ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

東日本大震災で証明した日本の新幹線の安全神話

2011年05月29日 | Weblog
今回の東日本大震災では原発の安全神話が崩壊したり、都市インフラ基盤の脆弱性が露呈されたり、通信インフラが結局は物理的な制約を受けていることを改めて思い知らされたりしたわけだけど、そんな中で日本の技術力の凄さを改めて証明したのが、「新幹線」の安全神話だ。

 東北新幹線「安全神話」は健在 想定超えた地震でも脱線防ぐ (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

 東日本大震災:新幹線30~170キロ減速 宮城で地震早期検知 被災エリア無事停車 - 毎日jp(毎日新聞)

 【社会部オンデマンド 大震災編】新幹線の地震対策は? 検知から2秒程度で送電停止 - MSN産経ニュース


JR東日本では昨年12月に新青森まで東北新幹線が延伸、3月5日には最新鋭の「はやぶさ」が導入されて、さぁ、これからというタイミングで起こった震災。地震当時、「東京-新青森間で18本が営業運転中で、特に被害の大きかった新白河(福島県)-二戸(岩手県)間には上下10本がおり、うち5本は時速270キロ前後で走行していた」とのこと。

今回、M9.0の「想定外」の地震が起こったにも関わらず、太平洋沿岸に設置した新幹線早期地震検知システムによって全ての新幹線が緊急停止、脱線・転覆事故は1件も起きなかった。東北新幹線の被害箇所が約1,200もあったにも関わらずだ。

この「新幹線早期地震検知システム」とはどのようなものか。

JR東日本の決算資料を見ると、東北・上越・長野新幹線の各沿線と日本海側/太平洋側の海岸線に97個の地震計が設置されている。この地震計がP波やS波といった地震波を検知し、その値が一定以上の場合(大規模な地震が予想される場合)、変電所から列車への送電を自動的に停止、車両の非常ブレーキを作動させて減速・停止させるというもの。今回も震度5弱の振動が来る前に送電を停止し、減速を実施している。

こういう風に書くと、この早期地震検知システムはP波を検知して作動したのだろうと思いがちだが、どうもそうではないらしい。

地震波というものには、大きく2種類の実体波がある。それがP波とS波と呼ばれるものだ。地震が発生すると初期微動でP波と呼ばれる小さな揺れ(縦波)とS波と呼ばれる大きな揺れ(横波)が発生する。この2つの波は伝播速度が異なり、S波の4km/secに対しP波は7km/sec。この速度の違いを利用して、P波を検知した時点で本格的な揺れ(S波)を予測することができる。これが一般的な緊急地震速報の仕組みだ。

今回も全ての新幹線が緊急停止を行ったということで、早期地震検知システムが先行するP波を検知し送電を停止したものだと思っていた。しかし毎日新聞が伝えたところによると、「最初に来るP波(初期微動)が微弱で、地震計が捕捉できなかった可能性が高く」、断続的に訪れるS波を早期に検知できたことで、本格的な揺れの前に停止できたのだという。(ただし産経の書き方ではあくまでP波を検知したことになっているが)

つまりシステムとしては必ずしも「ベスト」な状態で動作できたわけではない。本来であればP波を検知できていれば、余裕をもって減速・停止できたかもしれない。それでも検知から停止までの基本的な処理能力がしっかりしていたからこそ、対応できたのだろう。

仮に震源の近い直下型の地震の場合、P波とS波の到達時間差は少なくなる。そうした場合でも出来る限りの「安全」を確保するためにはこうした基本性能を高めることは大切なことなのだ。

余談になるのだけれど、こんな風に書いていると、日本の特性として、こうした個々に閉じた技術、単体としていのスペックは非常に高いのだけれど、それを組み合わせた複合的なシステムや複数の組織がまたがるような運用が絡むシステムというものに難があるのではないかという気になる。

今の「福島原発」に対する危機管理対策や「SPPED」の活用などを見ているとそんな気がしてしまう。これが日本人の特性だとすると、あまりに寂しい気がするのだが…



東日本大地震:JRに求められる2つの対応 - ビールを飲みながら考えてみた…




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