自然の温室効果は主に水蒸気によっており、地球の表面を生物に適する状態にするのに不可欠である。炭酸ガスも同様に作用する。現在の議論は、炭酸ガスが増加し続けると、その温暖化効果はどれだけ大きくなるかである。雲の実際の役割からは、極度の温暖化は起きないだろうと予測される。

2節 雲による熱の出入りの抑制

 気温に及ぼす雲の影響

 雲には冷却効果がある。太陽光は、その雲がなければ雲の下にある地球の表面を温めるが、雲があると、雲に当たった光の半分が宇宙空間に跳ね返される。さらに雲に当たった太陽光の一部は雲の内部に吸収される。  雲は、地球の表面から熱が逃げるのを阻止するので、それ自身が温室効果をもたらす。雲もまた宇宙空間へ赤外線を放射するが、雲の上空は地表より温度が低いので,雲が存在する時の方が熱の損失が少ない。1990年代のNASAの地球放射収支実験では、全地球的な測定で、地球を覆う雲の加温効果と冷却効果の収支は、総合すると雲は強力なクーラーである。薄い雲は例外で、加温効果を持っている。高度の高い上層にある羽毛状巻雲は、-40℃近辺で冷たいので、雲から宇宙へ放射する熱は少なく、地球からの放射を阻止する熱の方がずっと多い。中間の高さの厚い雲は、もっとも効率の高いクーラーである。しかし、それはどの時間帯でも地球の約7%を覆う分しか生じない。低い雲は、そのほぼ4倍(30%弱)の面積を覆い、地球冷却の60%を占める。太陽光を遮ると共にその雲の比較的暖かい上面から高い効率で宇宙空間へ熱を放出するからである。低い雲の中で、広くて平らな毛布状の積層雲は、地球上の約20%を覆い、主に海洋上に生じる重要なクーラーである。 全般的に見れば、雲は入射太陽光の加温効果を8%削減する。雲が無いと地球の平均温度は約10℃上昇し、低い雲が数%増えるだけで地球は寒冷化してしまう。

 雲の分布状況の把握

 雲が空を覆う平均量は、年ごとに変化する。気象衛星により、雲を地球全体の視野で見ることが可能となった。国際衛星雲気候計画は、全世界の民間の気象衛星から入ってくるデータを蓄積した。NASAのゴダード研究所のウイリアム・ロソーの立案で、地球表面を一辺が約250kmの正方形で分割し、月毎のチャートを作成して、モンスーンやエルニーニョと雲の動きをとらえた。それは、地球全体の雲量と太陽のリズムとの間のつながりがあることを示した。

3節 太陽と気候との間の見落とされていたつながり

 宇宙線量と雲量との関係の調査結果

 気象衛星は国によっても異なるので、赤道上空を飛行している米国、欧州、日本の静止衛星によって観測された海洋上の雲の月間記録のみを使用し、宇宙線に関してはコロラド州のクライマックス観測所の中性子の月間平均数を選んだ。両者の変化は著しく一致していた。そのデータは1984~1987年までの間の太陽活動が徐々に静かになると共に、地球に届く宇宙線は増加した。その間に海洋上の雲量は徐々に約3%増加した。1988~1990年までの間の宇宙線は減少し、雲もまた4%減少した。この結果は、宇宙線による雲量の変動が、太陽からの光の強度の変動よりも地球の温度にずっと大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。雲量は、宇宙線量の変化に忠実に従い、この相関は並外れて高かった。

4節 炭酸ガスによる温暖化説

 1990年に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は地球の過熱が目前に迫っているという警告を発表した。20世紀の間に地球の温度が穏やかに上昇したのは、空気中の炭酸ガスの量が人工的に増加している為との考えであった。太陽活動のような自然要因がそれに大きく関与しているという説は歓迎されなかった。1992年にデンマーク代表団は、気候に及ぼす太陽の影響を研究課題に追加すべきと提案したが却下された。1996年デンマークの新聞社が、IPCCの議長にスベンスマルクらの宇宙線と雲の関係についての研究に意見を求めたら、「科学的に信頼できるものではない」と答えた。  スベンスマルクは、デンマークの公的機関は研究費を出さず、その代わりにカールスバーグ財団からの援助を受けられた。彼の発見した気候変動機構により、クヌード・ホフガール記念研究賞とエネルギーE2研究賞の二つの賞を受賞したが報道されなかった。

5節 低い雲に驚くほどの一致

 再調査に用いた新しいデータ

 国際衛星雲気候計画は1983~1994年のデータを発表した。そのデータを再調査した結果、スベンスマルクは2000年までに「太陽活動の変動の影響は、低い雲に最も強く現れる」と報告した。これは高度の異なる3種類の雲が、各地域を覆う面積比率(%)月間平均値の変化を、太陽活動の変化に応じて変化する宇宙線量の月間平均値と比較したものである。

 この調査で得られた結果

 地表から約3000m以下の高度に生じる雲が、宇宙線の増減に最も敏感に応答する。この高度は宇宙線がもっとも少量しか存在しない。既に地球の冷却の60%は、低い雲であることが確認されていた。低い雲が主役であることは、最も重要なものが最もエネルギーの高い宇宙線の強度だからである。なぜなら高エネルギーの宇宙線しか、最も低い高度まで到達できない。 この調査で、1年ごとに平均した低い雲の量と宇宙線の強度との一致度は、92%であった。予想に反して、高度が中間の雲と高度が高い雲は、宇宙線の変動とは無関係に見える。その理由は、宇宙線は高い高度にはいつも大量に存在するが、低い高度の空には宇宙線は少量しか存在せず、その総量が少ないから変動が大きく反映されるのである。

 太平洋とインド洋の2つの領域と、グリーンランドとスカンジナビアとの間の北大西洋の領域は、低い雲と宇宙線とのつながりが最も強いことを示している。 低い雲の上部温度を調べると、熱帯地方を中心として地球を取り巻いたベルト状の領域の雲の変化は、宇宙線の変化に忠実に追従した。この雲の影響は、地球冷却の30%を超えることは確実である。宇宙線が増えた時には、この低い雲の上部温度がより温かくなり、そのために宇宙空間への放熱が増加し、冷却効果が強まるのである。

 低い雲の上部温度についての考察

 どうしてその領域なのか。それは水の小滴が凝縮できるための表面を提供する小さな極微細粒子が、その領域の空気中にはより多く存在するからである。つまり極微細粒子が多いので、そこへ宇宙線が多くなると、小滴は小さいが数が多くなり、凝縮した水の合計量が少ないので、雲は霧状になる。その結果、この雲は地表からの熱を上方へ通過しやすくなり、雲の上部の温度が高くなる。衛星から観察すると、海洋上の雲の少なくとも3分の2はこの奇妙な形態の雲に属している。海上の船の航跡に沿って現れる直線状の雲は、このことを示している。1987年にワシントン大学の研究用航空機が、2隻の船の航跡に沿って形成された雲の中を飛行し、検証した。

6節 太陽活動が活発化した時

 20世紀の気温の変化

 宇宙線強度の平均値は、この100年間に著しく低下した。このことは地球を覆う雲量が減少し、地球は温暖化していることを意味する。 温度の記録は、この20世紀中に地球全体が、徐々に約0.6℃温暖化していることを示している。この温暖化の半分(+0.3℃)は、1945年以前に起こった。この期間には、太陽が活発化の真っ最中で、宇宙線は減少中であった。1960年代と1970年代の初期には、著しい寒冷化の期間に切り替わった。この時は太陽の磁気活動が一時的に弱まり、宇宙線が増加していた。1975年以降は、太陽活動の上昇が再び始まり、宇宙線は再び減少し、そして地球の温暖化が再開した。IPCCが1988年に創設され、炭酸ガスに関して関心が高まったのはこの時期である。

 20世紀の宇宙線の変化

 宇宙線の流入量の系統的測定値は1937年から存在している。1999年にオックスフォードの研究所のロックウッドたちは、それ以前に宇宙線が流入していた量を見つけ出せる方法を見出し、その結果は、惑星間空間では太陽の磁場はこの20世紀の間に2倍以上強くなったという。これにより20世紀全体の磁場の変化と、温度の変化がよく一致していることが示された。それは欧州米国宇宙探査機ユリシースによって、太陽の磁場強度がすべての方向で同じであることを発見した為である。宇宙探査機は1964年以来磁場強度が40%増加したことを直接測定した。ロックウッドは、それ以前の段階でさらに大きく増加し131%に達したと推定し、1901年と比べて1995年の太陽の磁場強度が2.3倍になったという。 1995年以降には磁場が強くなり、それで低い雲の高さまで届く高エネルギーの宇宙線が減少していることを、ペルーのワンカヨ測定器は示した。スベンスマルクたちは、そこから「20世紀の100年間における低い雲の放射性強制力(地球のエネルギー収支の変化)の概算値は、1.4W(ワット)/平米の温暖化である」との結論を出した。この概算値に対する批判の一つは、火山爆発やエルニーニョによるというもので、別の批判は、国際衛星雲気候計画を信用していなかった。IPCCは宇宙線と気候の変動とのつながりを認めなかった。

7節 南極だけは雲で温暖化する

 概説  専門家は、南極と他の大陸とは気温の傾向にずれがあると気がついていた。

 南極を隔離するもの

 風の回転特性が南極を他の地域の気象から隔離していた。風は上から見て右回りに流れ、それが環南極海流を引き起こす。南極はその環南極海流によって、メキシコ湾流や黒潮などの熱帯流から隔離されていた。南極の成層圏にも同様の右回りの風が吹いていた。この成層圏南極渦は、これに対をなす成層圏北極渦よりずっと強く持続性が高い。

 南北の氷床コアー・データの比較

 南極以外は世界の気候変動に従っているというデータが出た。 1999年にコペンハーゲンのボーア研究所のダールージャンセンらは、グリーンランドのGRIP掘削孔と、南極のロードーム掘削孔の中の氷の温度を比較した。埋まっていた氷は、熱の貯蔵性と絶縁性が高いので、その生成当時の局所温度を数千年もの間保存していたので、それを温度測定装置で、氷の各層が形成された時代における温度を測定、記録した。その結果は、過去の6000年間の北と南の温度を比較すると、「南極の気温は、グリーンランドの気温が平年より寒い時には、平年より暖かい傾向にあり、グリーンランドが暖かい時には寒い傾向にある」であった。ダールージャンセンの結果は、最近の小氷期の間、グリーンランドでは著しく寒かったが、南極では比較的暖かかったことを示した。

 南極のもう一つの掘削場所であるサイプルドームでは、ペンシルべニア州立大学のアレイらが特徴的な層を見出した。その層は、それが存在した時代に夏が異常に暑くて氷が溶解していた。その溶解の起きた頻度の変化が、気候の変動を示していた。2000年にそれが発表され、「溶解が最も頻繁に起こった300~450年の間で、溶解を経験した年が8%にも達した。それは、南極ではこの期間の夏の温度が高かったことを示しているのだろう。この150年間は、北半球で温度の低い小氷期と一致している」とした。アレイらはさらに1万年前まで追跡した。そしてサイプルドームの氷床で、約7000年前における2000年間、氷の溶解が全く起こらなかった期間を見つけた。その期間は南極では寒冷であったが、グリーンランドでは異常に温暖だった。グリーンランドでの掘削地から採取した同じ期間の氷は、過去1万年の間で、夏の溶解が最も頻繁に起こった期間であったことを示した。

 北と南の気候変動の境界と時間差

 地球全体の気候は、孤立した南極とそれ以外の世界との間で、不均等に分配されており、その2つの領域は、風と海流により、それぞれの領域の固有の気候変動の傾向を共有していた。オーストラリアとその周辺、南アフリカ、南アメリカを含む地域、つまり南半球の大部分は、気候変動に関して共通性が高いのは、南極ではなく、ユーラシアと北アメリカであった。その境は南緯60度の所にあった。つまり「南極気候の異常」である。南極とそれ以外の世界とでの気候の応答速度は、違ったとしてもそれは数年であると考えられた。

 20世紀における南極気候の異常

 1900年以降の100年間の気温の記録は、全地球と南極の双方とも、全般的に温暖化を示しているが、その途中の段階では一致していない。1920年代と1940年代には、南極で大きく寒冷化し、全地球は温暖化が急上昇した。 それとは反対に、1950年代と1960年代には、南極は劇的に温暖化したが、他の世界は一時的に寒冷化を経験した。1970年以降は、地球の温暖化が再開している間、南極の気温は横ばい状態となる。しかし、南極のハリー湾基地では、気温は著しく低下した。

8 南極気候の異常を起こす要因候補

 南極気候の異常の説明は、炭酸ガスでは説明できない。炭酸ガスは全世界に均一に広がっているからである。オゾン・ホールも同じである。オゾン・ホールの拡大はフロンガスを放出したことによるものではない。なぜなら、それでは有史時代にも先史時代にも起こっている南極気候の異常を説明できない。また天文学的要因、つまりミランコヴィッチ・サイクルの説でも説明がつかない。 それは地球の軌道の変化や姿勢の変化で、南極へ降り注ぐ太陽光の強度は、数千年の間に変化する。これはダールージャンセンの説明には役立つが、南極と北方の気温の違いを説明できない。雲量の変化が、南極気候の異常を直接予測できる唯一の要因である。雲量が減少すると、地球は温暖化し、南極は寒冷化する雲量が増加すると、南極は温暖化し、残りの地球の部分は寒冷化する

 雪原における雲の効果

 南極の雪原は、地球の最も白い部分を作り出している。北極の雪よりも、雲の上面よりも白い。その結果、南極では雲がない時に雪原が太陽から直接吸収するエネルギーよりも、雲がある時にその雲が一旦太陽のエネルギーを吸収し、その熱を雪原に再放射するエネルギーの方が多い。衛星により観測されたこの南極の雲の温暖化効果は、南極点における地上観測により確認された。それは、2003年に「雲は、1年のどの月においても、南極大陸の雪原を温める効果を持っていることが判明した」と発表された。 グリーンランドの氷床でも、雲により暖められることが知られていたし、長年にわたって観測もされていた。衛星による観測からも、雲の減少は局所的に寒冷化させることが示されていた。グリーンランドの氷床は南極ほど白く輝いていない。グリーンランドの気候は、風と海流によって、北大西洋や世界全般の気候と一体化されている。局所的な雲による温暖化効果は、大部分が打ち消されている。

 南極気候の異常についての考察

 雲の少しの増減での気温の変動を、衛星データを使って計算すると、雲量が4%増加した時には、気温は赤道では約1℃低下し、南極では0.5℃上昇する。雲量が4%減少すると赤道では1℃上昇し、南極では0.5℃低下する。 それでは地球の温暖化が雲量の減少によって起きるなら、南極において、1900年頃より2000年頃の方の温度が高くなったのはなぜか。スベンスマルクは、南極は孤立しているが、その大気中の水蒸気が自然に増加したために、温暖化を共有できたという。 地球の大気が暖かくなると、水は蒸発しやすくなる。水蒸気は最も重要な温暖化ガスなので、水蒸気があると宇宙空間へ放出される熱の一部が地表に戻されるので、全般的な温暖化を増幅する。余分の水蒸気は南極上の空気の中にも入ってくるので、その温暖化効果が、雲の減少による寒冷化効果を上回ったのであるという。

 南極気候の異常は、寒冷化と温暖化が交互に起こっている時には保持されるが、世界の一方的な温度上昇時には破綻することとなる。これは2006年に言われた。南極気候の異常は、「雲量の変化が地球の気候変動を起こす」ということを立証している。

 21世紀における南極の寒冷化 英国南極観測隊のハリー観測所は、44年間で初めて2002年に船が海氷にとじこめられた。南極は寒冷化しているのだ。

9節 氷期における南極気候の異常

 過去1万年前に遡っても、20世紀と同じことが起きている。1章で述べた、厳寒のハインリッヒ期と、ずっと暖かいダンスガール・エシュガー期との間で気候がふらつき、気候の交代がより劇的に起こっているが、これらの寒冷期と温暖期による温度変化は北半球のもので、南半球の南極の温度変化とは違っている。 グリーンランドのGIPS2地点の氷床と、南極のバード地点の両方の氷の掘削で得られた試料を比較し、メタンガス濃度の測定で双方の年代が対応していることを確認した上、この氷床の氷そのものに存在する重い酸素原子をカウントして、その古代の温度を測定した。

 2001年にブリンストン大のブルニアーたちは、過去9万年の間にわたって記録された主な温暖期と寒冷期について報告した。「南極では、この9万年の間に千年規模の温暖期が7回起こったが、それらの各開始時期は、グリーンランドでの各温暖期の開始時期よりも、それぞれ1500~3000年だけ先行した。一般的に、南極の温度が徐々に上昇した時は、グリーンランドの温度は低下中か、それとも一定しているかであり、南極の温暖化が終了した時期は、グリーンランドの急激な温暖化が開始した時期と一致しているようだ。」これは海流の変化では説明できない。

 スベンスマルクの説明

 「雲の形成により気候が変動する」という説明として、1つ目は「南極が氷床で覆われているために、雲が通常とは異なる温暖化効果を及ぼす」―氷床の影響。2つ目は、「太陽が『躁』または『うつ』の状態になることにより、宇宙線の量が変化した」―太陽活動の影響。これは雲量の変化つまり、氷期以来の温暖期と寒冷期の双方に太陽が明確に関わっていると説明。3つ目は、「数百万年、数十億年にわたる長期の気候変動も、宇宙線と雲との間の仕組みで説明できる」―宇宙線発生源の影響。

10 20世紀の温暖化の説明 には2つの説がある。

〇一つは、太陽活動の変化によるもの(スベンスマルクの説)

〇もう一つは、大気中の人工の温室効果ガス―特に炭酸ガス―の蓄積によるもの

 この2つの説のうち、どちらでも1900~2000年の間に約0.6℃の温度上昇を説明できる。炭酸ガスによる地球温暖化説は、①炭酸ガスがその気候変動の大部分を起こした主要原因であるという仮説と、②地球は今、温暖化の危機に直面しているという仮説の双方を主張している。

 スベンスマルク説では、1900年以前に起きた古代の気候変動は、現代よりはるかに激しかったが、それも宇宙線の変動によって引き起こされたものであるという。20世紀の温暖化は、太陽の磁場が2倍になり、その結果宇宙線が減ったことがその原因の大部分を占めなければ、他の時代に起こった現在よりも大きな温度変化を説明できないとした。

 20世紀における宇宙線と気温との関係の調査

 1998年には宇宙線強度の全ての体系的な記録と、最も古い時代まで遡れるものが利用できた。ニューメキシコ大学のアールワリアは、宇宙線研究者フォービッシュが建設したメリーランド州とバージニア州の2つの観測所から、1937年までさかのぼる古いデータを回収し、それらをシベリアのヤクーツクにおける同様のデータと組み合わせて、1937~1994年までの一連のデータを作成した。 スベンスマルクは、このアールワリアのデータを用いて、宇宙線の変化を北半球の温度変化と比較した。宇宙線の減少、雲量の減少、温度の上昇を、経年変化のグラフを作り、比較した。その結果、最初の数十年間は小刻みに上下し、1960~1975年の間には、低下し、それからは1990年代の温暖期に向かって一緒に上昇した。

 1980年以降の温暖化の原因

 一部の科学者は、太陽要因説は排除できると説明している。しかし太陽活動と温度変化の実態は、20世紀の期間中の上昇傾向が1980年頃に終了したが、その後の25年間に降下したわけではなく、宇宙線の強度は、太陽活動のサイクル中にリズミカルに変化し続けている。そしてそれと同じ小刻みの温度変化が、大きな温度変化傾向の上に重なっていることが記録されている。太陽が引き続いて気候変動を起こしているというこの証拠は、特に、気球や衛星により測定された海洋の表面と準表面(水深50m)の水温、および海面上の気温においても明白であった。 1985年の温度上昇傾向は、北半球の陸上の表面上の温度で、その勾配は最も急である。しかし、海面下50mでは、あたかも地球温暖化が停止しているかのように、宇宙線の増加と減少に合わせて、水の温度が上昇と下降するだけだった。

◎  二酸化炭素地球温暖化説の難問は2つで、1つは「現在、陸地、海洋、および空気によって温められる速さは、北半球の陸地の表面上の温度の方が、残りの世界よりも速いように見えるのはどうしてか」というもの。もう一つは、「増加中の炭酸ガスや他の人工の温室効果ガスの温暖化効果は、地球の大部分において、予想されているよりずっと少ないように見えるのはどうしてか」ということである。例えば南極では、雲の減少による寒冷化の影響を温室効果ガスは打ち消すことができないし、人工の温室効果ガスにより急激に温暖化していると特定されていた期間の1978~2005年の間に、海氷の領域が8%増加している。

 炭酸ガスの温室効果

 海洋における準表面(水深50m)の温度変化の程度は、宇宙線と雲に関するスベンスマルク説では当然のことである。ノーウィッチ気候研究部隊のヒューバート・ラムが1977年に書いた意見は、「放射収支上、増加した炭酸ガスが気候に及ぼす影響が、温暖化する方向にあることはほぼ間違いのないことであるが、一般的に受け入れられている推定値よりも、おそらくずっと小さいであろう。」1980年代の末迄、太陽の変動が数世紀にわたる気候変動を引き起こす最も有力な要因として知られていたが、宇宙線との関係は知られていなかった。

 気候変動を起こすと考えられる候補は、①大きな火山の爆発やエルニーニョ温暖化が起こった頻度、②空気中のちりや煙の量の変化、③オゾン、メタン、および他の温室効果ガスの変動、④陸地の用途変更、⑤増加した炭酸ガス全てにより繁茂した植物による陸地の全般的な暗色化、それと炭酸ガスによる温室効果、⑥スベンスマルクの宇宙線と雲と太陽の変動による説、である。

 衛星のデータは、宇宙線と雲の減少により、約0.6℃の温暖化が起こったと推定できた。また南極気候の異常も、雲が担っていることで説明できた。しかし、炭酸ガスの温室効果により引き上げられた温度は、衛星データで検証できなかった。 大気中の炭酸ガスを2倍に増やした時の温室効果を、どう計算しても0.5~5℃の間になり、一致していない。炭酸ガスだけでは温度上昇を説明できない。 スベンスマルクは、「余分の炭酸ガスの効果を、より精密で科学的に評価することが必要である」と考えている。どう計算しても、「21世紀における地球温暖化は、起こったとしても、現在予測されている3~4℃よりははるかに小さいであろう」という。

(注:これは、この書の要約と解説とまとめを、多くは原文の引用ですが、分かりやすくする為に、一部は短くまとめたり、順序を変えたり、書き直したりしています。詳しくは原著をお読み頂きたい。図は後ほど掲載します。  黒部信一)