ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

何故、映像コンテンツの未来が見えないか ― 放送通信融合の行方

2004年10月19日 | コンテンツビジネス
(どこで見つけたのか、このBLOGを見つけた)友人から、通信だけでなく放送の今後まで含めた(映像)コンテンツのあり方について意見を述べよ!というオーダーをもらってしまって、まぁ、以前から断片的にはちょっと書いていたのだけれど、「Yahoo!BB 光」の発表でちょっと気にかかる問題もあったので、ちょっと考えてみることに。

とはいえ、考えてみただけで、結論や確信めいたことは何もなく、"見えにくさ"というものが逆に明らかになったというか、(面倒くさくならない限り)何回かにわけて、何が見えにくくしているのか、問題となっていることは何かということを書いてみたいと思う。

基本的に、製品やサービスの今後のあり方を考える時にはまず長期的な動向を考えるようにしている。日々の売上や業績、といった瑣末な問題に追われつつあるとはいえ、物事の特性や本質を捉えない限りその場限りの対応にしかならないし、短期的な視点からは多少のブレはあるにしろ、長期的にはある一定のベクトルに収斂していくことが多いからだ。

長期的な動向を考える場合に何を軸に考えるか。

中心に据えているのは2点。1つは当然のことながら、消費者が求めているものは何か、どういう状態が消費者にとって望ましいのかということ。但し、これはあくまでもアンケートによって集約されるような顕在化されたニーズというよりは、そこから本当に求めているものを類推した状態といった方がいい。例えば、「HDDプレイヤーで好きな音楽を聴ける」というようなものではなく、「どこでも手軽に好きな音楽を聴ける」ということ。つまり媒体やデバイス、方法論ではなく、より根源的な欲求に基づくとでも言えばいいのだろうか。

そしてもう1つが、技術的効率性とその結果としての経済合理性。まぁ、所詮、技術なんて掃いて捨てるほどあり、いい技術が生き残るわけでもないことは、βvsVHS戦争を描いた「陽はまた昇る」でも明らかだ。結局は、いい技術というだけでは話にならず、(マーケティング戦略といったものもあるとはいえ)普及のためには「効率性」と折り合いのついた「いい技術」、メーカーや事業者が適切な利潤を得ながらも、消費者にとっても手ごろな価格でサービスが享受できる「技術」でなければならない。

そして基本的にはこの両者のバランス、あるいは両者を縦軸と横軸にとったときに最大の面積となるようなバランス比の状態が長期的な方向性として意識すべきなのだろう思う。

それに対して短期的な動向というのは、この両者をベースにしつつも、現状の企業間の利害関係やマスコミによる宣伝、消費者の嗜好、既存の商慣行や制度上の固定化要因というものが働き、必ずしも一定の方向を保っているとは言い難いものだろう。そのためにも長期的な動向を把握した上で、今、どう対応すべきか(どのように動くべきか、あるいは動かざるべきか)を判断しなければならない。

前置きが長くなったが、こんな当たり前のことを先に確認したのは、今回の問題「(映像)コンテンツのあり方」について考えたときに、この長期的な動向・向かうべきベクトルと現状、放送業界の向かおうとしているベクトルが、食い違うのではないかと感じてしまうからだ。多少のブレであればそう大した問題ではない。しかし今感じている両者に横たわる「違和感」というのは、一歩間違えれば正反対の動きになりかねないものであり、しかもこの業界は「規制」や既存のビジネス体系によって新規参入が難しい業界であることを考えると、今後の展開に対する予見を難しくさせている一因と思われるのだ。

そしてここにもう1つ、先日の孫正義の提示したモデルがこれに輪をかけて問題を複雑にしている。

ソフトバンクが提示した「Yahoo!BB 光 無線パック」は技術的には何も目新しいものではない。ただしあの仕組みが提示した、個人の私的利用の範囲内でTVやDVDといった映像を再配信することはどこまで認められるべきなのか、という問題は、現状放送業界やメーカーが進める「コピーワンス」化の流れに真っ向からぶつかる可能性を秘めている。また同時に発表された「ネットワークストレージ」を視野に入れた場合、映像コンテンツの方向性は大きく揺さぶられることになる。それは下手をすると既存の著作権、そしてウィンドウごとに割り当てられる販売権という概念さえも巻き込むものかもしれないからだ。

こうした問題について、いくつかの軸から整理していけたらと思う。


ソフトバンクがFTTHサービス「Yahoo! BB 光」開始を正式発表

「Yahoo!BB 光」と「無線TVパック」はどうつながるのか




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