小説新潮に隔月のように掲載されている「飲めば都」シリーズである。
出版社に勤める小酒井都が「酒を飲んで失敗する」という話である。
失敗といったって、物語になるようなものであるから、凄まじかったり、意味深であったりするし、時には都ではなく別の誰かが失敗する。
今回は出だしからすごい。
2000年問題が世の中を騒がせていた年、都は新年を祝い飲みすぎ、路上にしゃがみこんで壁にもたれ休憩をしていた。そこに通りかかったカップルから「大丈夫ですか?」などと暖かい言葉をかけられ、大都会にもまだ人情は残っていると感激し、大丈夫だという証に頭をブンブンと振ってみせて、あげく壁に頭を打ちつけ昏倒。
「どうだ!」といわんばかりの出だしである。
さて、題名の「コンジョ・ナシ」は、都の先輩である大曽根悠子から聞いた話である。
大曽根は、エチオピアの緑化運動に賛同し、最初はお金を寄付した。そうしたら<苗木を植えました>という報告が来た。それに感動し、実際にエチオピアに行き苗木を植える活動をした。
その苗木を植えているとき、エチオピアの子供たちに
「コンジョ・ナシ、コンジョ・ナシ」
と口々に言われた。
「コンジョ・ナシ」というのは現地のコトバでは「素敵な女性」という意味なのだそうだが、なんだか複雑であった、という話である。
そしてそこから「根性無し」である、大曽根の部下・月形瓢一の話となって、物語は核心に入るのである。
根性無しの月形は、根性無しであるだけでなく、世間知らずなのである。
従って酒を飲まずともその失敗談には事欠かない。
それを大曽根は(彼女は雑誌の編集長である)辛抱強く教育していたのであったが・・・
今回はこの月形君が主役である。
彼は失敗を失敗とも思わない、というか何が失敗だったのかよくわからない、まあいわば今時の青年である。
ホントにこういう奴はいる。
それで、独特の理論を持っていらっしゃって、それを得々として話したりする。
もうそれが失敗だっつうのに、とツッコミを入れても気づかない。
というわけで、この物語のラスト(オチ)のあと、月形君がどうなったのか、彼のいいわけはどうだったのか、想像をするだけで笑っちゃうのである。
こういう「想像をさせる」というオチもなかなかいい。
面白く読んで、その後もその雰囲気にひたれる。
だから読書はやめられない。
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出版社に勤める小酒井都が「酒を飲んで失敗する」という話である。
失敗といったって、物語になるようなものであるから、凄まじかったり、意味深であったりするし、時には都ではなく別の誰かが失敗する。
今回は出だしからすごい。
2000年問題が世の中を騒がせていた年、都は新年を祝い飲みすぎ、路上にしゃがみこんで壁にもたれ休憩をしていた。そこに通りかかったカップルから「大丈夫ですか?」などと暖かい言葉をかけられ、大都会にもまだ人情は残っていると感激し、大丈夫だという証に頭をブンブンと振ってみせて、あげく壁に頭を打ちつけ昏倒。
「どうだ!」といわんばかりの出だしである。
さて、題名の「コンジョ・ナシ」は、都の先輩である大曽根悠子から聞いた話である。
大曽根は、エチオピアの緑化運動に賛同し、最初はお金を寄付した。そうしたら<苗木を植えました>という報告が来た。それに感動し、実際にエチオピアに行き苗木を植える活動をした。
その苗木を植えているとき、エチオピアの子供たちに
「コンジョ・ナシ、コンジョ・ナシ」
と口々に言われた。
「コンジョ・ナシ」というのは現地のコトバでは「素敵な女性」という意味なのだそうだが、なんだか複雑であった、という話である。
そしてそこから「根性無し」である、大曽根の部下・月形瓢一の話となって、物語は核心に入るのである。
根性無しの月形は、根性無しであるだけでなく、世間知らずなのである。
従って酒を飲まずともその失敗談には事欠かない。
それを大曽根は(彼女は雑誌の編集長である)辛抱強く教育していたのであったが・・・
今回はこの月形君が主役である。
彼は失敗を失敗とも思わない、というか何が失敗だったのかよくわからない、まあいわば今時の青年である。
ホントにこういう奴はいる。
それで、独特の理論を持っていらっしゃって、それを得々として話したりする。
もうそれが失敗だっつうのに、とツッコミを入れても気づかない。
というわけで、この物語のラスト(オチ)のあと、月形君がどうなったのか、彼のいいわけはどうだったのか、想像をするだけで笑っちゃうのである。
こういう「想像をさせる」というオチもなかなかいい。
面白く読んで、その後もその雰囲気にひたれる。
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