家から持ってきたものは、リビングにあったシャンデリア型の蛍光灯。
今の住居には、全部の蛍光灯が傘ごとついてあったので、一つも持って行かなくて済んだ。
それはそれでいいのだけれど、なんだか他人の家にいるよう気がしてならなかった。
家から持ってきたものを、以前と同じように、リビングにつける。
ちょうどソファの上から照らすかんじになる。
母が足が痛いので、いつもソファに横になり、その上から照らしていたものだ。
今は私が横になると同じように、照らしてくれる。
その柔らかい光の中でうたたねをしてしまった。
ふと目覚めたとき、母がまだそばにいるような気がしてしまった。
もしかしたら、懐かしい光を見て、母が来たのかもしれない。
思わず声を出して泣いてしまった。
「おとうさん、おかあさん!」
もう1年経つのに、まだ1年しか経っていないのに。
家を壊すのは早かったのだろうか。
ひとりで泣いていたら、携帯がなり友達からのメール。
玄関のドアノブに干しイモを少しおすそ分けで、袋に入れてかけておいたからって。
またしばらくしたら別な友達からの電話。
火曜日はカラオケの日なのに、来ないのというお誘い。
こちらに来てからもうすぐ1年。
新しい生活を初めてもうすぐ1年。
もう私は進み始めている、新しい道を。