どうでもいい四百字 第二中間貯蔵施設

あってもなくてもいいもの。

どうでもいい四百字 3675

2023-01-29 18:26:05 | 時間の無駄
刺す。第一回芥川賞を逃した太宰治が、選考委員の川端康成への恨みを綴った随筆を文藝通信に寄稿した。その中の激情的な一節である。メロスかお前は。しかも文芸界に君臨する邪智暴虐を除かんとする義侠心からではなく、単に賞金が欲しかっただけだからダメ人間度合いが倍増であり、流石と言わざるを得ない。先日、直木賞と共に受賞者が発表された。落選に異を唱える激情的な作家は居なかった様であるが、にも拘わらず人間の内面を抉る様な物語を紡げる辺りが却って恐ろしくもある。ただヨノナカの大多数の人にとって、文学賞は季節の風物詩に過ぎないのが現状である。創作が新聞連載や読本に限られていた時代とは異なり、漫画やアニメや音楽等、表現の手段は段違いである。しかも何時でもダウンロード可能な上に、類似の筋立ては即座にパクリ認定される世知辛さである。太宰も現代に生まれていたら迷惑系Youtuberとして天賦の才を発揮していたかも知れないのである。