今年最初のライブはこちらから。3月1日にすみだトリフォニーホールで開催されたT-SQUAREと新日本フィルの共演を見てまいりました。
(ホール前のポスター)
T-SQUARE(本稿ではスクエアと略)は1993年に新日本フィルと共演したコンサートを実施ていたほか、1990年代には彼らの曲を海外オーケストラがカバーしたCDも発売されていました。今回、久々に縁あって新日本フィルとの共演が実現しました。現メンバーにとっても新日本フィルとの共演は初めての経験ですし(サックスの伊東さんは80年代にスクエア名義で他のオーケストラと共演というのがあったようです)、私がライブに出向くようになってからも初めてのできことです。
このコンサート、第一部はスクエアとしての演奏でした。みなさんいつもと違うかしこまった衣装です。私もオーケストラを観に行くのだから、とスーツ、ネクタイで赴きました。来場者にパンフレットが配布され、当日演奏する楽曲をあらかじめ紹介しているのもいつもと違うところです。
(こちらがそのパンフ)
スクエアのメンバーですが、伊東たけし(SAX.NuRAD)、坂東慧(ドラムス)の正メンバー二人に、サポートとしておなじみの田中晋吾(ベース)、そして今年のアルバム発売を以て正式デビュー予定の長谷川雄一(ピアノ、キーボード)、亀山修哉(ギター)の各氏という陣容です。オーケストラのアレンジは奥慶一さんが担当されていました。同氏のプロフィールを拝見しますと藝大からスペクトラム(私も覚えていますが派手な衣装で知られたブラス・ロックバンド)を経て作曲、アレンジの仕事をされています。「あの」スペクトラムにいた方だったとはとちょっと驚きでした(拙ブログの読者もスペクトラムと聞いて懐かしいと思われる方も多いのでは)。スクエアともこれまで一緒に仕事をしており、ちょくちょく名前は拝見しておりました。
前置きが少々長くなりましたが、第一部は「Unexpected Lover」から。アルバム「Truth」(1987年)に入っている曲で、秋・冬向きで都会的なナンバーです。それぞれギターとキーボードに聴かせどころがありますので、新しい二人を紹介するかのような演奏でもあります。第一部で田中晋吾さんはエレキではなくウッドベースを使用しているのも久々です。次は「Sabana Hotel」で「うち水にRAINBOW」(1983年)からの一曲です。このアルバム、夏向きな感じと以前拙ブログで紹介していますが、冬に聴いても素晴らしいです。
続いて「Smile on the hill」。2022年のWISHというアルバムから、坂東さんの曲です。リーダーだった安藤さんがいなくなった後で、参加ミュージシャンも様々だったアルバムです。この年はまだコロナ禍の最中でしたね。
そして「Cape light」。1984年のアルバム「ADVENTURES」のバラードです。哀愁漂うメロディは和泉宏隆さん作曲のバラードの名曲です。
うって変わって「A Feel Deep Inside」。こちらはデビューアルバム「LUCKY SUMMER LADY」(1978年) のオープニングを飾る、まさにスクエアの「最初の挨拶」とも言えるナンバーです。最新のメンバーが加入して、また新たなスクエアのデビュー曲が語り継がれていく、そんな感じがいたします。
第一部のラストは「宝島」。吹奏楽でもおなじみ、ということもあってだとは思いますが、スクエアの代表曲の一つで〆ました。
休憩を挟んでいよいよ第二部、新日本フィルとの共演です。一部メンバーとオーケストラとの共演という形で進んだのも興味深かったです。「Memiries of Alice」からスタートです。1982年の「脚線美の誘惑」に収録されています。いつものスクエアの音とは違う、オーケストラが加わったことによる深みや、奥慶一さんアレンジで曲が新たな色をまとったような世界が展開されます。二曲目は「Good-bye blue wind」で、2001年にT-SQUARE plus名義で発表した「TRUTH 21century」の一曲ですが、初出は1993年発売の「IMAGES」というF1をイメージしたポニーキャニオンのCDとなります。今回は亀山修哉さんのギターがフューチャーされた曲で、正式デビュー前ではありますが、オーケストラとの演奏は素晴らしかったです。相当なプレッシャーだったと察しますが・・・。
今回新日本フィルを指揮したのは竹本泰蔵さん。クラシックのみならず、映画音楽、ポップ、ロックとさまざまなジャンルとの共演を果たしています。伊東たけしさんが奥慶一さんのアレンジを「映像が思い浮かぶよう」と評していましたが、竹本さんの指揮が映画音楽的なアプローチだったのかもしれません。そしてお三方がほぼ同世代ということで、バンド側、アレンジ側、オーケストラ側の指揮者が見えないところでつながっているような感じもしました。
その次は「ハワイへ行きたい」、1982年のアルバム「脚線美の誘惑」のオープニングナンバーです。オリジナルはウィンドシンセですが、伊東さん、この曲をサックスで吹いていました。
ここからはバラード由来の曲が三曲続きました。「Play for you」(アルバム「HUMAN」1993年)、「Sweet sorrow」(アルバム「夏の惑星」1994年)、「Tomorrow's affair」(アルバム「ロックーン」1980年)です。特に「Play for you」は安藤まさひろさん作曲のシンプルなバラードですが、オーケストラと出会ってテンポも変わり、これからの季節に合うような明るい、うららかな曲になっていました。「Sweet sorrow」は和泉宏隆さん作曲で、後半に行くにつれて盛り上がっていくのですが、オーケストラと出会って新たな魅力が引き出されていました。「Tomorrow's affair」はもともとドラマの主題曲であるほか、以前にもオーケストラで演奏されていますが、やはり生のオーケストラの音は魅力的です。
コンサートの最後を締めくくったのは「いとしのうなじ」(アルバム「Stars and the Moon」1984年)でした。オリジナルからどうやってオーケストラの音にしていくのだろう?という感じで興味津々でしたが、こちらも見事なアレンジと素晴らしい演奏でした。
アンコールはおなじみ「Omens of love」(アルバム「R・E・S・O・R・T」1985年)です。吹奏楽でも有名な曲で、中学生から自衛隊の音楽隊まで、この曲の演奏を聴いております。今回は途中で完全に「スクエアのパート」があり、亀山さんのギターソロがうなりを上げ。という展開もありました。第二部ではエレキベースの田中晋吾さんがお約束のジャンプをしており、オーケストラの団員の中には楽器を構えたまま椅子から軽く体を浮かせている方も見えて、嬉しくなります。
こうしてコンサートは幕となりました。いつもと違うスクエア、そして素晴らしい新日本フィルの演奏と、たくさん楽しむことができた一夜でした。
なお、この日はファンクラブ先行でS席を申し込み、割り当てられたのは3階席の前方、という感じのところでした。私の周辺もそんな感じで熱心なファンが集まっている感じでした。ここのホールについては新日本フィルの「ホーム」であり、熱心な楽団のファンもたくさん足を運んだことでしょうし、墨田区在住、在勤者向けにもチケットが用意されているということで、スクエアのファンが優先されないのは致し方ないところでしょう。それでも、音響のすばらしさもありましたので3階席にいても大いに楽しみました。芝居などでも「大向こう」は後方と決まっていますからね(だからと言って掛け声をステージに向かって叫んだりはしませんが)。
いつもと違うスクエア、またこんな機会がありましたら、観てみたい、そしてオーケストラの美しい音も感じたいと思いました。スクエアの皆様、指揮者の竹本さん、新日本フィルの皆様、アレンジの奥慶一さん、素晴らしい一夜をありがとうございました。