がん性格 ( タイプC症候群 )
人はなぜがんになるのか。ならない人がいるのか。違いはどこか。
その答えは、こころにあるのです。
がん性格(タイプC症候群)
私は常々、がんになるタイプの性格があると考えてきました。それは、私の病原環境論からすると、がんになるのは、遺伝的素因(または遺伝子)とそれを発現させる発癌物質などの自然境と社会環境(それに伴う情緒的環境も)があると考えてきたからです。それを近年発達してきた精神神経免疫学が裏付けをしてくれています。
今までに、多くの発癌物質や放射線、紫外線などの発がん性が指摘され、見つかってきました。しかし、原爆被爆77年後の現在でも、被爆者の問題は解消されていません。それは生存者がいて、その医療と補償の問題があるからです。
また私は「チェルノブイリ子ども基金」にかかわり、ウクライナやベラルーシの甲状腺がんや白血病の子どもの支援をしてきました。その中で判ったことは、多くの発病した子どもたちは、家庭や地域社会の環境が恵まれない子どもたちでした。都市から離れた片田舎に住む農民の子や、片親の子どもたちでした。片親になる原因には、もちろん原発の被爆もあり、その為父親が働けないなどの事情も多いようでした。
以前、小中学校の放射線被曝を減らす運動をしていて、判ったことは、「低線量放射線被曝は、発がんの確率の積み重ねであること。また、発がん性は若いほど高く、55歳を過ぎたら放射線以外の発がん物質による発がん率を上回らなくなること。もちろん被曝の影響も無くなる訳ではありませんが、他の原因と見分けがつかなくなること」でした。
また、ヒトゲノム計画による遺伝子研究の進歩からも、発がん遺伝子もありますが、発がん抑制遺伝子や、発がん阻止の身体のシステムも人には存在することも判ってきました。
さらにその後エピジェネティクスという、遺伝子の発現(遺伝子の持っている働きを実現させること)に多くの要因が関与していて、遺伝子があるだけでは必ずしも病気になるとは限らないのです。そこにその人の置かれている、環境やこころが影響しているのです。それは約30年前から、ハーバード大学精神科から始まった「精神神経免疫学」と動物実験から証明されましたが、人間では実験ができないし、研究費がもらえず、世界の片隅に追いやられています。
昔東大の生物学者が、昆虫の研究で、昆虫には抗生物質様の物質や抗がん作用のある物質を体内で合成しているらしいとの研究結果を発表したことを聞いていました。進化論からすれば、昆虫より進化した動物や人も持っている筈であるとのことでした。
そこで、疑問がわいてきました。なぜがんになる人と、ならずに生きる人がいるのでしょうか。確かにまだがんになりやすい遺伝子はかなりの数が見つかってきています。
またアメリカに渡った日系移民の多くは、世代が進むにつれて、アメリカ人の発がん率になっていくし、アメリカ型のがんになっていくことが判っています。現代の日本も、社会のアメリカ化が進むにつれて病気のアメリカ化が進んでいます。
その原因を、私は社会的環境から来るものと考え、変化してきた社会に対する適応の問題としてとらえています。そこにその人の性格が関与して来ると考えます。
最新の医学では、なりやすい遺伝子を持っている家系とそうでない家系があることも判ってきています。しかも、同じ遺伝子を持っていても、遺伝子が発現するかどうかは、環境に左右されるようで、現実に遺伝子にスイッチが入るか入らないかで、病気になったりならなかったりすることがあることが判り、その一つの例に性同一性障害の一部があると言われています。病気もいろいろな種類の病気で、スイッチが入るか入らないかで、発病するかしないかが左右されていることも判って来ました。
今までは、漠然と、我慢強い人ががんになるのではないかと考えていましたが、どこかに違いがないか探していた所、テモショックの本に出ていることを知り、その内容の一部を紹介します。
( )内は私の考えで、他は著者からの引用です。
タイプC症候群
1.怒りを表出しない。過去においても、現在においても、怒りの感情に気づかないことが多い。
2.他のネガティブな感情、すなわち不安、恐れ、悲しみも経験したり、(例え経験しても)表出しない。
3.仕事や人付き合い、家族関係において、忍耐強く、控えめで、協力的で譲歩を厭わない。権威に対して従順である。
4.他人の要求を満たそうと気をつかいすぎ、自分の要求は十分に満たそうとしない。極端に自己犠牲的になることが多い。
(テモショックによるとタイプC症候群は、がんになりやすい性格傾向であると言います。)
(それに対し)
タイプA症候群(ローゼンマンによる)
1.敵対心、競争心、功名心のレベルが高く、病的な程の「性急病」を患っている。緊張性が高く、闘争的なタイプ。
2.闘争心むき出しで、仕事でも人間関係でも常にトップに立とうと猛烈に奮闘している。
3.たいてい不安、敵対心、怒りに満ちている。
4.自己中心的で、絶えず自分の要求とそれを満たすにはどうすればよいかを考えている。
(これが虚血性心疾患つまり心筋梗塞や狭心症などの心臓病になる可能性の高いタイプであると言います。)
タイプB症候群(ローゼンマンによる)
1.心からくつろいでおり、競争的でなく、一度もかんしゃくを起こしたり、敵対したことがない。自分自身とも周りの人々ともうまくやっている。
2.健康的なタイプ
(これが健康で長生きするタイプであると言います。)
- 心―からだ―がんのつながりは、はっきりしてきました。
どのようにストレスに対処するかという一人一人に特徴的な行動は、がんに対する生物学的防御機構に影響を与えうるのです。
・患者の行動変容能力
・柔軟性
・抑圧(抑制とは異なる)
抑圧における「無感覚」は、ベータ・エンドルフィンという脳内化学物質の増加による可能性があります。(モルヒネに相当する物質)シュワルツ博士は、「抑圧する人の体内では、この鎮痛剤的化学物質のレベルが異常に高く、これがネガティブな感情を麻痺させるだけでなく、免疫系、つまりがんに対する防御機構をも抑制する可能性がある」との結論を出しました。
- 対処行動スケール
タイプA 外在化(自己の内部構造を外界に転嫁する)
敵対心と競争心でものごとに対処
自己中心的
緊張
タイプB 怒りなどの感情を適切に表現する
自分の要求にも他人の要求にも応えられる
リラックス
タイプC 内在化(外界の構造を自己の内部に取り込むこと)
譲歩や、感情の抑圧でものごとに対処
自己犠牲的
受動的
- 感情表現とがん防御機構
感情表現と、腫瘍の成長と防御に関する三つの指標(①腫瘍の厚さ、②がん細胞の細胞分裂の速さ、③腫瘍に侵入したリンパ球の数)との関係
*感情を表現する患者ほど、腫瘍は薄く、がん細胞の分裂が遅い。
*感情を表現する患者ほど、腫瘍の基部に侵入しているリンパ球の数が多い。すなわち、がん防御システムが効果的に働いている。
*対照的に、感情を表現しない患者ほど、腫瘍は分厚く、がん細胞が急速に分裂している。また腫瘍が深い所まで侵入している。
*感情を表現しない患者ほど、腫瘍の基部に侵入しているリンパ球の数が少ない。すなわち、がん防御システムがあまり効果的に働いていない。
- 患者の対処スタイル(グリアによる)
1.ファイティング・スピリット――がんの診断を全面的に受け入れ、楽観的な態度をとり、がんの情報を求め、がんと闘おうと決意している。例えば、「がんなんかに負けてたまるものですか。良くなる為なら何でもやるよ・・・」
2.否認――がんの診断を拒否するか、その深刻さを否定したり、軽視したりする。例えば「医者は、用心のため乳房をとっただけよ・・・」
3.禁欲的な受け入れ――診断を受け入れるが、それ以上の情報を求めようとせず、宿命論者的態度をとる。例えば、「がんってことは知っているよ。でも普段通りにしていなくちゃ、私にできることなんてないんだもの・・・」
4.無力感、絶望――診断に打ちのめされ、がんと死のことばかり考えて日常生活にも支障を来たす。例えば「医者もなすすべがないんだ、私はもう終わりだよ・・・」
5年後の生存率は、1は80%、2は70%、3は37%、4は20%でした。さらに追跡調査の結果、10年後、15年後でも1と2は、3と4の二倍以上の生存率でした。
- がんの自然退縮があることは判っています。
それは、オレゴン博士の3500例のデータの集積があると言います。
- イメージ療法
健康な免疫系が弱いがん細胞を破壊する様子を思い浮かべるイメージ療法は、従来のがん療法と並行して行えば、有益な手法となり得ます。これが免疫機能の一部に好影響を与えるのは明白です。しかし、がんそのものをくつがえす力があるかどうかについては疑問が残っています。
- 心身セラピー
特に、グループセラピーには免疫系を高める効果と延命効果があると言います。いくつかの研究で、ナチュラルキラー細胞の力を強めることができるという証拠が出ています。
- タイプC変容技法(テモショック)
セラピーを受けなくても始められるプログラム
1.あなたの要求に気づく。
2.あなたの内なるガイドを見つける。
3.あなたの感情についての考えを再構成する。
4.医者、看護婦、友人、そして家族に対して感情を表現する技術を習得する。
5.医療ケアを管理する。
6.必要な社会的サポートを受ける。
7.正当な権利を確保する。
8.絶望感を乗り越える。
9.ファイティング・スピリットを養う。
- 乗り越えるべきハードル
愛情とサポートを失わずに、自分の要求を知り、それを主張できることに気づくこと。自分の悪い点を見つけるのではなく、良い点を自分自身で見つけること。
- がんになっているあなたへの質問
見舞客の相手をするには疲れすぎてはいませんか?
検査のスケジュールは、あなたの要求に合わせて変えてくれるでしょうか?
あなたは医者の説明で納得がいったでしょうか、それともあなたはまだ混乱して不安なままでしょうか?
体のどこかの部分が痛くて、この痛みを和らげるにはどうしたらよいのでしょうか?
用意された食事と違うものが欲しいですか?
あなたの気分を高めてくれる友達は誰ですか?
あなたは誰に胸の内を打ち明けられますか?
こうした質問への答えが、健康的な対処法の出発点になるでしょう。まず、気づくこと、そして実行することです。
☆ 変容のための内なるガイド
*あなたのガイドは、絶えず「私は今どんなふうに感じるか」と問う内なる声なのです。
*あなたのガイドは、病気に関わる試練の間じゅう、あなたにとって最大の利益になることを求めています。
*あなたのガイドは、本当の自分に背く声を聞くと、いつでも穏やかに疑問を投げかけます。
「 看護婦にもう一枚毛布を持ってきてもらっては申し訳ない」とか「医者に余り質問するものではない」というような声を聞きつけたなら、ガイドはすぐに乗り出してきます。
「ちょっと待て。私は今重病人なんだ。そうする権利はあるだろう」と。
*あなたのガイドは、いろいろな声音を持っています。愛情のこもったものや、腹を立てているもの、穏当な物や用心深いもの、そして時には従順なものなどです。
しかし、それはいつでも最も深い自己の側にしっかり立っています。
☆ 自分の感情に対する考え方を改めること
抑圧を強化する考え方は、
1.私はいつも勇気を見せなくてはならない。
2.抑うつ、不安、そして怒りは、私をますます不健康にする。
3.医者のすることや出す薬に、疑問を持ってはならない。
4.どんなネガティブな考え方もしてはならない。
5.私は恐怖を克服しなくてはならない。
6.私は家族のため強くあらねばならない。
7.私は自分の痛みのことで、友人に負担をかけてはいけない。
8.私は非の打ちどころのない患者になろう。
9.みんな私によくしてくれるから、文句など言えない。
10.早く良くならなければならない。私の病状がみんなを左右するのだから。
11.もし痛みや悲しみを表現したら、人は私を感傷的なやつだと思うだろう。
これらの考えを、次の様な肯定的主張に置き換えてみましょう。
「私の病気は重い。私の心も体もできる限りの休息とリラックスを必要としている。 良くなるためには、ほかの何ものにも増して自分の要求に注意を払わなくてはならない。これは自己中心的に見えるかもしれないが、私はずっと与える人間だったわけだし、今は少々甘えることも必要だと感じている。
回復の可能性をできるだけ高くするためには、自分のことは自分で管理しなくてはならない。いつも勇敢で他人の前で強く振舞おうとすると、元の行動様式に戻ってしまう。その役回りを演じることは疲れることだとわかった。
回復するだろうと楽観しているが、ネガティブな考えをすべて追い払うことはできない。だから、悲しみ、不機嫌になり、おびえてもいいことにしよう。こうした感情を他人の前でも出せるとほっとする。いつも隠しているのは重荷だった。私は良い「患者」でいたいとは思うが、「非のうちどころのない患者」にはなれない。
回復するためには、いくらでも時間をかけるつもりである。こういったことは自分へのプレゼントであり、そのおかげで私は自分自身と自分の回復に満足できる。」
- 自分の気持ちを書くことで、自分の感情を自分自身が客観的に認めることができます。書くことを薦めます。
- 医者への基本的な質問(フィオーレ博士による)(主治医に聞くことのリスト)
1.先生、私の病気は何ですか?
2.もしがんなら、どんな種類のがんですか?
3.もしがんなら、転移していますか?
4.どのような治療法を勧めますか?
5.代替療法にはどんなものがありますか?(日本では代替療法はありません)
6.何もしないで様子を見るなら、どんなリスクがありますか?
7.この治療法の副作用、リスク、そして効果は何ですか?
8.なぜ手術をするのですか? あるいは、なぜ先に手術をするのですか? また、なぜ化学療法、あるいは放射線療法なのですか?
9.この検査で何が判るのですか? この検査を受けることによるリスクにはどんなものがありますか?
10.この薬の目的は何ですか? 副作用や注意しなくてはいけないことは?
11.セカンド・オピニオンを聞くには、誰を推薦してくれますか?
12.治療を助け、回復を促すのに、私にできることは何ですか?
- 回復のためのあなた自身の計画
*どの医者と専門家に診てもらうのが良いかを決めること。
*その治療法が一番良くて、あなた個人にもふさわしいセカンド・オピニオンを得ること。
*自分のがんのタイプと段階、そしてよく用いられる治療法について、自分なりに研究して、医者と自分の病気について話し合ったり、決めたりする時に、知識があるようにしておく。
*従来の治療法と並行して利用できる健康へのアプローチには、他にどんなものがあるか調べてみる。食事療法、心理療法、心身セラピーなどがある。(日本では難しい)
*あなたにとって、全体的な健康に必要なものは何かを見定め、それを満たすこと。その為にがん予防食事療法、リラックスするための瞑想、身体的、情緒的健康なためのエクササイズなどを始めることになるかもしれない。(これらも日本では難しい)
- 医者とのコミュニケーション技術
*あなたが医者に望むこと、そして医者から聞きたいことは何かをはっきりと、率直に言いましょう。その時、「私は・・・したいのです」「私は・・・が必要なのです」という言い方をするとよいです。
*医者を批判するのは避けましょう。医者も普通の人間と同じように、判断よりも感情に反応しやすいからです。本当に良い医者は、言っても良いのですが少数です。
*もし医者が協力的でなかったり、侮辱的だったとしても、無神経だと非難しないようにしましょう。その代わりに、医者のその行為によってあなたがどんな気持ちになったかを話しましょう。例えば「質問が多すぎるとあなたに言われた時、腹が立ちました」とか、「あんな統計を見せられ、怖くなりました」、「話し合いを途中で打ち切られ、傷つきました」というように。「私の言うことにはかまってくれないじゃないですか」というような非難より、感情を言葉にした発言の方が、ずっと聞いてもらいやすいし、理解されやすいです。
*医者の言うことには注意深く耳を傾け、相手の発言と感情も認めましょう。両方向の関係を築いた方がよいのです。
☆ がんの治療の厳しさ
従来のがん治療の三本柱は、手術、放射線治療、化学療法です。本や主治医から、予想され得る詳しい情報を調べておくとよいです。
☆主人公になりましょう
自分でこの医療ドラマの主人公となれば、それはあなたの精神と免疫系の治癒力に利益をもたらします。そこで、あなたにできることは、例えば、
*主治医があなたの手術について十分な説明をし、あなたの要求に敬意を表していることを確かめます。あなたの要求とは、治療に参加している実感、心の準備、そして主治医をはじめとする医療担当者からのサポートを必要だと感じる気持ちです。
*手術の良い結果を、心に描きましょう。
*手術に対する恐れを、愛する人に表現しましょう。愛する人に手術まで必要なだけそばにいてもらい、意識を回復した時に真っ先に見たい顔を想像します。あなたを一番慰めてくれるのは誰の存在ですか。その人たちに来てもらうように頼んでおきましょう。
*化学療法や放射線療法で心配な点をはっきりさせ、それを口に出しましょう。例えば、もし髪の毛が抜けることを心配しているなら、回復した他の患者にどう対処したか助言してもらうとよいです。そうすれば、こうした人たちの髪の毛が元通りになっていることに気づくでしょう。
そのことは、あなたもそうなるという、目に見える証拠ともなります。何と言っても彼らは、がんは克服できると言う現実の証拠です。
*痛みへの対処について主治医に聞くこと。そうすれば、心配な心づもりをしたり、実際に感じている痛みに対処しやすくなります。病院にペインクリニックがあるかどうか調べておきましょう。そこではいつも新しい、良い薬が使われている筈です。
また、薬を使わない痛みの対処法として、催眠療法、リラクゼーションなどの行動療法があります。(日本ではありません)
*その病院でグループ・セラピーや個人的なカウンセリングが利用できるかどうかを調べます。精神病的な症状がないとサポートやカウンセリングで得ることはないなどと思わないように。大抵の患者は、グループの場で感情を表現すると楽になります。(これもないです)
*がん治療の副作用や痛みに対処する方法として、瞑想やイメージ療法も考慮に入れよう。例えば、薬が体内で自分のために勇ましく闘っている光景を想い浮かべるといった手法に効果があることは実証されており、コントロール感を高めるのにも役立つ。
☆ 以上ですが、残念ながら、この面では遅れていて、日本では心理療法やグループ・セラピーをしている所は見つかっていません。瞑想やイメージ療法、催眠療法、自己暗示法、リラクゼーション、自律訓練法などは、私も多少心得があり、実際に治療したこともあります。しかし、本人の努力がないとできないことが多く、できる人は少ないです。私はがんの人にしたことはありません。
以上は、テモショック「がん性格」の引用と、私の考えを加えて書いたものです。必要なら原文「がん性格」テモショックら、及び「内なる治癒力」、「こころと体の対話―精神免疫学の世界―」をお読み下さい。私が探した範囲では、このくらいしか見つかりませんでした。
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