和歌山県立医大の石橋達也氏

 糖尿病患者の月別のHbA1c値を調べたところ、2~3月に高くなる一方、9~10月には低くなり、その季節変動幅はBMIが高いほど小さくなる傾向があることが明らかになった。これは、HbA1cを過去に通算30回以上測定していた糖尿病患者のデータを解析した結果で、和歌山県立医大の石橋達也氏らが日本糖尿病学会(5月22~24日、大阪開催)で発表した。

 今回の検討対象は、2003~2013年に同大学病院に通院していた糖尿病患者1936人。患者の年齢は64.1±12.2歳、男性が1059人、女性が877人で、1型が108人、2型が1828人。HbA1c値(NGSP)は7.48±1.05%、BMIは24.0±4.4kg/m2(身長と体重データが得られた1380人の値)だった。

 電子カルテシステムを用いて検査データを抽出し、HbA1c値を月別に算出した結果、2月が7.71%、3月が7.72%と2~3月に最も高くなる一方、9月が7.43%、10月が7.42%と9~10月に低くなる傾向が認められた。

 平均HbA1c値別に季節変動幅(2~3月の平均値と9~10月の平均値の差)を見ると、HbA1c値が5%以上6%未満の患者は0.09、6%以上7%未満は0.18、7%以上8%未満は0.29、8%以上9%未満は0.40、9%以上10%未満は0.39、10%以上は0.43だった。HbA1cが高いほど季節変動幅が大きくなり、8%以上では0.4前後でほぼ一定になることが分かった。

 そこで、月ごとの平均HbA1c値と10月のHbA1c値の差を基に各月の変動定数を求め、以下のHbA1c値の予測式を作成した。

 予測されるHbA1c変動幅A=(9月か10月のHbA1c値-5)÷8
 予測HbA1c値(8.0%以下)=9月か10月のHbA1c値+変動幅A×変動定数
 予測HbA1c値(8.0%超)=0.4

 また、季節変動幅を決める因子として、性別、年齢、病型の違いは特に影響しないことが分かった。ただし、BMIは高くなるほど実際の変動幅が小さくなる傾向が認められた。

 以上から石橋氏は、「今回考案した予測式を用いると9月、10月のHbA1c値から季節変動の大きさが予測でき、もし想定を超える変動があった場合は、他の原因を考慮するなど日常診療において活用できるのではないか」と述べた。さらに、「今後は、気候の変化や生活習慣、治療内容など季節変動幅を決める因子について、解析を進める予定」と話している。