ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

グーグーだって猫である:小泉今日子が挑んだ大島弓子の作家としての覚悟

2009年05月07日 | 映画♪
原作は「花の24年組」の大島弓子。基本的に少女漫画が苦手だったこともあって、大島弓子については「綿の国星」くらいしか知らず(しかも未読)、どんなタイプの作品かも理解していない。まぁ、できるなら代表作をいくつか読んでいれば、その作家性、作品性みたいなものが理解できていてよかったのだろうし、特に「8月に生まれた子供たち」は読んでおきたいところ。
まぁ、もちろんそんなことがなくても十分楽しめるし、あるいはそんな深堀りせずに「ほのぼのとした作品」としてだけ楽しむこともできる佳作です。

【映画「グーグーだって猫である」予告】


【あらすじ】

愛猫サバを亡くした女性漫画家の麻子(小泉今日子)は、悲しみで漫画を描けなくなってしまう。ナオミ(上野樹里)らアシスタントも心配で仕方がない。そんなある日、麻子は小さな子猫と出会う。グーグーと名付けたその子猫と暮らしはじめて、麻子の日常は一変、元気な表情が戻ってきた。暫くしてグーグーの避妊手術のために動物病院に向かうが、その途中、グーグーが逃げ出してしまう。必死で探す麻子を助けてくれたのは、近所に住む青年・沢村だった。(goo 映画より)

【レビュー】

猫ではないけれど、我が家にはウサギが2匹いる。これがとってもかわいくて!(ほとんど親バカ)、毎日、仕事から帰れば「ナデナデ」、休日も「ナデナデ」、ほったらかしでビデオなど観ていた日には抗議の足ダン(一種の地団駄)をされて機嫌をとるのが大変。それでも彼らがいることで生活は明るくなり、どれだけ癒されていることか。そんなわけでサバとグーグーが麻子先生にとってどれほど大きな存在かというのは、映画で描かれていた以上に大きかったのだろう。

この物語は2つの物語からなっているといってもいいだろう。1つはアシスタントであるナオミ(上野樹里)の成長譚であり、もう1つが麻子先生(小泉今日子)の物語だ。

ナオミは麻子先生に憧れてアシスタントをするが、やがて漫画家としての才能の限界に気付き、彼氏とも別れて、新しい道へと進みだそうとする。そう未来にむかって。

これに対して麻子は「天才」であり数多くの作品を世に出してきた。いくつもの連載をこなし、仕事に追われながら、情熱を込めて生み出された作品は、多くの読書に力を与え、魅了してきた。しかしその一方で彼女は未婚であり、またアシスタントや出版社のスタッフを別にすれば、彼女の理解者といえるのは「サバ」しかいなかったであろう。彼女はひとり「不安」や「寂しさ」を抱え込まねばならなかったのだ。

サバとの日々。そしてサバの「死」。しかし麻子はサバの死を見届けることができなかった。そのことが彼女の中でずっと残ることになる。

グーグーはそうした彼女にもう一度、生きる喜びを思い出させてくれる。青自との出会い。吉祥寺の散歩。仲間たちと過ごす時間…そうした幸福な時間も麻子は全てを受け入れることはできずにいる。それが大人として臆病になってしまっているからなのか、サバの死に立ち会えなかった負い目からなのか、どこかで常に「死」と向かい合わねばならない作家としての性なのか。

手術。みんなが彼女を励まし、彼女に作品を描き続けて欲しいと願う。彼女の作品にどれだけ救われたかを語る。しかし彼女の不安や孤独、作家であり続けねばならないことの苦悩や悲しみを理解してくれるものは誰もいない。

「私の漫画はそれほど私を助けてくれません」

彼女が「死」に近づいた時、死神はこう語った。

「あなたも随分と昔から私と話したがっていました。私に出会えないことで、あなたは私の影を作品の中で追い続けていました。」

彼女は「孤独」であるがゆえに、「死」の存在を知っているがゆえに作家たりえたのだろう。彼女はサバとの再会を通じて、自分の生き方を確認し、再び作家として生きていくことの決める。

そして生まれた作品「8月に生まれた子供」。そこには病による苦悩や悲しみの果ての「再生」を、「死」ではなく「生きつづけること」を肯定した物語が描かれる。それはたとえ作家としての孤独や悲しみを背負い続けることになったとしても、この一回限りの「人生」を作家として生きることの、そしてグーグーとともにそしてグーグーが幸せな人生を送れるように生きていくことの覚悟であるかのように。

ナオミがこれから芸術家として生きていくための物語だとすれば、麻子は作家として残りの人生をどう生きるかの物語だ。この2つの生き方の対比や作家としての覚悟など、いっけん重くなりがちなテーマをさらりと描いてしまうあたりが、女性作家が原作たるゆえんなのだろうか。

少女漫画はほとんど読まないのだけれど、大島弓子をはじめとした「花の24年組」の作品も読んでみたいと思う。


【評価】
全体:★★★☆☆
小泉今日子の枯れた感じが:★★★★☆
大島弓子の原作が呼んでみたい!:★★★★★

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グーグーだって猫である ニャンダフル・ディスク付き [DVD]


グーグーだって猫である / 大島弓子


大島弓子セレクション セブンストーリーズ(「8月に生まれる子供」収録)


【PV】グッド グッド  good good


ハミングキッチン「風のアトラス」PV

※ 本当は挿入歌になっている「パノラマの丘」のPVにしたかったのですが見つからなかったので。



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