ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「投資」という神輿を担ぐ人、担がれる人

2004年10月22日 | Weblog
今回の石油の値上げに対して、大前研一氏が面白い指摘をしている。今回の値上げは、先物取引市場で売買されている、たかだか世界の総生産高の0.6%にすぎないの「ウエスト・テキサス・インターミディエイト油」の高騰によって引き起こされたものであり、「デマンドによって上がっていってるのではなく、ニュース報道によって上がって」いる投機ゲームだとのこと。マネーゲームのネタがなくなった、ヘッジファンドの「思惑」が世界を振り回しているようだ。

大前研一ライブ ~ニュースの読み方が変わる~ - gooブロードバンドナビ

最近の経済の動き、特にネット系のビジネスを見ていると、実体を離れたこの儲かるであろう「思惑」が独り歩きしすぎではないかという気になる。株式市場というものが形成されいる以上、その企業の将来性を見込んで投資をするというのは健全な経済活動である、ということは、まぁ、そうなのでしょうが、「その企業の将来性」というよりは投資家自身の短期的な利益追求、たんなる「マネーゲーム」化しすぎているのではないか、という気がする。また実際の投資対象となるような企業、特にIT企業やベンチャー企業自身も、この実体の伴わない「含み益」に甘えすぎているのではないか。

身近なところでは、ライブドアが近鉄買収に名乗りをあげたのは、まぁ、本気か売名行為かはわからないもののある種ご愛嬌というところだが、「楽天」「Yahoo!」「有線ブロードバンド」ときたら、これはちょっとしゃれにならない。そもそもこの4社で実業で利益が出ているのは幾つあるのか。

「有線ブロードバンド」は「ブロードバンド事業」というよりも「放送事業」「カラオケ事業」が中心の企業だし、ソフトバンクは15年度の経常利益は連結ベースで716億円の赤字だ。しかも「ダイエー買収」に名乗りをあげたとたんに株価は大幅に下げている。こうした状況でもこれらの企業が強気でいられることの要因の一つに株式市場での「思惑買い」に支えられているということが挙げられるだろう。

有線ブロードバンドの決算報告


ソフトバンクの決算報告


「楽天」や「ライブドア」も含めて、これらネット系新興企業の場合、どうしても「実体」よりも「期待値」の方が大きい分、ある意味、話題を作って株価を上げ続けることが存続の条件となり、仕方がない部分もあるのだろうが、彼ら起業家がそれらの状況に甘えすぎているという部分も多分にある。例えば、NTTから顧客情報が漏洩する場合は「個人」による犯行という形をとるが、Yahoo!などのあの大規模な顧客情報の漏洩は企業としてのシステムの不備であり、拡大路線のために「個人情報の保護」といった、企業にとっては必須のものでありながら、コスト要因となるようなもの、拡大路線をとる上では日陰の仕事に対しての認識の甘さがあったからであろう。「虚像」を追いすぎるあまり「実体」をないがしろにしているのだ。

そういった状況が現在の経済の牽引として働いている。
そしてそのことに誰もが何となく気づきながら、それぞれの利害関係を維持するためにそのことを許容しているのではないか。そのことに恐怖を感じてしまう。

まぁ、同じような業界で働く立場としては、ベンチャー企業の雄たちの姿はうらやましくもあるのだが、あらゆるものが見境のない「資本主義」という巨大な渦の中で、ひたすら速度をあげまわり続けることが正しいことなのか、正直疑問に思う。

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