読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

目からハム 田丸公美子 文春文庫

2011-12-08 22:46:14 | 読んだ
エテカリーナこと米原万里の本を読んでいて知ったシモネッタこと田丸公美子の文春文庫では第4冊目の本である。

エテカリーナはロシア語の通訳。そしてシモネッタはイタリア語の通訳である。

で、本の題名の「目からハム」とは日本語の「目からうろこ」のことをイタリア語では「目からハムが落ちた」と表現することからついた題名である。

この本を読むと本当に「目からハム」になってしまう。
それくらい面白い。

ちょいと脱線するが、「面白い」という表現であるが、私が何かを読んで「面白い」と感じるのは、①面白い(=可笑しい、笑える)②悲しい・哀しい、③怒りを覚える、腹が立つ、④楽しくなる、つまり読んで喜怒哀楽のいずれかになり、かつ、読み終わった後「満ち足りた気分」になることを、一口で言い表して「面白い」ということにしている。
だから、面白いには強弱、高低、濃淡がある。

閑話休題
で、この「目からハム」は強・高・濃の部類に入る、久々の本であった。

米原さんや田丸さんなどの本を読むと、通訳をする人にとって最も大事なのは「日本語」もしくは「日本」であることがわかる。

日本をよく知らないと通訳(翻訳)はできない。もちろん訳すべき外国もよく知らないといけないのだが・・・

言葉というのは、言葉として独立しているわけではなく、その言葉の持つ「文化」「歴史」に裏打ちされているものらしい。

だから、直訳をしては意味が通じない。それぞれの持つ文化や歴史に照らして意訳しないと、発言者の真意を表現できない。

聖書のヨハネ伝の始まりには
「初めに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神とともにあった」
という西洋文化と、「巧言令色鮮なし仁」や「読み書きそろばん」といったように「話す」ということを重要視しなかった日本。
「誰でも友達」というイタリアと、「親しき仲にも礼儀あり」の日本では、発言者の真意を伝えるのは非常に難しい、と田丸さんは言う。

しかし、難しいから面白い仕事だし、完成するということのない刹那的な仕事だから日頃の訓練や勉強が必要で、だからやめられないのだと、この本を読むと強く思う。

ああ、私もなにか外国語を話すことができたらよかったのになあ、とつくづく思うのである。

短いお話が集まった本なので、最初は昼休みの昼寝前に1日1話程度で読もうと思っていたのであるが、あまりにも面白いので、あっという間に読んでしまった。

お薦めの本である。

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