まちの安全管理センター

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道路改修にカーナビデータを使い人身事故を2割減

2013-09-04 07:02:00 | 日記
 自動車メーカーが持つカーナビのデータを活用して既存道路の安全性を高める改修を進め、交通事故を削減した自治体があります。埼玉県です。
 同県は自動車の運行情報を参照して、県が管理する延長約2800kmの道路から急ブレーキの多発する道路を抽出します。合計160カ所をリストアップして、2007年12月から11年度にかけて、急ブレーキを防ぐための路面標示をはじめとした安全対策に力を注いできたそうです。
 その結果、急ブレーキの発生回数は67%減少し、改修箇所における人身事故の発生件数も23%減りました。同時期の県全体での事故件数の減少率が3.7%だったので、対策の効果が大きかったことが分かります。
 カーナビのデータを利用するきっかけは、県道路政策課の事務系職員の発案だった。ホンダが、走行する自動車とデータを双方向にやり取りするシステムを実用化していると知った職員が、そのシステムを道路の機能向上に役立てられないかと考えたそうです。同課はこのアイデアを生かそうと、ホンダに連絡しました。カーナビのデータを生かす手立てがないか相談を持ち掛けました。
 ホンダが持つ情報は、数秒間隔で取得した車の位置情報でした。県がこのデータから道路の機能改善に結び付ける情報として目を付けたのが、時間ごとの位置情報から計算できる加速度の情報です。事故の大きな予兆である急ブレーキの発生箇所などを抜き出せば、安全対策が必要な箇所を効果的に絞り込めるとみたそうです。
 こうした着想の下、県はバスなどのブレーキ動作時に乗客が不快と感じる目安となる重力加速度の0.3倍以上の大きさを持つ減速度(マイナス方向の加速度)を一つの指標に設定。該当データの提供をホンダに依頼しました。
 ホンダはこの申し出を受け、公的なデータ利用であることを踏まえて、県内で発生した1カ月分の急ブレーキ箇所のデータを県に提供しました。この際に県がホンダに支払った費用は数百万円だったそうです。抽出されたデータ数は合計で約5万件に及んだそうです。
 データを取得したからといって、県がすぐに急ブレーキの多発する箇所を特定できたわけではありません。データに与えられている位置情報は緯度と経度にすぎません。そこで県はまず、地理情報システムを活用して、これらのデータを50m四方のメッシュで区切った地図上に落とし込み、一つのメッシュ内で急ブレーキが1カ月に5回以上発生している箇所をピックアップしました。この際、車の移動方向も加味して集計しています。
 こうして県は、市町村道を除く県管理道路から急ブレーキが多発する160カ所を絞り込みました。データから急ブレーキ箇所を把握した後は、県土整備事務所の職員と所管する警察署員が現場を確認します。急ブレーキの発生理由を、交通の流れや周囲の建物などを観察しながら分析したそうです。
 県道路政策課は、「商業施設が右側にあって急に右折車が出てきたり、道路の合流地点の緩衝距離が短くて急な角度での合流が起こったりといった急ブレーキ要因を、道路管理者の視点でひも解いた」。
 こうして得られた分析結果をもとに、できるだけ速やかに対応できる方策を選定しました。急ブレーキを抑止する対策を実施しました。
 採用された数が最も多かった対策は、路面標示での注意喚起です。このほか、植樹のせん定による視界確保や合流地点におけるポストコーンの設置などを実施しました。160カ所で実施した対策工事に要した費用は総じて安く、1カ所当たり平均約25万円で済んでいます。
 大きな成果を上げたカーナビデータ活用の取り組みは、現在、第二段階を迎えています。12年度からは、歩道のない通学路における安全対策に利用し始めました。
 県が管理する通学路のうち、約2割に当たる約310kmには歩道がありません。こうした道路に対して、時速30km以上で走る自動車や急ブレーキを掛けた自動車の運行情報を収集しました。安全対策の優先順位を見極めています。
 データ抽出に利用したのは、休みを除く午前7時~9時と午後2時~4時の通学時間帯のデータです。1日当たりのデータ量が少ないので、前述の急ブレーキ多発箇所とは異なり、1年間のデータから抽出を試みました。
 そして、速度データについて時速30km以上のスピードを3段階に分割。最もスピードが早い区分の運行記録があった通学路31カ所について、12年度に対策工事を済ませました。車の減速を促すドットラインやグリーンベルトなどを引きました。
 改修に投じた費用は、1カ所当たり平均約12万円でした。この取り組みは13年度も続きます。今年度は、急ブレーキが複数回にわたって発生し、時速30km以上の速度で走行する車が存在した場所約50カ所で対策を講じる計画です。「12年度に対策を終えた箇所における安全性向上の度合いなども、一定のデータ数が収集できるようになれば検証していく」。他の自治体でもこのデータを利用して少ないコストでデータ収集して改修工事をしてほしいです。